担当M(以下M):今年のJリーグは低予算のクラブの頑張りが目立ちます。逆に本来ならもっと上位に来てもおかしくない戦力を持っているチームが苦しみました。

ラモス(以下R):本当によくなっているクラブがありますね。一番の象徴は鳥栖かな。昇格したばかりで補強も余りできず、それでも躍進しましたね。選手たちは本当に頑張ったと思うし、そのことは賞賛されなければいけないと思いますよ。だけど、逆に考えると鳥栖の躍進はJリーグの危機につながっていると思います。

M:何が危機なのでしょう。

R:鳥栖の躍進は美談だけど、その躍進を許している他のチームはどうなるか考えてみるとわかりますよ。鳥栖の選手より年俸が高い選手が揃っているのに、勝てないのはどんな結果を生むのか。僕がクラブの経営者なら、安い選手で勝てるのならそれに越したことがない。だったら年俸は低いけれどきちんとプレーできる選手に入れ替えますね。今の選手の年俸も下げる。年俸をたくさんもらっている選手たちは、年間予算が自分たちより低いチームに負けることが自分たちの報酬を下げることになるとわかっているのかな。Jリーグができる前の基準に戻るかもしれないんですよ。

M:シーズン前にきいたところでは、鳥栖のクラブ全体の予算が年間11億円でした。つまり経営者はこの金額でチームが作れると思ってしまうかもしれないということですね。

R:もちろん鳥栖の頑張りは、シーズン前の低い評価に対する反発だとか、尹晶煥監督の手腕によるものでもあるでしょう。だけど、鳥栖より予算が大きくて鳥栖より下位にいるチームは情けないと思ってくれなきゃ。チームを強くするにはキチンとお金を掛けなければならないという状況にならなければ、Jリーグは衰退していきますよ。そういう危機だということをハッキリさせないとね。

M:Jリーグがデフレ・スパイラルに陥る可能性もありますね。

R:Jリーグが年俸の低い選手ばかりになってしまったら、子どもたちにJリーガーになるという夢を与えられなくなりますよ。それにいい外国籍選手を取らなくなったというのも気になりますね。だけど、実際にチームが沈んだり、途中からチームが上昇したりというときに、よく外国籍選手の活躍というのが要因になっています。

M:クラブライセンス制度で、赤字を出すことがライセンス喪失に繋がっている――思い切った投資がしにくくなったというのにも関係しているかもしれません。

R:まずは選手にもちゃんと考えて、今年の自分のプレーを反省してほしいですね。