圧迫面接、イケメン人事…“トンデモ面接官”たちの悲喜こもごもなエピソード集

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採用戦線真っ盛りの今、いろいろな学生さんと出会えて楽しい日々を送っている人事担当もいれば、そうでない担当もいます。

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今回は、そんな喜怒哀楽に包まれた「人事担当たちのエピソード」をお話します。

■大学からクレームを受けた圧迫面接官A部長の末路

誰もが嫌な圧迫面接。ある中堅商社の営業部長を務めるAさんも、最近の学生はだらしない、時間の無駄と、面接担当になること自体をいやがっている一人でした。

そしてその面接手法は、典型的圧迫面接。Aさんの面接を受けた後に辞退する学生が頻発し、人事も頭を悩ませていましたが、実力者のAさんを面接から外すわけにもいかず、インターネット上でも圧迫面接で有名な会社としてちらほら名が上がっている事態に至っていました。

そしてある日、大学から「御社の面接をうけた学生から、御社の面接担当A氏の面接手法、面接時に暴言を吐かれたなどの苦情が寄せられたので、改善してほしい」との文書が届いてしまう有様でした。

さすがに無視できなくなった人事は役員に相談。役員からの指示は、過去Aさんの面接を受けた社員に、面接を受けてどう感じたかを、人事考課には関係ないとの約束の元、聞き取り調査することでした。

「確かに圧迫感はある。でも、A部長の熱意を感じて、この会社に決めた」
「面接時に自分のダメなところをきちんと丁寧に指導してもらえた。むしろ、A部長のおかげで内定まで至ったんだと思う」
「ダメだしは確かに行き過ぎ。ただ論点がずれていないので、むしろ好感を持てた。指導力は実際の現場でもあると思う」

現場社員からはA部長が優秀な面接担当であるとの声が続出し、聞き取り調査を指示した役員からも、「これはA部長がすこし圧迫気味で行き過ぎだが、それに耐えられない学生に問題があるんじゃないか」との結論に達しました。

これをA部長に伝えると、「自分では指導のつもりだったが、面接では初対面、圧迫面接と言われても仕方ない。深く反省する」との答えが返ってきて、人事も一安心していました。

しかしそれからが問題、A部長が面接で圧迫をしなくなった代わりに完全に好好爺になってしまったため、学生から「しまりのない面接」「なにを答えても、そうですか。そうですかと、基準がよくわからない面接」との声が、インターネット上であがり、逆に内定受諾率が下がる結果に陥りました。圧迫面接が正しいのか、ゆるい面接が正しいのか、人事担当は今日も頭を悩ませています。

■ある信条とともに滅亡した社長

今年で創業30年。web制作では老舗といわれているB社のC社長は、人事を悩ませるとんでもない癖のある人物でした。

男尊女卑甚だしく、もちろん社長面接でも、女性にだけ彼氏はいるのか。出産したら辞めるのかなどを聞いてしまう癖がありましたが、不思議と苦情やインターネットにその情報はながれず、いままで新卒採用をしてきました。

なぜなら、C社長は「女性差別する女性社長」だったのです。女子学生の応募者からしてみれば、まさか女性社長が女性差別をしているとは思わず、親身になって将来を考えてくれていると誤解していたのです。

入社後は女性に対して非常にヒステリックに接してくるこの仮面社長に対し、ある女性が立ち上がりました。人事で採用を担当していたDさんです。日頃から社長に近い存在のため、女性にのみヒステリックな社長の言動にうんざりしていたDさんは、会議で独演会を開く社長の言動を録音することに成功しました。そしてDさんは友人の力を借りて、ネット上に音声を公開しました。その音声とは……

「女性社員は顔で選ぶもので、男性社員の結婚相手として入社させるにすぎないのよ。だいたい女が戦力になるわけないじゃない。女は私だけで十分なのよ」という、5分程度の録音がネット上で大反響になりました。ネット上で、「ナチスみたい」「恐怖女の会社」など……。

結果、その年の内定者は8割が辞退。在籍社員も、女性を中心に離職者続出、各種採用媒体からも見放され、急激な人手不足に陥りました。その結果、安易に中途採用の大量公募に手を出した結果、社員のレベルが急速低下し、受注難に陥る結果となりました。

もちろんその前にDさんは、すっと退社。2年後、業界の老舗と言われたB社は、この世から消えることになりました。社長の人事採用に関する方針の一言が、会社を死に追いやったのです。

■人気が高すぎる人事課長と多すぎる内定者が生んだ末路

化学商社E社はどちらかというと地味で堅実な事業を行っており、学生の合同説明会を行っても、5人聞きに来れば御の字という状態でした。そんなE社の人事課長が家庭の都合で退職することになり、新しい人事課長を中途採用することになりました。

そんな折に、白羽の矢が立ったのが、E社の人事コンサルティングを担当していたFさん。誠実を顔に書いたイケメンで、E社の人事施策は実際Fさんが考案して、成功に導いてきました。

E社としては破格の待遇でFさんを迎え、社長からはFさんに低迷する新卒採用の指揮をお願いしたい、昨年の5人の3倍、15人はほしいとの鶴の一声があったのです。

すっかりやる気になったFさん。早速前年比5倍の募集予算を獲得し、精力的に全国を駆け回り、E社の隠れた良さを学生に伝える伝道師の役割を始めました。Fさんのさわやかな表情での説明、明朗な面接に学生は引かれ、もともと会社も安定した状況だったため、前年度たった5人だった内定候補者は、あっという間に10倍の50人に達しました。

そこでFさんは、一つの考えに囚われることになります。「もともとE社は不人気企業だ。内定を出しても辞退される可能性は高い。現に化学商社なんて地味なものを俺の魅力だけでひきあげてきたんだ。全員に内定を出しても、辞退続出で15人残るかどうか……」いままで不人気企業といわれて苦渋をなめてきた部下にも相談して、せっかく集まった50人全員に内定を出すことにしました。

しかし、この決断で、Fさんの命運は尽きました。内定者は次々に内定を受諾し、45名が内定者となってしまったのです。予定人件費の3倍がのしかかってきたE社の経営陣からは、Fさんの責任問題まで問う声が出始めました。しかし取り過ぎで内定取り消しするわけにもいかず、そのまま内定式を迎えたFさん。口々に内定者から「Fさんに共感して入社を決意しました!」「Fさんと一緒に仕事できて光栄です!」との声に、Fさんは厳しい表情を隠しきれませんでした。

そして、入社日を迎えたFさんにE社社長は、そっとつぶやきました。
「Fさん。とてもよくやってくれた。会社の経営は苦しくなるが、あれだけ地味でどうしようもないと思っていた我が社の説明会にあれだけの学生さんがきてくれて、正直涙が出たよ。ありがたいと思っている。」思いがけない社長の言葉にFさんは涙しました。

そしてE社社長は、みずからの資産注入だけでなく銀行交渉に奔走して増資に成功。現場も一時大量の新卒生に戸惑いましたが、Fさんが採用した新卒生は優秀であったことと、もともと力があってもそれを表に出さなかった古参社員の意地がうまく融合し、E社は躍進の時を迎えることができました。

そして、いまでは人事担当役員に就任したFさん。ことあるごとに「あのときの決断はいまでもミスと思っている。しかしそれをチャンスに変えたのは社長だ。」とつぶやいています。

いかがでしたでしょうか。人事悲喜こもごもの言葉通り、いろいろな人事担当がいます。日夜、役員と学生の方に挟まれて、がんばっている人事の姿を思い出していただければ幸いです。

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