ブータンでは野菜感覚で食べられているトウガラシ。市場にもどっさり売っている(提供:ブータン政府観光局)

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幸せの国、ブータン。2011年に来日したブータン国王、ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王陛下のスピーチを覚えている人もいるのでは? 

実はあのスピーチの影響で、ブータンを訪れる日本人はかなり増えた。2012年の日本人観光客は約7,000人を記録。2011年に約4,000人だったことを思うと、かなりの伸びといえる。ただ、翌年にはまた4,000人程度に落ち着いたし、そもそもの数が少ない。日本人にとってはまだまだ秘境感たっぷりの旅先といえるだろう。

ブータンはヒマラヤ山脈の南麓に位置し、中国とインドにはさまされた小さな国だ。面積は九州と同じくらいで、人口は約70万人。豊かな自然に恵まれ、国土の7割を森林が占める。水資源も豊富で、電力は100%水力発電でまかなわれている。国民総幸福量(GNH)という独自の指標を打ち出すなど、ユニークな国としての注目も高い。

先日、日本橋三越本店で「ブータンウィーク」が開催。同イベントのために来日していた、ブータン政府観光局のチミー・ペム本局局長にインタビューし、知られざるブータンについて、アレコレ聞いてきた。

――民族衣装がステキですが、いつも着ているのですか?
ブータンでは、会社や学校、僧院を訪れるときなどには民族衣装の着用が義務づけられています。学校には制服がありますが、大人になれば自分が好きなものを着られます。色もデザインもとても豊富ですよ。

――洋服は着ないのですか?
プライベートな時間には洋服も着ます。街なかには、民族衣装の人もいれば、洋服姿の若者もいます。

――そうそう、ブータン料理は世界一辛いと聞きましたが本当ですか?
私自身、世界中の料理を試したわけではないので、一番かどうかはわかりません(笑)。ただ、トウガラシはよく使いますね。ブータンでは、トウガラシを野菜として食べます。ブータンの代表料理“エマ・ダツィ”も、トウガラシとチーズを混ぜたもの。肉や魚など、どんな料理にもトウガラシをかけるんです。

――トウガラシがスパイスじゃなくて野菜感覚なんですね! 辛くないんですか?
トウガラシの種類によっては辛く感じることもありますね。さすがに小さな子供はあまり食べません。ゲストが来たときは控えるなど調整もします。また、都市部には中華や和食を出す店もあり、旅行者の食事の選択肢は豊富です。ブータンでは食事は家で食べるのが一般的ですが、最近は外食する若い人も増えてきました。

――国民総幸福量(GNH)がユニークなブータンですが、旅行のシステムもユニークだと聞きました。
ブータンを旅行する際は、必ず日本か現地の旅行会社を通して申し込む必要があります。ブータン政府は1日あたりの最低料金を定めていて、春と秋は最低250ドル〜。夏と冬は200ドル〜。これにはホテルの宿泊料金や国内移動費、ガイド代、食事代などが、すべて含まれます。

ガイドが付くといっても、あらかじめスケジュールをきっちり決めないといけないわけではなく、その日の気分でガイドと相談しながら行き先をアレンジしたり、食事の場所を選んだりすることもできるという。そのあたりはかなり柔軟らしい。

――旅行者に人気のアクティビティは何ですか?
トレッキングをしたり、ブータン仏教の僧院を訪れたり。ファームステイ(農家民泊)で現地の暮らしを体験するのも人気があります。

人気シーズンは秋や春だが、夏もおすすめとのこと。雨期ではあるが、一日中シトシト降り続く日本の梅雨とは違い、朝や夕にさっと降るだけ。最高気温も28度ほどで暑すぎず、過ごしやすく、花や緑も美しい。そしてもう1つ、おいしい話もある。実は8月はブータンのマツタケシーズンなのだ。ブータン中央部の名産地・ウラでは、毎年8月(今年は8月23日、24日)に「マツタケフェスティバル」を開催され、炭火焼のマツタケやスープがほぼ食べ放題なのだとか!! うーん、いつか行ってみたい!

今のところ日本からブータンへは直行便はなく、バンコク経由で行くのが一般的。バンコクからは直行便なら約2時間半と意外に近い。同じアジアでありながら、独自の文化が育まれ、ユニークな体験ができる国、ブータン。まさにこれからベストシーズンを迎えるから、次の旅先として検討してみてもよいのでは?
(古屋江美子)