女性にも、同性のアイドルのファンが増えつつあり、『an-an』2月5日号でもアイドル特集が組まれている。表紙に登場したのは、「1000年に一人のアイドル」橋本環奈(Rev. from DVL)。

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暦の上ではディセンバー♪ というわけで、今年もいよいよ押し迫ってきた。年の瀬に入り、AKB48グループの総監督・高橋みなみの1年後の卒業が発表されるなど、アイドルファンとしては気が抜けないニュースもあいついでいる。この1年を通して見ても、さまざまなできごとがあった。そこでこの記事では、私なりにいくつかトピックスを立てて、2014年の女性アイドル界を振り返ってみたいと思う。

■アイドルの殿堂となった武道館
12月18日、日本武道館でベイビーレイズが初めて日本武道館でのコンサートを行なった。「デビューから2年で武道館公演を行なえなければ解散」との公約のもと結成されたベイビーレイズは、1万人の署名を今年9月20日の結成2周年記念ライブまでに集めて、見事この念願を果たした。今回のライブでは、グループ名を来年から「ベイビーレイズJAPAN」とするとのサプライズもあって、話題を呼んだ。

ちょうどその前日の17日には、スマイレージが全国ツアーの最終公演(東京・TSUTAYA O-EAST)で同日付で「アンジュルム」とグループ名を変更することを発表していた。その旧スマイレージも、今年武道館で初公演を行なったグループの一つである。ハロー!プロジェクトからは、昨年の℃-uteとBerryz工房に続く武道館進出だった。

ほかにもこの1年のあいだに、でんぱ組.inc、9nine、私立恵比寿中学、チームしゃちほこ、BABYMETALと、武道館で初めて公演した女性アイドルグループは多い。これに対して、武道館で解散することを目標としながら、やむなく断念したのがBiSだ。結局、その解散ライブは7月8日に「BiSなりの武道館」と題して横浜アリーナで開催されている。ツイッターで観客が伝える会場の様子は、カオスそのものだった。

しかし、ここまで武道館を目標とするグループがあるとなると、武道館はもはやアイドルの殿堂になったのだと言いたくなるほどだ。また、約1万人のキャパシティのある武道館でライブを開けるアイドルグループが何組も現れたことに、本当の意味でのアイドル戦国時代というか、群雄割拠の時代が訪れたのだという感をあらためて抱く。

■地方アイドルのジレンマ
上にあげた「2014年武道館初公演組」のうちチームしゃちほこは、武道館の次に地元・名古屋の日本ガイシホールでの公演を目標としている。日本ガイシのキャパシティは武道館とほぼ変わらない。となると、ご当地アイドルなんだし、地元でライブを実現させたあとで、東京の武道館に進出するのが自然ではないかとも思われるかもしれない。だがここには、それなりの知名度がないと1万人の観客を地方で動員するのは難しいという事情がある。このあたり、地方アイドルのジレンマともいえるだろうか。

やはり人口や情報発信力からいっても、東京は特別だ。現実としては、地元より先に東京で人気を得るのが、アイドルがブレイクする一番の近道なのかもしれない。そう考えると、長いあいだ地元・新潟で地道に活動を続け、ある時期を境に東京にも進出して全国区になったNegiccoというグループはやはりすごいと思う。Negiccoは正月を控えて「サトウの鏡餅」のCMに出演中だが、これなど地元企業との幸福なコラボといえるだろう。

■何年かあと、私たちは「2014年11月26日」をどう振り返るだろう?
11月26日、モーニング娘。'14の道重さゆみの卒業コンサートが、横浜アリーナで行われた。そのレポートは、エキレビでも青柳美帆子さんが書いているので参照されたい。私も地元の映画館でのライブビューイングで観覧したのだが、見ているうちによくぞここまでモーニング娘。をよみがえらせてくれたと、道重に深い感謝の念を抱くとともに、しばらくモーニング娘。のことを忘れていてごめんと申し訳ない気持ちにもなった。

道重がリーダーになってからのモーニングの復活劇は、「V字回復」などと呼ばれ、下手をすると「道重さゆみに学ぶ企業再生」などとビジネス誌がとりあげかねない雰囲気すら感じさせた。だが、もともとモーニング娘。が大好きで、アイドルではなくあくまでモーニング娘。になりたくて芸能界に入った道重にとって、大好きだからこそグループを再起させることに尽力できたのではないだろうか。

ところで、道重卒コンと同日、私のツイッターのタイムラインでは東京パフォーマンスドール(TPD)の全国ツアー最終日(Zepp DiverCity TOKYO)に関するツイートが目についた。昨年、17年ぶりに結成されたTPDは、90年代に活躍した同名のグループとメンバーのつながりこそないものの、モーニング娘。とは復活組という点で共通する。

同じ日にはまた、今年のNHK紅白歌合戦の出場者が発表された。今回HKT48の初出場が決まったことで、国内のAKB48グループがすべて単独で紅白に出場することになる。これらできごとがあいついだ2014年11月26日を、ひょっとするとこれから数年経って、日本のアイドルシーンにおいて一つの分岐点だったと顧みるときが来るかもしれない。

■グラビアアイドルブームの再燃をめざして
こっちも復活なるか、というのがグラビアアイドル。ここ数年、青年コミック誌などのグラビアはすっかりAKB48グループに独占された感がある。そこへ、グラビアアイドル界を盛り上げて、もう一度ブームを起こしたいと、グラドルたちが始めたのが「グラドル自画撮り部」だ。もともとは倉持由香と塚本舞のツイッターでのやりとりから、1月に生まれたものだった。あっという間に参加グラドルが集まり、雑誌でのコラボ企画やイベントなどの活動にも広がっている。

グラビアといえば、篠山紀信による橋本マナミの写真集『MANAMI BY KISHIN』が話題を呼んでいる。10代でデビューしながらも、一時期人気が低迷した橋本。数年前に復活の兆しが出始めたとき、矢吹春奈とともに出演したテレビ番組で「ポスト壇蜜」というふうに紹介されていて、「2人とも壇蜜よりも前から活動してるのに、それはないだろう!」と私は思ったものだ。ここへ来てテレビ出演も増え、矢吹春奈をはじめ二宮歩美、小林恵美、相澤仁美、森下悠里、瀬戸早妃らとともに開いている「GJK(グラビア女子会)」が紹介されることもあった。話に加わりたいとかぜいたくは言わないから、せめて「GJK」の開催される店に居合わせて、彼女たちを遠目で眺めてみたい……と思うのは私だけだろうか。

■乃木坂46にはこの一年、楽しませてもらいました
紅白歌合戦の出場内定との報道も一時流れたものの、ふたを開けてみれば選から漏れたりと、終わりがけに色々とあった乃木坂46。とはいえ今年一年、乃木坂には楽しませてもらった。その曲もMVも、クオリティはいまのアイドル界のなかでもかなり高いと思う。

8月に初めてライブ(「真夏の全国ツアー2014」の名古屋・日本ガイシホール公演)に行ったら、女の子のファンも多くて驚いた。ライブの内容も、当時、学業に専念するため活動を一時休止していた生田絵梨花が会場のディスプレイに登場し、ツアーの最終地・神宮球場まで続くドラマがステージとあわせて展開されるなど、あれこれと工夫が凝らされていて、すっかりハマってしまった。

2月24日の「AKB48グループ大組閣祭り」では、乃木坂から生駒里奈、48グループからSKE48の松井玲奈が「交換留学生」として両グループを兼任することが決まった。賛否両論あったとはいえ、互いに刺激となったのではないだろうか。そういえば前出のライブでは、松井だけ前半から汗だくになって踊っていたのが印象的だった。

■「妖怪ウォッチ」のあのアイドルグループが三次元化
今年、テレビアニメの放送が始まり大ブームとなった「妖怪ウォッチ」。その作中では、「ニャーKB」なるアイドルグループに、猫の地縛霊であるジバニャンがすっかりご執心という様子が描かれている。そういえばエキレビ編集部内で、あるとき「ニャーKBにはちゃんとした設定があったりするのだろうか」という話になったことがあって、最終的に、アニメ版「妖怪ウォッチ」のシリーズ構成を担当している加藤陽一は「アイカツ!」の人でもあるから、きっと設定は存在するはずだ! みたいな結論に達したのだった。

と、ここへ来て、12月16日に開催された「AKB48紅白対抗歌合戦」(TOKYO DOME CITY HALL)にて、「妖怪ウォッチ」とAKB48のコラボが発表された。AKB48グループのメンバーがニャーKBに扮して、「妖怪ウォッチ」のゲーム内のレアキャラ「ツチノコパンダ」とユニットを組み、「ニャーKB with ツチノコパンダ」としてデビュー、その曲は来年1月からテレビアニメ版「妖怪ウォッチ」のエンディングテーマに採用されるという。

しかし、本来、AKBのパロディであるはずのニャーKBを、本家AKBによって三次元化するということに、どうも私はモヤモヤした気分になる。というのも、ニャーKBはニャーKBで、AKBとはべつに、独自の設定にもとづき「妖怪ウォッチ」の世界に存在しているものと思っていたからだ。

まあ、パロディを本家が取り込むという手法は、いかにもあの総合プロデューサーらしいなとは思うのですが。AKB48に今年新設されたteam8にしても、47都道府県からメンバーを集めるというコンセプトは、昨年の朝ドラ「あまちゃん」におけるGMT47そのものだし。どうせニャーKBを徹底してリアルに再現するのなら、あの人にも「ニャキ元ニャすし」のコスプレをしてほしいものです。

■世代交代の予感のなか2015年へ――
今年のアイドル界のできごとを振り返るうえでどうしても外せないのは、5月25日に岩手県内でのAKB48の握手会で起こったメンバーへの傷害事件だ。この事件は、アイドルイベントのセキュリティについて再検討させるとともに、翌月の「AKB48選抜総選挙」の開票イベント(味の素スタジアム)でもメンバーから、このとき一時見合わせとなっていた握手会の再開を求める発言が出るなど、握手会というイベントの位置づけの再確認もうながした。

冒頭でも触れたとおり、12月9日には、AKB48劇場の9周年記念公演にて48グループ総監督・高橋みなみが来年末での卒業を発表している。先のモーニング娘。からの道重さゆみの卒業といい、Berryz工房の来春からの無期限活動休止の発表(8月2日、中野サンプラザ)といい、アイドル界全体で急速に世代交代が始まったことを否が応でも感じさせる1年でもあった。さて、移り変わりがより激しくなっているアイドル界、来年はどんな展開を見せるのだろうか。
(近藤正高)