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親が亡くなり、実家の片付けをしていたら押入れや物置の奥から処分に戸惑うモノが出てくることがある。例えば「日本刀」。持っていたら銃刀法違反にならないの? 相続するときどうすればいい? 廃棄はできる?……発見してしまった場合、どうすればいいかをまとめた。

実家の床の間に鎮座する日本刀。将来を考えると気が重い母

筆者の父が定年退職後に始めた趣味は「日本刀の収集」。実家の和室の床の間には、鹿の角に掛けられた日本刀(真剣)が飾られている。押入れには十数刀の日本刀が大切にしまわれ、毎年帰省するたびに本数が増えている気がする。父よりも長生きするつもりの母が気にしているのは「将来、遺品になる日本刀をどうすればいいのか」ということ。「興味もないし、手入れも面倒そうだから持っていたくない」のだそうだ。

わが家のように、「家に日本刀がある」ということが分かっていて、心づもりをしておけるケースだけではない。親が亡くなって遺品を整理していたら日本刀が出てきた、どうしよう……という場合もあるだろう。以前、遺品整理士の方に取材をしたとき、「遺族はもちろん、故人さえ知らなかった日本刀が出てくることって、けっこうあるんですよ」と聞いたことがある。また、友人から「使っていない田舎の実家を売却しようとしたら、押入れに日本刀があった。これ、どうしたらいい?」と相談を受けたこともある。もしも、発見してしまったとき、相続するとき、どうすればいいのだろう。

そもそも日本刀って、個人的に持っていてもいいものなの?

日本では、刀剣類の所持は「鉄砲刀剣類所持等取締法」で禁止されている。ニュース等で「銃刀法違反」という言葉としてよく耳にする、あの「銃刀法」だ。ただし、美術品である場合や、美術品として価値がある場合は、公式に登録を受けたうえで所持を認められているため、銃刀法違反にはならない。

大切なのはこの「登録を受けた」という部分。相続した、または発見したときは、都道府県教育委員会が発行した「銃砲刀剣類登録証」があるかどうかを確認しよう。登録証の有無によって、その後の手続きが変わってくる。

登録証があった場合の手続きは簡単。発行元の都道府県教育委員会に連絡のうえ、所有者変更の届け出をする。その際、現物(日本刀)を持参する必要はなく、登録証のコピーと所有者変更届出書を郵送すればいい。

「登録証」がない場合、まずは管轄の警察署へ電話を

登録証がないときはその日本刀がある地域を管轄する警察署に電話で連絡をすること。例えば、自分は東京都に住んでいるが実家が広島県で、実家の押入れから発見したなら、東京都ではなく広島県の警察署に連絡を。なお、「押入れから出てきたんですけど……」と、警察署にいきなり持参するのはNG。まずは電話をして、警察署からの指示を待とう。

警察署の確認の結果、実は登録されていたものであれば、登録証の再交付の申請を教育委員会に行う。登録されていなかった場合は、警察署から「発見届出済証」が発行されるので、次は、教育委員会で定期的に開かれている「銃砲刀剣類登録審査会」で審査を受ける。審査を通り登録対象になれば、その日本刀は家で保管しても問題ないものとなる。

持っていたくないなら、無料の廃棄処理が利用できる

教育委員会での登録審査会で登録できなかった日本刀や、「家には置いておきたくない」という場合、警察署に届け出れば無料で廃棄処理をしてくれる。このときも直接警察署に持ち込まずに、まずは電話で連絡を。
「登録はできなかったけれど、遺品なので廃棄するのは忍びない」という人は、刀身部分は所持できないが、希望すれば鞘(さや)や柄(つか)の部分を取り外して持っていることができる。

なお、美術品や骨董品として価値がある場合、廃棄処理をしてしまうのは貴重な文化財をひとつ失うことになる。博物館や美術館での所蔵という方法もあるので、教育委員会に問い合わせてみるといい。また、登録証があれば売却可能な場合もあるので、日本刀の買取専門店などに相談してみよう。

実家から日本刀が出てきたら「どうしよう!面倒なものを見つけてしまった!」と、慌てがち。でも、心配はいらない。登録証があれば教育委員会へ連絡、なければ警察へ連絡というのは全国共通なので、まずは電話をしてみよう。詳しくは、各都道府県教育委員会のホームページを参考に。


(マキタ チカコ)