2年生3番打者が4本の二塁打!読み切った第1打席と冬場の成果を活かした第2打席!

 見事な先制攻撃が効いて、得点を重ねた白鷗大足利。東陵の投手陣から15安打で9点を奪って、初出場の選抜で1勝を挙げた。

 「大振りせず、コンパクトに強い打球が打てていたと思います」と攻撃陣を讃えた藤田慎二監督。中でも、「初回のタイムリーが大きかった」と3番大下誠一郎(2年)の先制二塁打を勝因の一つに挙げた。

 1回表にピンチを背負ったものの、無失点で切り抜けた白鷗大足利。その裏、1番周東 貴人(3年)が、内野安打で出塁した。2番中島 健寿(3年)が送って、一死二塁で3番の大下が打席に向かう。 東陵の先発・佐藤 洸雅(2年)が、二人の打者に投じた5球を観察して、感じたことがあった。

 「最初の二人のバッターが、外中心の投球だった。(それに)3番の自分にはまともに真っ直ぐでは勝負してこないとも思いました」。

 佐藤の大下に対しての投球は、まさに外角中心。それに1球目と2球目が変化球と、大下が感じた通りだった。そしてこの2球でストライクが取れなかった佐藤は、3球目を迷いなく決めた。 「2ボールでストライクを取りたいという気持ちが強かった」と直球を選択。 打席の大下は、「2ボールになって、真っ直ぐが来るとしたらここだなと思って、ヤマを張りました」と狙いを直球に定めた。

 投手と打者、双方の読みが一致した3球目。「高めに浮いてしまった」という佐藤の直球を、大下のバットが捕えて、打球は三塁線を破った。二塁から周東が生還。勝負の場面を勝った大下は、二塁に達した後に笑顔を見せた。

 流れを掴んだ白鷗大足利。3回裏の攻撃で、再び大下に打席が回る。場面は一死一塁。「最初に真っ直ぐを打っていたので、次は変化球だなと思って打席に立ちました」と佐藤に対する。 2ボール1ストライクからの4球目、佐藤が投じたのは変化球。『待ってました』と言わんばかりの球を、大下は逆らわずに打ち返した。 「手応えがあった」という打球は右中間を破り、一塁走者の中島が一気に生還。勝敗への流れれを決定づける一打を、またも2年生が放った。「素直にうれしいです。ずっとバッティングに悩まされてきたが、冬にやって成果が出せた」と振り返り、報道陣の前で満面の笑みを見せた。

 パンチ力のある大下が悩み続けてきた部分。聞かれた本人はこう答えた。 「体が前に突っ込んじゃう面があった。足を上げるのはリスクがあるので、下半身を強化して、右足を乗せるように練習してきた」。 さらに、「秋までのバッティングでは、力で持っていこうとしていたので、2打席目のようなバッティングはできなかったと思う」とも付け加えた。

 ベンチの指揮官は、「気持ちが先に行きたがる子。その辺りのメンタルと、技術的な所も心に動かされる部分がある」と分析する。そして、2打席目を右中間に持ってことを、「これが彼本来のバッティングです」と目を細めた。 結局、この試合で大下が放った4安打全てが二塁打。冬場に藤田監督がつきっきりになって練習したことを活かせた大下は、最後にこう締めた。

「監督さんに感謝です!」 

(文=松倉 雄太)