『心でっかちな日本人』は、社会心理学者、山岸俊男氏の2002年の著作です。

山岸氏には、

『信頼の構造』
『安心社会から信頼社会へ』
『社会的ジレンマ』

などの優れた著作もあります。


さて、山岸氏によれば、

「心でっかち」

とは、心と行動のバランスが取れなくなっている状態。

ひらたく言うと、様々な社会の問題の「原因」をやみくもに

「心」

に求めてしまうこと。

「心の持ちようさえ変えればなんとかなるさ」

といった「精神論」はその極端な例です。


例えば、最近も再び社会問題化している学校での「いじめ」は、

「子供たちの『心』が荒廃しているから」
(ex. 思いやりの心が育まれていないから・・・)

といった紋切り型の考え方にとらわれている人は、

「心でっかちの落とし穴」

にはまった人の典型だと山岸氏は指摘します。


そして、山岸氏は、いじめが起こる一番の原因は、

「頻度依存行動」

にあると主張しています。

「頻度依存行動」とは、

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」

というギャグに代表される行動です。

すなわち、自分が「ある行動」をするかどうかは、「その行動」を取っている人がほかに何人くらいいるかによって決まる(依存する)ということです。


「いじめ」はどんな学校・学級(あるいは企業)にも起こりうるということが言われていますが、それが広がってしまう、あるいは深刻化する背景には、「頻度依存行動」がある。

具体的に言うと、いじめをする生徒が増え始め、ある人数を超えると、いじめを阻止しようとする行動が取りにくくなるのです。

というのも、阻止しようとした生徒本人が、新たないじめの対象になる可能性があるからです。

このため、積極的にいじめに加担するか、または、黙認するしかなくなってしまうわけです。このため、いじめが深刻化していく。

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