『2010年、リコール問題の公聴会で涙ぐむ豊田章男社長。写真:AP/アフロ』

「日ごろのお礼と、足元の情勢について意見交換させていただいた。いい話し合いができた」

 2月3日夜、1時間半にわたった会談を終え、トヨタ自動車の豊田章男社長(60)はそう言って、足早に車に乗り込んだ。先に会場から出てきた安倍晋三総理(62)も、記者の問いかけに機嫌よさげに手を上げて応じた。

「2人が初めて顔を合わせたのは2013年3月、官邸でのこと。しかし時間はたったの36分だった。同じ年の11月にも会談しているが、このときは志賀俊之・日産自動車副会長と、伊東孝紳・ホンダ社長(当時)が同席していた。夜に本格的な会談が設定されたのは初めてのことだ」(官邸担当記者)

 今回の会談のきっかけは、アメリカのトランプ大統領によるトヨタへの「口撃」だ。メキシコでの新工場建設に不満を持つトランプ大統領が、ツイッターで「多額の関税を払わせる」などと脅迫したのだ。さらにトランプ大統領は、日本政府に対しても名指しで「為替を操作し通貨安を誘導している」と批判。

 もともと時の政権とは一定の距離を置いてきたトヨタだが、トランプという「共通の敵」を前に、安倍政権と急接近した。

 政治ジャーナリストの山口敬之氏によれば、会談では2つのことが話されたという。

「ひとつは、日米自動車貿易の非関税障壁部分について話し合われました。たとえば車のウインカーの色、騒音規制、排ガス規制などについて、EUの車は日本の規制に適合させ、日本で売る努力をしています。アメリカもそういった努力をして、いいものを作って日本に売りに来てください、と首脳会談で言うためのロジックを作ったのです。

 もうひとつは、トヨタが表明した100億ドルのアメリカへの設備投資計画についての具体的な内容、つまり雇用創出など、細かいデータを用いたレクチャーを総理は社長から受けたのです」

 アメリカの自動車メーカーが苦境に陥るたび、象徴的な企業として矢面に立たされるのはいつもトヨタだった。こうした経験の積み重ねもあり、トランプ大統領就任が決まってからの、トヨタ側の反応は素早いものだった。

「2016年11月、安倍総理とトランプ氏は初会談をおこないました。その時点で、総理のところに、トヨタから詳細な資料が届いていました。総理はそれをもとに、『トヨタのカムリは、アメリカ製の部品を76%も使っています』、つまりトヨタをはじめ日本企業は、アメリカの雇用を生んでいると説明したようです」(前出・山口氏)

 そして今回、ついに章男社長は安倍政権とタッグを組むという、歴史的な決断を下した。10日の首脳会談で、その成果が問われる。

(週刊FLASH 2017年2月21日号)