E7系新幹線の車両の一部です。

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先日、長野の実家に帰省した際に、偶然乗り合わせた「E7系」。
「E7系」とは、2015年春の北陸新幹線金沢開業に向け、JR東日本とJR西日本が共同開発した車両。今年3月15日に長野新幹線「あさま」として、「先行」で営業運転を開始したことが報道されていた。

でも、テレビでも新聞でも、報道されるのは「車体の色や形状などの外観的デザイン」と、「ファーストクラス」にあたる最高級「グランクラス」の快適性ばかり。
報道を見ている分には「グリーン車すら乗る機会がないのに、さらにその上の最高級シートなんて、一般人にはあまり関係のない話だな」とか、「鉄道に詳しい人には外観の違いは大事だろうけど、一般人にはよくわからないな」といった印象が強かった。

だが、実際に乗ってみて、驚いたことが多々ある。
いくら鉄道に疎い人間でも気づかずにはいられない快適性・工夫の数々が、随所に盛り込まれているからだ。

まずは「普通車両の座席の広さ」。足をのばして座れる広い足元に、横幅も広い気がする。従来の「あさま」座席に対してどの程度の広さなのか、測ってみたいくらいだった。
また、各座席の「枕」は可動式! 好きな高さに調節できる。これ、地味に見えて案外嬉しい工夫だ。
さらに、荷物棚にはミラーがついていて、忘れ物チェックができるようになっているし、車両内の電光掲示板の文字はやたらとデカく、遠くからでも読みやすい。
また、ビジネスマンなどにとっては非常に嬉しいのが「全席コンセント付き」ということ。これは「最高速度260kmと、E5系ほど高速運転しないことから、電気容量的に余裕があるため実現した」という内容がビジネス誌に書かれていた。
ちなみに、座席以外の車内設備も充実していて、電動車いすでも利用できる多機能トイレがあったり、デッキ部には防犯カメラがあったりと、安全性や快適性をこれでもかというほど追求しているように見える。

そして、報道では「静か」とだけ表現されていることが多いが、実際に乗ってみると、想像をはるかに超えた「静かさ」「揺れのなさ」で、驚く。山道を進む部分の多い、この路線においては、この「揺れのなさ」はもっとアピールすべきポイントじゃないだろうか。

数多の報道を見る限り、「最高級シートに座る人にとっては素晴らしい車両」なんだと思っていたが、通常のあさまの料金で、普通の座席で、こんなにも快適な旅ができるとは嬉しすぎる誤算だった。個人的には、どこにも文句のつけようのない快適さだった。

それにしても、なぜ細かな工夫があまり報道されないのか。工夫一つ一つを取り上げると、別の他の車両にすでに搭載されているなど、目新しさがないのだろうか。
また、延伸前に車両だけ先行デビューした理由は何なのか。JR東日本・広報担当者に聞いてみると……。
「そういったトリビア的なこと、バラエティの情報番組などには、すべてお答えしていません。HPのプレス資料の範囲なら良いですが、プラスαが多すぎますし、そもそも取材はすべてお断りしています」とのご回答。

車両そのものは申し分ない快適さだったが、対応は……。もっとアピールすれば良いのに!、と思うのは、余計なお世話なのでしょうね。
(田幸和歌子)