ノンアルコールカクテルって、清涼飲料と何が違うの?

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ゴルフの後、ひと風呂浴びてビールをゴクリ。まさに至福の時間と言いたいが、車で来ているとアルコールを摂るわけにはいかない。そんな時に、ノンアルコールビールを愛飲している方も多いだろう。

最近ではビールだけでなく、カクテルやサワー、ワインに至るまで、多種多様なノンアルコール飲料が発売されている。私たちは気分に合わせて、さまざまな種類のノンアルコール飲料を楽しめるようになったわけだが、ここでふと、素朴な疑問がわいてくる。「ノンアルコールカクテルやサワーって、清涼飲料と何が違うの?」ということだ。

このような疑問をノンアルコール飲料の開発者に直接聞けるチャンスがあり、取材に向かった。場所は大阪・梅田の「アサヒ ラボ・ガーデン」。2月4日に、アサヒビールがノンアルコール飲料の新商品を発売することに合わせて、『割って楽しめるぎゅっとカシスのノンアルコールでマイドリンクをつくってみよう』というセミナーが開催されたのだ。

■「味の良さ」で近年急拡大したノンアルコール市場

セミナーの冒頭では、この日、発売された新商品「アサヒゼロカク ぎゅっとカシスのノンアルコール」が紹介された。

同社では2010年から他社に先駆けてノンアルコールカクテル、「ゼロカク」をシリーズで展開。現在7商品があり、「カシスオレンジテイスト」、「ジントニックテイスト」や「ラムコーラテイスト」など、あらかじめ完成したカクテルの味で販売してきた。今回の新商品では、味だけでなくカクテルのもう一つの醍醐味である「自分で割って飲む」という楽しみ方を提案。カシスリキュールのノンアルコール版を発売した。

ノンアルコール飲料をソーダやジュースで割って飲む――。「そこまでする必要があるの?」と思う方もいるかもしれないが、こういった商品が登場するほど、ノンアルコール飲料の市場は拡大している。

アサヒビールのマーケティング本部・マーケティング第一部プロデューサー・三神依子さんは次のように説明する。「2009年に発売されたアルコール0.00%のビールテイスト清涼飲料ブランドがきっかけとなり、市場は急速に拡大していきました。最初は車の運転や妊娠時などに、仕方なく飲んでいた面があったと思います。しかし、各社が競って味を磨いていくなかで、お酒を飲む人はもちろん、普段はお酒を飲まない人にも積極的に取り入れられていくなど、アルコールとは違う新しい市場として成熟していきました」

2013年度のノンアルコール飲料購入者の年間購入数は24本、購入種類は3.4種類に及んでいる(アサヒビール調べ)。消費者は目的やシーンに合わせて、さまざまな種類のノンアルコール飲料を楽しみながら飲みわけているようだ。そんな中、オリジナルの味を求める消費者の潜在的なニーズに応えて「アサヒゼロカク ぎゅっとカシスのノンアルコール」が発売されたというわけだ。この商品は濃縮タイプで、そのままではもちろん、ロックやソーダ割り、お湯割りで楽しむことができる。さらにオレンジジュース割り、ウーロン茶割りなど、アレンジの幅が多い事も特長で、気分にあわせてお好みのアレンジを楽しむ事ができ、自宅でカクテルを作っているような気分を味わえる。1対1で割ると1缶で約5杯分だ。

ノンアルコールに求める価値は「お酒を飲んだような気分になれること」「お酒の世界観を楽しむこと」。実際に自分でカクテルを作る行為そのものが「お酒気分」を高めてくれるというわけだ。

■“飲んだ気分”こそ、真骨頂。味づくりの秘密とは?

「昼間ですが、ノンアルコールなので気にせず、ぜひ、飲みながら聞いてください」。

セミナーの途中、テーブルに置かれた「ゼロカク」シリーズを指して、三神さんがこう促すと、会場のあちこちで、プシュプシュと缶を開ける音が鳴った。

中高年の男性が集まるテーブルでは、思わず乾杯する姿が見られた。味の感想を聞いてみると、「おいしいよ、うん、しっかりお酒を飲んだって気分になるよ」と50代のS・Hさん。他の参加者にも感想を聞いたが、皆、「お酒の味」と太鼓判を押す。なかには「ノンアルコールなのに、酔っちゃたみたい(笑)」と話す参加者もいて、驚いた。

もちろん、アルコールは入っていないので、実際に酔っているわけではない。しかし、「お酒の味」の本物感から飲んだ気分になり、陽気になったり、リラックスしたりするのだ。ノンアルコール飲料の持つ、底力を改めて実感した。これほどの力を持つ「お酒の味」を、メーカーではどのように実現しているのだろうか?

「「アサヒ ゼロカク」は、お酒の味や香りを、アルコールをまったく含まないもので再現する、アサヒビールがチューハイ・カクテルで培ってきた調合技術の賜物です。この技術はビールテイストにも活かされています。かつて当社で発売していたノンアルコールビールは、よりビールの味わいに近づけようと、ビールと同じ原料である麦汁を使用することにこだわった製法で展開していました。、しかし、発酵させない麦汁ではビール類に本来ない甘味や雑味が含まれてしまい、かえってビールの味わいとかけ離れてしまいました。近年では180度発想を変えて、麦汁を使用せず、お客様が求めるビールの味わいを調合で再現するようにしたところ、画期的においしいビールテイストが誕生したのです」(三神さん)

その集大成が、「アサヒドライゼロ」である。2012年に発売されると、ノンアルコールビールでこれまでにないキレ味が話題となったのは記憶に新しい。

■アルコール0.00%を実現するのは至難の技

味づくりの秘密を伺ったところで、最後に「清涼飲料と何が違うの?」という疑問を投げかけてみた。

すると「ノンアルコール飲料はお酒の味や香りを目指してブレンドしているだけで、清涼飲料と成分上は何も変わらないですね」と三神さん。

しかし、こんなことも教えてくれた。「現在発売されているノンアルコール飲料は、アルコール0.00%が多いのですが、実はこれがすごく難しいことなのです。というのも、実は香料の溶剤には一般的にアルコールが含まれているからです。もちろん、香料に含まれるアルコールはごくごく微量のため、酔ったりしません。でも「アサヒ ゼロカク」は、アルコール0.00%を謳っていますので、すべての原料でアルコールを全く含まないものを厳選しなくてはいけないのです。」(三神さん)

■休肝日に。酔い醒ましに。賢く活用しよう!

このような特徴を持つノンアルコール飲料を消費者は賢く活用しているという。

「たとえば、仕事をしながら、資格の勉強をしている方は、夕食でお酒を飲んで酔うわけには行きません。でも、仕事を終えたあとでリフレッシュもしたい。そんな時にノンアルコールを飲まれているようです。現代人は多忙で、ストレスも多い。ノンアルコール飲料は、ストレス解消と健康維持の強い味方となってくれる飲み物です。糖類ゼロの商品も多いので、ダイエットを気にする方にもオススメです。皆さんのライフスタイルに合わせて、ぜひ、活用していただきたいと思います」(三神さん)

ちなみに、日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザー資格を持ち、「かつては毎日、2、3軒飲み歩くのが当たり前だった」と話す程、お酒が大好きな三神さんのオススメは、酔い醒ましに飲むことだ。「もう少し飲みたいという時に、ノンアルコールに切り替えると、楽しい気分はそのままに飲みすぎも防ぐことができて、いいですよ」

お酒が大好きで、これまでノンアルコールに見向きもしなかったという人も、こんな方法ならいいと思うが、いかがだろう?

(森下和海=撮影・文)