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先月末、日本でも人気のスペインのファッションブランド「ザラ(ZARA)」が、ある洋服を発売して批判を受け、販売中止になる騒ぎがあった。

ナチスユダヤ人強制収容所の服に類似

その問題の洋服とは子供用Tシャツで、胸元のマークがナチスユダヤ人強制収容所で収容者が着用していた服に類似しているものだと批判されたのだ。

この服はインターネット上で欧州の数か国だけで発売されていたものだが、一部の新聞が取り上げ、ツイッター上で批判が広がり、販売中止となったようだ。

ザラの広報は、このデザインについてこう語っている。

ナチスユダヤ人強制収容所のマークを意図したのではなく、西部劇映画の保安官がつけている星形のバッチに発想を得てデザインしたものでした」

血の跡のようなシミがデザインされたトレーナー

同時期に今度は、服だけでなく雑貨や家具、化粧品まで様々な商品を取り扱い、若者に人気のアメリカのブランド「アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)」が販売した服が批判を浴びている。このブランドはニューヨークを歩くと何軒も見かけるほどの人気ブランドで、アメリカだけでなく広くヨーロッパにも進出している。

問題になった洋服はヴィンテージ風のトレーナーで、表に「KENT STATE UNIVERSITY」(ケント州立大学)と大きく書かれたもの。そのロゴの上には血の跡のようなシミが見られる。

実はこのデザインは、実際アメリカのオハイオ州ケント市にあるケント州立大学で1970年5月4日に起きた殺人事件を思い起こさせるものだったのだ。

「May 4th事件」と名付けられたこの殺人事件は、当時ベトナム戦争に反対する集会が開催されていた学内で起きた発砲で4名の死亡者を出し、社会問題にもなるほどの悲劇だった。

このトレーナーは、まさにこの事件に着想を得てデザインしたものとしか思えないとして批判を受け、今週月曜日にはアーバンアウトフィッターズ側が以下のように謝罪をするに至った。

「私たちは今回のことで、この商品がネガティブなものとして受け取られてしまったことを深く後悔しています」

現在、ネット上の商品はすでに削除されている。

この件で、ケント州立大学は「彼らのビジネスや広告のために、私たちの痛みを利用されたことを非常に遺憾に思っています」とコメントを残している。

知らないことで、誰かの痛みを思い起こさせることがある

実はこの2つの服は、世界の歴史やその背景を知らない人であれば、単にオシャレだと思ってつい着てしまいそうなデザインでもある。

特に、日本人は「英語」や「フランス語」がオシャレだからといって外国語の書かれたTシャツを気軽に楽しむことも少なくないだろう。しかし実際には、間違った外国語やおかしな言葉が書かれたTシャツを着て海外に行き、外国人らに指を差されて笑われている日本人の話を何度も聞いたことがある。

知らないことで、誰かの痛みを思い起こさせる危険がファッションにはあることを忘れないようにしたい。

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(中村綾花)