BI・データ活用ソリューション「Dr.Sum EA」やBI・ダッシュボード「MotionBoard」などを提供するウイングアーク1stが、今年も名古屋・大阪・東京の3都市で情報活用セミナー「夏の情活塾」を開催する。ここでは、7月16日に大阪府のヒルトンプラザウエストで開催予定のセミナーから、メディカルメーカーであるアルケアの事例講演「生産現場におけるデータ活用とは? 〜成長戦略推進への取り組みと実践〜」の概要を見ていこう。

○急激な市場の変化に対応するべくデータ活用を開始

アルケアは、メディカルケア/ホームヘルスケア/スポーツ&セルフケア用品などの開発・製造・販売を手がける企業だ。同社がビジネスを展開している医療材料・消耗品の市場は医療費抑制が叫ばれ始めて以降、医療制度や治療方法の改革、さらには高齢者の疾患が増加するなど、ここ数年で劇的な変化を遂げている。

情報企画部 部長の中嶋英之氏は「弊社では急激な市場の変化に対応するべく、市場競争力や製品・サービスの付加価値向上などが求められました。そこで自社の生産性や実行力を高める必要が生じたのです」と語る。

こうした課題の解決に向けて、アルケアではまず散在していたデータを一ヶ所に収集・蓄積するため基幹情報システムの刷新を実施。ある程度のデータが蓄積されたところで、もっとも効果的な活用方法の検討をスタートした。

○”役割・階層別”の考え方をDr.Sum EAとMotionBoardで具現化

同社の構想で一番重視していたのが”役割・階層別”の考え方だ。まず役割別は、製造部や品質保証部など部署ごとに仕事の役割が異なることを意味する。一方の階層別は、課長や部長といった役職ごとの関係性だ。この横軸にある”役割”と縦軸にある”階層”では、それぞれ必要とされる情報が異なってくる。たとえば製造部の課長なら、自分が受け持っている製造ラインに関する情報が重要で、その中に意思決定の鍵となるような特に重要なデータがあれば、これが最初に見るべきデータになるだろう。こうした考え方に基づき、同社では単なるデータの分類だけでなく、役割・階層業務に応じた情報をまとめた画面を適切に表示できる製品を選び始めたのである。また、基幹システムとの親和性、画面構築の柔軟性なども重視したポイントとなった。

「製品の機能以外では、導入や細かい作り込みを行う際に自社内の技術・知識・ノウハウだけではどうしても限界が出てくるため、BIコンサルに関するサポートの厚さという面も考慮しました。いくら詳細な構想があっても、実際の画面に落とし込めなかったり情報が見づらくなるようでは意味がありません。データからさらに深堀りするためのドリルダウンなど、BIコンサルの力を借りる機会も多いと感じたわけです」と、中嶋氏は選定条件について語る。

こうした各種条件をすべて満たす製品として、アルケアではウイングアーク1stが提供するDr.Sum EAとMotionBoardの導入を決定した。生産管理システムのデータをDr.Sum EAのサーバに取り込み、MotionBoardのダッシュボードから参照する仕組みだ。同社ではこのシステムを「生産コックピット」と呼び、2013年7月から仮運用を開始。1年間かけて実務レベルでの動きをチェックするとともに、必要な帳票類の整備を実施した。表示するデータについても、構想と現場における意識のズレを埋める作業が進められ、2014年7月から本格展開をスタートしている。

○最短で日次ベースの実績把握が可能に

生産コックピットの構築は、アルケアの業務に大きな改革をもたらした。まず現場レベルでは、役割・階層別における実績把握のスピードが大幅にアップ。「従来は月報帳票などを基準としていたのに対し、現在は最短で日次ベースでの実績把握ができるまでになっています」と中嶋氏は語る。

また、原材料や配合などの違いによる影響を簡単に調べられる原価シミュレーション機能が標準搭載されているのも便利な点だ。従来の手計算やExcelを用いた算出方法と比べて、スピードと正確性が飛躍的に向上したという。これはビジネスの幅を広げる意味でも重要な機能といえるだろう。

一方でシステムの運用面から見ると、従来は月報帳票作成のためにもデータの集計・分析を行う必要があったが、これをすべて生産コックピットの画面上から行えるため、業務負荷の軽減につながっている。

「そのほか、画面の内製化に関するノウハウが持てたという部分も嬉しい効果でした。完全に新規の部分は当然ながらBIコンサルのサポートを受けますが、現場で新たな切り口のデータやさらに深掘りした活動へ進みたい時、わずかな改変であれば自社内で解決可能です。現場視点で見せ方を変えられる柔軟性の高さもポイントですね」と語る中嶋氏。

○将来的には定量・定性データの両方を活用したコックピットへ

アルケアではもともと社内にあるデータを、数値系の”定量データ”と言語系の”定性データ”に分けて考えている。今回は数値として集計できる定量データに絞って取り組んできたが、今後は定性データの分析にも着手し、将来的には定量・定性データの両方を合わせて全社のコックピット構想で活用したいそうだ。

「たとえば、製造現場なら数値が大半になる可能性が高いので定量データを重視し、営業であれば定性データを重視するなど、役割・階層別に配分を変える検討も必要になってくるでしょう」と、今後のデータ活用に更なる意欲を見せる中嶋氏。

最後に「MotionBoardは、データをどのように捉えてどう使う、という企業の考え方を非常に上手く反映できる製品です。弊社におけるデータ活用の一貫した考え方や、生産コックピットとして具現化した方法などをご覧いただき、少しでも皆さまのご参考になればと思います」と、セミナー参加者へメッセージを送ってくれた。

(エースラッシュ)