同僚が先に昇進。嫉妬心からどう抜け出す?

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仕事や家庭の悩みはすべて解決できる! 京セラ、セブン&アイ・ホールディングス……。世界に名だたる経営者のDNAが息づく「門外不出のノウハウ」を紹介します。

問題:同僚が先に部長になった。実力はトントンのはず。いま気をつけるべきは?

■京セラセオリーなら――サラリーマン生活は長い

同僚のほうが先に昇進して差をつけられた。嫉妬心が先に立って、どうも仕事に身が入らない……。このような心理状態に陥ったら、どうやって抜け出せばいいのだろうか。京セラでは、グループ単位が自然に競争してお互いを刺激し合っているという。その状態を生み出すもとになっているのが、稲盛流経営の代名詞といえる“アメーバ経営”だ。

アメーバ経営とは、企業活動によって生まれた付加価値(売り上げ―経費)を社員の労働時間で割った「時間当たり」の数字を指標として管理する経営手法のこと。京セラでは、部署などの小さな組織単位(アメーバ)ごとに独立採算制で時間当たりの数字を出して、社内で公開している。京セラの山口社長は、解説する。

「となりのグループの数字がすべて見えるので、アメーバ同士は自然に競争意識が芽生えますね。たとえば京セラは鹿児島に国分工場と川内工場を持っていますが、お互いに『今月は向こうに負けないぞ』と言って対抗心を燃やしているようです」

ただ、競い合うのはアメーバ単位まで。社員個人を1対1で競い合わせる仕組みはない。フィロソフィに「仲間のために尽くす」という項目があるように、京セラはむしろチームプレー重視で、競い合うより助け合う文化が定着している。

とはいえ、多くの社員を採用しているので、実績をあげていち早く昇進する社員もいれば、逆に出世が遅れる社員もいる。現実には社員同士で差がつくことも多いが、出遅れた社員はどう考えればいいのだろうか。

「私なら、20代30代で誰かが先に出世しても、それは長い目で見れば序盤の出来事なのだから気にするなとアドバイスしますね。マラソンにたとえるなら10キロ地点で先頭集団にいたというだけで、その人が完走できるかどうかもまだわからない。サラリーマン生活というロングレンジで考えたらほとんど無意味。気にするだけムダです」

■セブン思考なら――世界のニュースを見よ

一方、セブン銀行の安齋会長は、同僚の出世が気になるサラリーマンを一刀両断する。

「隣を見て勝っただの負けただの言っているのは、古い時代の大企業サラリーマンの発想です。のんびり横を見ている余裕があるなら、もっと自分の仕事に集中してほしい」

それでも人と比べたくなるのが人間の心理だ。どうしても同僚が気になったときはどうすればいいのか。

「僕は朝礼で、足元の身近な話より、日本経済や世界経済などなるべく大きなテーマで話すようにしています。たとえば僕は日銀で自由主義経済の真っ只中にいたけど、グローバル経済はけっしていいことばかりではなく、格差を生んだり、日本人の賃金が上がらない一因にもなっているというような話です。こんな話をしても、社員にとって仕事に直接役立つかどうかはわかりません。それでもあえて大きなテーマで話すのはなぜか。それは社員に目線を上げてほしいからです。同僚の出世が気になるのは、目線が下を向いているからでしょう。志を高く持って顔を上に向ければ、同僚のことなんて視界から消えていきます」

つまり、次元の高いテーマに関心を持てば、一企業内の同僚との競争は相対的にちっぽけでくだらないものになっていくというわけだ。世界経済や社会に関する情報は、自分でも収集できるはず。同僚のことが気になったときは、そうした情報に触れて自分の関心をシフトさせることが効果的なのかもしれない。

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山口悟郎
京セラ社長。1978年、同志社大工学部卒。京都セラミック(現京セラ)入社。半導体部品国内営業部長、半導体部品事業本部長などを経て2013年から現職。
 
安齋 隆
セブン銀行会長。1963年、東北大学法学部卒業後、日本銀行入行。2001年にアイワイバンク銀行(現セブン銀行)設立、社長に就任、10年から現職。
 

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(村上 敬=文 的野弘路、尾関裕士=撮影)