大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ)

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26日に発表されたプロ野球「マイナビオールスターゲーム2017」のファン投票最終結果にて、北海道日本ハムファイターズ大谷翔平選手が、指名打者部門の1位に選出されたことが明らかになりました。

しかし、今季の大谷選手は左太もも裏肉離れにより長く戦線を離脱しており、出場8試合で打者として32打席を記録したのみ。投手としての登板はありません。最後の試合出場は4月8日となっており、活躍しているとは言い難い状態です。

本人も複雑な表情での会見となったようですが、メディアやファンの間にも波紋は広がっています。インターネット大手のYahoo!ニュースには「ファンの民度が問われかねない」などと掲げて、大谷選手の選出を疑問視する記事すら掲載されていました。

はたして、大谷選手をオールスターに選出することは問題なのでしょうか?

確かに過去には2003年のオールスターゲームにおいて、出場実績がない川崎憲次郎(中日/当時)にインターネット経由で大量の投票が行なわれ、ファン投票の1位になるという事件がありました。おそらくは「悪戯」であろうこうした事例については、反省すべき点があったかもしれません。

しかし、今季のオールスターゲームではそうした過去の反省を踏まえて、「ファン投票終了後の6月18日に、投手として5試合以上登板または10投球回以上、野手として10試合以上出場または20打席以上」の規定数を満たすことがあらかじめ条件付けされています。大谷選手は投手としては今季の登板がないものの「野手として20打席以上」を満たしており、指名打者部門での選出は規定に定める資格を満たしたうえでのものです。

であるならば、問われるべきは「ファンの民度」でも「メディアの批評精神」でもなく、この選出規定でしょう。もっと出場実績のハードルを高くせよという提案なら「建設的な批評」かもしれませんが、規定を満たした正当な投票行為をとやかく言うのは単なる「難癖」です。論点は「今年の大谷選出の是非」ではなく、「来年の規定をどうするか」であるべき。

そもそもファン投票というのは、実力・実績の多寡によって決めるものではありません。「誰が見たいですか?」という実力や実績に縛られない投票です。通常であれば、実力・実績によって出場機会が左右される選手たちですが、このファン投票という限られた機会だけは「見たい選手」を選出することができる。

その貴重な機会に「今季で日本プロ野球を離れるかもしれない球界を代表するスター」を選ぶことが、民度の低い行為だなどという発想が、どうしたら出てくるのでしょうか?見たい選手を見たいと言ったらいけないのでしょうか。それは「ファン投票」という行為そのものを否定する、極めて一方的な「民度の押しつけ」でしょう。ファン投票で出場実績の乏しい選手が選出されるのは、むしろ「健全」なのです。

アイドルの人気投票で勝つには、出場実績よりも遥かに得がたい「スター性」や「カリスマ」が求められます。成績で勝つよりも、人気投票で勝つほうがずっと難しいのです。ファン投票を「アイドルの人気投票」と揶揄する人こそ、エンターテインメントの本質を理解していない「民度の低い野球評論家」であろうと、僕は思います。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)