読書には、「啓発の読書」「獲得の読書」「娯楽の読書」がある。ここでは、あらためて啓発の読書――著者の表現した世界を鑑(かがみ)にして自分の世界を耕すという負荷作業――についてまとめる。

 私はこれまで出版社との縁に恵まれ、何冊か本を刊行してきました。今年も2冊出す予定で、現在執筆を行っています。特にベストセラーを出すほどの実力者ではありませんが、きょうはものを書くこと、そして本を読むことについて感じていることを書きます。

 さて、ものを書くのが「アウトプット」とすれば、読書は「インプット」です。私は自著の執筆に向かうとき、次のことを意識します。

  「良書を読んで深呼吸をしよう。
   深く吸えば、深く吐ける。
   大きく吐けば、大きく吸える」。

 人の思考は、みずからが読んできたものに相応して、大きくもあり小さくもある、深くもあり浅くもある。
 ですから、深い次元の本を求め、深く汲み取ろうと努力を続けていくと、自分が書くものもじょじょに深さを増していきます。また、大きな本を書こうという意欲をもてばもつほど、大きな本と出会えるようになる。どんな本が真に大きな本なのかが見えてくるようになる。

 本(=著書)とは不思議なものです。本は、その書き手の知識体系や観念世界、情念空間をまとめたものです。読み手にとっては、自分の外側にある一つのパッケージ物なのですが、それがひとたび読書という行為を通じて、自分の内面に咀嚼されるや、自分の新たな一部となって、自分の知識体系・観念世界・情念空間をつくりかえます。これが本の啓発作用というものです。

 その意味では、読書は飲食と同じ。
良い食事は、良い身体をつくり、動くエネルギーとなる。
良い読書は、良い精神をつくり、意志エネルギーとなる。

 本は、自分の外側にある一つの縁であり、それを摂取することによって自分の内側を薫らせるものです。

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