肩、腰、ひざ…体の痛みが慢性化する理由
オフィスワーカーなら肩こりや頭痛、肉体労働者なら腰痛やひざ痛など、どんな仕事をしていても体の不調はつきまといます。特に30代以降ともなると、体のどこも痛くないという人の方が少ないかもしれません。
ところで、体のどこかが痛い時、私たちはマッサージに通ったり、患部に湿布を貼ったりしますが、あまり良くならないか、一時的に症状が和らいでもすぐにまた痛み出して、慢性化してしまうことが珍しくありません。これは一体なぜなのでしょうか?
今回は『「黒幕」を知れば痛みは治る!──あなたの痛みが治らない「本当の理由」』(自由国民社/刊)の著者で、 トレーナーとして2006年のFIFAクラブワールドカップに参加した経験を持つ、たかこ整骨院院長の高子大樹さんにインタビュー。体の痛みが慢性化する原因と対策についてお聞きしました。
―『「黒幕」を知れば痛みは治る!──あなたの痛みが治らない「本当の理由」』についてお話をうかがえればと思います。本書で書かれている「痛みの「黒幕」が痛い場所にあるとは限らない」という高子さんのお考えはとても納得できるものでした。
たとえば「肩こり」の場合、黒幕となっていることの多い箇所はどこなのでしょうか。
高子:その人の生活状況にもよるのですが、たとえば座ってデスクワークをする人に多いのが、股関節や足の付け根の筋肉が固く縮こまってしまった結果、上半身が前傾してしまって肩に負担がかかるというパターンです。
―心当たりがあるお話です。腰痛に関してはいかがでしょうか。
高子:デスクワークの方の腰痛はタイプが二つあって、背中が丸くなることによって腰痛を引き起こすパターンと、肩こりと同じく股関節が固くなって腰痛が起きるパターンがあります。
この本で書いている“痛みの「黒幕」”とは、簡単に言ってしまうと「普段の癖」なんですよ。誰にでも普段から意識しないでやっている姿勢の癖や動きの癖があると思うのですが、その癖を長期間続けることによって、借金が増えるように体の歪みが蓄積されていき、あるタイミングで痛みが出るようになる。
ただ、蓄積した結果痛くなるということで、本人が原因に気がつかないんですよ。話を聞くと「急に痛くなった」と言うんですけど、本当はそうじゃないことが多いんです。
―たとえば右手で頬杖をつく癖がある人が、今度は左手で頬杖をつくことで骨格的にバランスが取れたりといったことはあるのでしょうか。
高子:そこが微妙なところで、右手で頬杖をつく癖がついてしまっているものを逆の手に変えても、背骨が右側に曲がったまま左に傾いただけ、ということになる可能性もあります。癖と逆のことをやったからといって左右対称になるとは限らないんです。
―慢性的な体の痛みは、肩こりでも腰痛でも痛みが起きるメカニズムとしては共通するところが大きいのでしょうか。
高子:本にも書いたのですが、縮んだ筋肉が原因で周囲の筋肉が引っ張られるということでいうと、メカニズムは一緒といえるかもしれませんね。
―痛みの「黒幕」は普段の癖だとおっしゃっていましたが、普段の癖によって使わない筋肉が縮こまってしまうわけですか?
高子:いえ、むしろ逆で、使いすぎて縮こまることが多いです。
あまり意識することはないかもしれませんが、椅子に座るだけでも腸腰筋という、股関節付近の筋肉を使っています。この筋肉が緊張していることによって、上半身が支えられているわけですが、緊張して縮みすぎると上半身は前かがみになって、そうなるとバランスを取るために今度は顎が上がります。どんどん無理な体勢になってくるわけです。
―高子さんは街中で人の態勢や体の動きを観察するのがお好きということですが、やはりどこかしら体が歪んでいたり、動きがおかしい人は多いのでしょうか。
高子:そうですね。やっぱり楽をしようとして、体重をどこかに預けてしまうんですよ。筋肉よりも骨や関節の方が支える力が強いので。立っている時も、両足に均等に体重をかけてまっすぐ立ち続けると筋肉を使いますが、膝をロックして片足に体重をかけると骨で体重を支える形になって、筋肉はあまり使わずに済みます。そちらの方が楽なんです。
でも、こういうのが長期間積み重なると、体が歪んでしまったりするわけです。若い子を見ていても、今はかわいい女の子だけど、この姿勢では将来膝が変形してくるな、とか思うことがありますよ。10年後、20年後に気づいても遅いので、若い人にも是非読んでほしいですね。
―女性といえばヒールの高い靴を履くことが多いですが、体格のバランスが崩れやすいのではないですか?
高子:そうですね。ハイヒールを履くと、距骨という足の甲の骨が前にズレてきます。それが股関節や首の痛みに繋がりやすいんです。
―そういった体の痛みが出ないようにケアする方法はありますか?
高子:足指の掴む力を鍛えることです。さっきもお話ししたように、ハイヒールを履くとどうしても距骨が前に出てしまうのですが、足指の掴む力が強ければブレーキになってくれます。普段からからこの力を強化しておくといいと思います。
また、女性は腰の形が男性と違っていて、普通に立っていても男性より少し前傾気味になります。それでハイヒールを履くものだから余計に前傾することになって、腰を痛めやすい。
ただ、これは下腹部に力を入れてグッと締めることで解決できます。足指と下腹部の二点を、ハイヒールを履く方は気をつけていただきたいですね。
(後編につづく)
ところで、体のどこかが痛い時、私たちはマッサージに通ったり、患部に湿布を貼ったりしますが、あまり良くならないか、一時的に症状が和らいでもすぐにまた痛み出して、慢性化してしまうことが珍しくありません。これは一体なぜなのでしょうか?
今回は『「黒幕」を知れば痛みは治る!──あなたの痛みが治らない「本当の理由」』(自由国民社/刊)の著者で、 トレーナーとして2006年のFIFAクラブワールドカップに参加した経験を持つ、たかこ整骨院院長の高子大樹さんにインタビュー。体の痛みが慢性化する原因と対策についてお聞きしました。
たとえば「肩こり」の場合、黒幕となっていることの多い箇所はどこなのでしょうか。
高子:その人の生活状況にもよるのですが、たとえば座ってデスクワークをする人に多いのが、股関節や足の付け根の筋肉が固く縮こまってしまった結果、上半身が前傾してしまって肩に負担がかかるというパターンです。
―心当たりがあるお話です。腰痛に関してはいかがでしょうか。
高子:デスクワークの方の腰痛はタイプが二つあって、背中が丸くなることによって腰痛を引き起こすパターンと、肩こりと同じく股関節が固くなって腰痛が起きるパターンがあります。
この本で書いている“痛みの「黒幕」”とは、簡単に言ってしまうと「普段の癖」なんですよ。誰にでも普段から意識しないでやっている姿勢の癖や動きの癖があると思うのですが、その癖を長期間続けることによって、借金が増えるように体の歪みが蓄積されていき、あるタイミングで痛みが出るようになる。
ただ、蓄積した結果痛くなるということで、本人が原因に気がつかないんですよ。話を聞くと「急に痛くなった」と言うんですけど、本当はそうじゃないことが多いんです。
―たとえば右手で頬杖をつく癖がある人が、今度は左手で頬杖をつくことで骨格的にバランスが取れたりといったことはあるのでしょうか。
高子:そこが微妙なところで、右手で頬杖をつく癖がついてしまっているものを逆の手に変えても、背骨が右側に曲がったまま左に傾いただけ、ということになる可能性もあります。癖と逆のことをやったからといって左右対称になるとは限らないんです。
―慢性的な体の痛みは、肩こりでも腰痛でも痛みが起きるメカニズムとしては共通するところが大きいのでしょうか。
高子:本にも書いたのですが、縮んだ筋肉が原因で周囲の筋肉が引っ張られるということでいうと、メカニズムは一緒といえるかもしれませんね。
―痛みの「黒幕」は普段の癖だとおっしゃっていましたが、普段の癖によって使わない筋肉が縮こまってしまうわけですか?
高子:いえ、むしろ逆で、使いすぎて縮こまることが多いです。
あまり意識することはないかもしれませんが、椅子に座るだけでも腸腰筋という、股関節付近の筋肉を使っています。この筋肉が緊張していることによって、上半身が支えられているわけですが、緊張して縮みすぎると上半身は前かがみになって、そうなるとバランスを取るために今度は顎が上がります。どんどん無理な体勢になってくるわけです。
―高子さんは街中で人の態勢や体の動きを観察するのがお好きということですが、やはりどこかしら体が歪んでいたり、動きがおかしい人は多いのでしょうか。
高子:そうですね。やっぱり楽をしようとして、体重をどこかに預けてしまうんですよ。筋肉よりも骨や関節の方が支える力が強いので。立っている時も、両足に均等に体重をかけてまっすぐ立ち続けると筋肉を使いますが、膝をロックして片足に体重をかけると骨で体重を支える形になって、筋肉はあまり使わずに済みます。そちらの方が楽なんです。
でも、こういうのが長期間積み重なると、体が歪んでしまったりするわけです。若い子を見ていても、今はかわいい女の子だけど、この姿勢では将来膝が変形してくるな、とか思うことがありますよ。10年後、20年後に気づいても遅いので、若い人にも是非読んでほしいですね。
―女性といえばヒールの高い靴を履くことが多いですが、体格のバランスが崩れやすいのではないですか?
高子:そうですね。ハイヒールを履くと、距骨という足の甲の骨が前にズレてきます。それが股関節や首の痛みに繋がりやすいんです。
―そういった体の痛みが出ないようにケアする方法はありますか?
高子:足指の掴む力を鍛えることです。さっきもお話ししたように、ハイヒールを履くとどうしても距骨が前に出てしまうのですが、足指の掴む力が強ければブレーキになってくれます。普段からからこの力を強化しておくといいと思います。
また、女性は腰の形が男性と違っていて、普通に立っていても男性より少し前傾気味になります。それでハイヒールを履くものだから余計に前傾することになって、腰を痛めやすい。
ただ、これは下腹部に力を入れてグッと締めることで解決できます。足指と下腹部の二点を、ハイヒールを履く方は気をつけていただきたいですね。
(後編につづく)