野生のゴリラは食事中に歌を作曲している
by Tambako The Jaguar
チンパンジーやボノボなどの類人猿が、食事中に歌を歌っていることがこれまでの観察結果から明らかになっていますが、新たにゴリラも食事の満足感を表すために歌を作曲していることが判明しました。
PLOS ONE: Food-Associated Calling in Gorillas (Gorilla g. gorilla) in the Wild
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0144197
Wild gorillas compose happy songs that they hum during meals | New Scientist
動物が食事中に歌を歌うという行動は、チンパンジーやボノボなどの類人猿に見られる行動ですが、同じ類人猿に分類されるゴリラの歌はこれまで十分に観察されてきませんでした。ゴリラが歌を歌うのかどうかを確かめるべく、ドイツにあるマックス・プランク研究所で霊長類学を研究しているEva Luef氏は、コンゴに生息している野生のニシローランドゴリラの群れを観察。すると、ゴリラが2種類の異なる歌を歌っていることが明らかになりました。
1つ目は音程の低い鼻歌で、食事の満足感を表すために歌っているもの。以下から実際にゴリラの歌を聴くことができます。
2つ目は、いくつかの音程を組み合わせて、一種のメロディーのような感じになっています。以下の音声ファイルの0:04あたりから視聴することができますが、自然界の音が入り交じっているのでやや聴きづらいかも。Luef氏は「野生のゴリラは、毎回同じ歌を歌っているわけではなく、食事ごとに歌を作曲しているようです」と分析しています。
カナダのトロント動物園でゴリラの飼育員をしているAli Vella-Irving氏は、動物園のゴリラたちが食事中にたびたび歌を歌っているといいます。ゴリラが好物のエサを食べている時は、普段よりも大声で歌を歌っているそうです。また、ゴリラの声は1頭ごとに異なっているため、Vella-Irving氏はどのゴリラが歌っているのかを聞き分けることもできるとのこと。
しかし、野生のゴリラを観察したLuef氏によれば、野生のゴリラは動物園のゴリラとは違い、群れのリーダーのオスだけが食事中に歌を歌うとのこと。Luef氏は、野生のゴリラのリーダーだけが歌を歌う理由について、「食事の満足感を表すため」「群れの仲間たちに食事の時間が終わっていないと知らせて、まだ移動する時間ではないと伝えるため」と推測しています。
by Rod Waddington
イギリス・バーミンガム大学の心理学者であるZanna Clay氏は、ボノボのコミュニケーション技術を研究していて、ゴリラとボノボでは食事中の歌い方が異なっているといいます。Clay氏は「食事中の鳴き声が動物の種ごとに異なる理由は、類人猿の社会構造を反映しているためです。ゴリラの群れでは、リーダーのオスが群れの行動を決めたりメスたちを養ったりする必要があるため、オスだけが食事中に歌を歌うのです」と語っています。
また、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの類人猿が歌う歌には、種ごとにさまざまなバリエーションがあるため、「類人猿の食事中の歌を研究することで、人間の言語の成り立ちが分かるのではないか」とClay氏は考えています。
by Martha de Jong-Lantink