ドラゴンクエストXの3DS版。中身にカートリッジは入っておらず、ダウンロードコードと特典コードが書かれた紙が入っている。購入したらダウンロードして遊ぶ仕組みになっている。

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9月4日に発売された、3DS版のドラゴンクエストX(以下、ドラクエX)は、3DS初の本格的MMORPGとして注目を集めました。Wii、WiiU、Windowsなどで現在動いている大規模なオンラインRPGが、携帯ゲーム機でもできるということで、待ち望んでいたファンも多いでしょう。

ところが、ゲームができない、ということで大炎上しています。Amazonのレビューとかを見ても、☆1つで文句を言っているレビューだらけです。

果たして本当にゲームができないのかどうか、実際に数日間プレイしてみたので、詳しく見ていくことにしましょう。

■3DS版のクラウド接続とは

ドラクエXのようなMMORPGでは、遊ぶゲーム機側にもある程度データをインストールすることで、極力通信する内容を減らし、回線速度が遅くても快適に遊ぶことができます。これを簡単に図にすると、こんな感じです。

「ゲームサーバー」 ← → 「ゲーム機」(WiiU、Windowsなど)

そのため、インストールするデータ量はとても多く、現在では16GB以上の空き容量を必要としています。

ところが3DS版ではわずか100MBちょっとの容量で済むようになっています。それは、この図のような構成になっているからです。

「ゲームサーバー」 ← → 「クラウドサーバー」 ← → 「3DS」

ネットワーク上にWindowsマシンがあると思ってください。それが「クラウドサーバー」の部分です。3DSは、そのWindowsマシンの外部コントローラーで、インターネット接続をしています。自分でデータを持たずに、Windowsマシンに大半のデータがあり、本体は外部コントローラーに徹することで、3DSはデータをほとんど持たずにドラクエXを遊ぶことができるのです。これは実はドコモのスマートフォン版も同じ原理です。

このシステムの肝は、クラウドサーバーの部分です。想定よりも多くの人が接続をしたら、ネットワーク上の仮想Windowsマシンの数が足りなくなり、処理が重くなります。そこで、ドラクエXでは3DS版の発売数を絞り、十分対応できる数だけまずは発売されるようにしました。実際、ニンテンドーe-shopでのダウンロード販売はしていませんし、量販店でも予約をしていないとほとんど手に入れることができなかったのです。

■なぜ接続ができないのか

そうやって数を絞り、十分に対応できるようにしたとしてサービスが始まったのですが、おそらくひとつ誤算がありました。それは、ニンテンドー3DSLL月替わりダウンロードキャンペーンです。このサービスの9月分で、ドラクエXが用意されていました。これが、想像以上にダウンロードされたのではないでしょうか。

もともとMMORPGにはまっていて、課金するのをいとわない人たちが、サブキャラクターを同時に操作するために3DSLLごと複数購入、というパターンもあるかと思います(これは僕の周りだけかもしれませんが)。そうやって、当初の想定以上のドラクエXが販売された結果、アクセス過多でうまく接続できないのではないかと思います。

■接続ができないと何が起こるのか

3DSとクラウドサーバーの間の回線が良好でも、クラウドサーバー上の処理能力がいっぱいになってしまって遅くなると、3DSに表示されているゲームにも影響がでます。ここでポイントになるのは、全てのデータがクラウドサーバーにあるということは、音楽データもサーバー上にあるということです。

そのため、少しでもサーバーの調子が悪くなると、動きにラグが出ることもさることながら、音楽がぶつ切れになったり、変な音になります。これが想像以上にストレスです。

もともとドラゴンクエストシリーズの楽しさのひとつに、戦闘におけるテンポとレスポンスがいい、という点があります。「こうげき」を選んでボタンを押すと『ピッ』という音がして、その後攻撃のアクションがおき、ズバッという音と共に敵にダメージを与えます。BGMもさることながら、そういう効果音のタイミングが優れているので、ただボタンを押しているだけで楽しい戦闘になっているのです。その音がズレると楽しくありませんし、ストレスが貯まることになりました。

また、接続して遊んでいてもサーバーの調子が悪くなり、そのまま回線が切断されることも頻発しました。そこで問題になるのが「オフラインモード」です。

ドラクエXではゲームはオフラインモードとオンラインモードとに別れています。ゲームを始めるとオフラインモードで始まり、そこでチュートリアル的なクエストを経て、オンラインの世界へと旅立つ仕組みです。

問題なのは、3DS版だとそのシステム上、オフラインモードもインターネット越しにやらなければならない点でしょうか。もともとオフラインモードはそれほど時間をかけずに最初のチュートリアルという位置づけからか、セーブするポイントも1カ所です。さらに、どこでもデータを随時保存する仕組みもありません。その結果、3DS版でゲームを進めているときに回線の調子が悪くなる(向こうのサーバーの調子が悪くなる)と、回線が切れ、再び始めると最後にセーブしたところまで戻ってしまうのです。初日には、これでいつまで経っても話を進められないプレイヤーもいました。

もちろんオンラインで遊んでいるときに、急に回線が切れて落ちたりすることもあります。発動する時間が決まっているアイテムを使っている時に急に落ちたりすると、非常に切ないことになります。

現在は、発売初日から定期的に3DS版の緊急アップデートが行われているせいもあってか、以前よりは改善されました。ですが、少なくとも9月8日の夜に一緒に遊んでいた友人が回線の都合で落ちて、危うくクエストをクリアできなくなるところだったということがありました。

■読みにくいフォント

もうひとつ、3DS版で大きな問題になっているのは、「文字が読みにくい」とうことでしょう。非常に視認性が悪いフォントで、3DSの低解像度とあわさって、読むのに時間がかかります。

たとえば「鉄」と「銀」と「銅」の区別がつきにくく、これは鉄の装備なのだろうか、銀の装備なのだろうかと悩むことがあったりします。それから、クエストをうけるときの文字が読めないと、何をしたらいいのか、どこに行ったらいいのかもわかりません。

この文字の視認性については、改善するという話が出ています。ですが、現在のところはまだ読みにくく、非常に目が疲れる結果となっています。他のゲームではきちんと読めるフォントを使っているのですから、ここは早く何とかして欲しいですね。

スクウェア・エニックスIDについての罠

ドラクエXを始めるためには、スクウェア・エニックスIDを登録しなければなりません。登録することにより、目覚めし冒険の広場や、各種ツールを活用できるようになります。

ところがここにも3DS版だけに罠が潜んでいました。

・今までドラクエに登録しているスクウェア・エニックスIDを使ってゲームを再開(他機種で登録しているキャラを3DSLLで遊ぶ)
・新しくスクウェア・エニックスIDを登録し、新規にキャラクターを作ってゲームを開始する

この2つしか選べないのです。

つまり、他のゲームを遊んでポイントを貯めていたスクウェア・エニックスIDを使って、新しく3DSでドラクエXを始めるということができないのです。何のためのポイントサービスなのでしょうか。自社のサービスのことなんですし、何とかならなかったのでしょうか。

ちなみに他の機種では問題なく遊べるようです。3DS版だけこのような仕様になっています。

実際にスクウェア・エニックスに問い合わせてみたところ、この2つしか選べない。新しくスクウェア・エニックスIDを作ってくれ。ただし一度でも登録したことのあるメールアドレスは使えない。という返事でした。

なので、3DSから新規に始める人は、他のゲームで使っているIDがあったとしても、専用のスクウェア・エニックスIDを作らなければならないということを覚えておきましょう。

■ドラクエXが好きな人以外は「待ち」の方がいい

これらの不具合は、気にならない人は気にせず遊べるかもしれません。ゲームができないほどかといえば(頻繁に回線が落ちることを除いて)遊ぶことができます。実際、早朝などの空いている時間帯では、比較的快適に遊ぶことができました。文字に関しても、慣れれば何とかなります。3DSならではの、いつでもどこでも寝転んでだらだらとMMORPGができるというのはやっぱり楽しいです。

これから改善されていくという発表があるとはいえ、問題になるのはこのゲームが「○日有効券」を使って遊ぶタイプという点です。3DS版は無料の時間帯「キッズタイム」もなく、クラウドサーバーの仕組みのため、他機種よりも利用料金が高く設定されています。それが運営側の不具合で、購入した○日券のうち数日分がつぶされてしまうのです。なので、そこが気になる人はまだ様子見した方がいいと思います。現在まだソフトについてきた60日間利用券を使っていない人は、もう少し待ってみるといいかもしれません。

オンラインRPGのいいところは、どんどん改善されていくところにもあります。9月11日には大型アップデートが控えていますので、それ以降に、様子を見てから参戦するのがいいのではないでしょうか。

すでに遊んでいる人は、毎日メンテナンスごとにちょっとずつ改善されていくであろうサーバーを一緒に楽しみましょう。僕もがんばります。
(杉村 啓)