PGA森会長、溜まりに溜まった協会内の膿を一掃することができるか(撮影:ALBA)

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 どの世界にも表裏がある。健全と思われるスポーツでも同様だ。そして、ゴルフの世界も例外ではなかったようだ。10月28日、日本プロゴルフ協会は記者会見を開き、副会長を含む理事二名の退会処分を発表した。暴力団と会食、またはプレーをしたというのが処分理由である。
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 そのうちのひとり前田新作氏は、PGAの副会長という要職にあっただけではなく、かつては賞金王にも輝いたことがある華々しい戦績を残したプロゴルファーであった。
 「もともと賞金王という看板のもとに副会長になって8年目。多大なる貢献をしていただいた。しかしこのようなあってはならない倫理違反を犯し、世間の皆様に多大なるご迷惑をおかけした。賞金王・副会長という看板が失墜してしまったことを残念に思っている。ただし、これまでお付き合いしてきて、素晴らしい温情のあるプロゴルファーだった」
 森静雄PGA会長は感想を問われてこう答えているが、ここで疑問が生じる。果たして、この「黒い交際」は前田氏だけに限られた特殊な事情によるものだったのだろうか。さらにまた前田氏自身にとってもこの2年間に限定された「黒い交際」だったのだろうか?
 日本のゴルフ界と裏社会と「交遊」は何も今回だけに限らないだろう。過去のゴルフ史を紐解いてみても、暴力団との関係を一切持たず、清く美しくスポーツマンシップに則ったゴルファーだ、と胸を張れる選手は、PGAの中でもほんの一握りであることは誰もが知っていることだ。
 日本を代表するプレイヤーの「黒い交際」は半ば公然の秘密だったし、そもそもPGAの歴代幹部にも同様の噂がついて回っていたではないか。
 
 今回、森PGA会長体制になって、この種の「黒い交際」と溜まりに溜まった膿を一掃しようとする意気込みが感じられるのはせめてもの救いだ。
 その流れで今回の処分があったとしたら望ましいことではある。しかし、その一方で、単に切りやすい人物を切るだけの「トカゲの尻尾切り」で終わらせようとしているのではないかという疑問は消えない。
 PGA内部の関係者が絶対匿名を条件に語る。
「森会長は当初、自身を含めた全幹部の総辞職も辞さないつもりで、一気に膿を出そうと考えていたようだ。ところが、調査を進めてみると、あまりにも該当する者が多くいて、その数があまりに多いということで処分を限定したという背景がある」
 実際、別のPGA幹部に聞くと、「本気で暴力団と関係をもった役員を処分したら、外部理事を除けば、森会長しか残らなくなる」と冗談ともつかないような回答をよこしてきた。
 さすがに、この時代にそこまではないだろうが、ゴルフ界が過去そうした目で見られて来たことは確かだ。さらに、実際に80年代、ジュニアゴルファーとして過ごした私自身の経験から言っても、ゴルフには常に「黒い影」がつきまとっていたことを記憶している。
 PGAは今回の事件を機会に「内部通報者制度」を制定した。健全化の一環として素直に評価したい。
 だが、そうしたシステムが機能するのはまだまだ遠い先のことだろう。本当の健全化は、今回、私に答えてくれた匿名のゴルファーたちが、堂々と声を出せるようなゴルフ界になってからのことだ。
 それが当然になったときに初めて森会長の改革はスタートしたと言えるだろう。

上杉隆プロフィール
NOBORDER代表取締役。1968年生まれ。ジュニア時代からゴルフを始める。マスターズなど海外取材も積極的に行い、ゴルフメディアへの執筆も多数。他分野でも舌鋒鋭い言説で注目を集める
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