電通消費者研究センターが2007年に実施した「電通・新大衆調査」の結果から浮かび上がってきた新たな消費者像は、「鏡衆(きょうしゅう)」と命名されていました。


「鏡衆」とは、

・人からの影響をうまく受け取りながら
・鏡のようにレスポンス&発信していく共振力を持つ人々

であり、「共振型消費者」とも表現されていました。

ここで「共振力」とは、「クチコミ発信力」とも言い換えることができます。すなわち、他者の情報に感心や感動、あるいは共感したら、その情報を鏡のように自らも再発信し、他者にも伝えようとする能力(意欲)が「共振力」です。

当調査によれば、鏡衆=鏡新型消費者が全体に占める割合は、43%と、半数近くに達するボリューム層になっていました。一方、「他者からの影響は受けないが、うまくレスポンス&発信することはしている」という人々は36%でした。彼らは、「私こだわり消費者」と表現されており、自分なりの選択眼で判断することを大切にしている人々です。この調査結果からわかるように、現代は、「個性を活かす時代、自分らしさの時代」と言われながらも、実際には、他者と共通点を探し、共有できる「モノ・コト」を楽しみたいという欲求の高まりがうかがえます。

「鏡衆」という言葉は、2007年当時もそれほど注目されたわけではなく、現時点ではほとんど忘れ去られた言葉になっています。2007年当時は、ツイッター、フェイスブックの本格普及以前。共振力を発揮していたのは一握りのブロガーであり、レビューサイトで積極的に自らの評価を投稿するやはり一握りのレビューワーに過ぎなかった。また、当時ソーシャルメディアの雄として絶好調だったmixiは、基本的にクローズドな仕組みであったため、拡散力に欠けていました。つまり、「鏡衆」という概念そのものに対しては納得できても、その具体的な影響力を実感することは、当時はまだ困難だったと思われます。


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