暖冬が続いているドイツでは、厳冬仕様の衣類がかなり売れ残っている模様。現在、ドイツ全国で展開中の冬物セールは狙い目です。

写真拡大

「お客様は王様です」というドイツ語のことわざとは裏腹に、ドイツでは、スーパーのレジでイライラしながら長蛇の列に並ぶのは日常茶飯事。並んでいる時間が長いということは、レジ待ち時間に、さまざまな出来事も起きるわけでして。レジ待ち行列を舞台にした、ノンフィクションの短編ドラマを2編ご紹介します。

第1話「バナナ」

普段は滅多に行かないスーパーマーケットに、食料品の買い物に行きました。
乳製品と香辛料、バナナも数本買って買い物カートに入れ、レジの行列に並びました。そして、そろそろ自分の順番が回ってくるとなった時点で、初めて気づきました。「しまったっ! バナナの計量、忘れちゃった!」
スーパーでは、野菜や果物がバラ売りされていることが多いドイツ。商品を、買いたい個数だけ計量マシーンに乗せ、その商品の絵が書かれたボタンをポンと押すと、重量に応じた商品価格のステッカーが、ぺろ〜んとプリントアウトされて出てきます。その価格ステッカーを商品に貼付し、レジに持っていって会計する仕組みになっているのです。

レジ作業の簡略化とスピード化のため(それにしてはレジはいつでも大渋滞)、こういうシステムを採用しているスーパーが主流です。さて、「バナナを自分で計測して、価格ステッカーを貼る」という作業を忘れ、レジまで来てしまった私。実は、私が普段行くスーパーでは、レジ係がレジで重さを測ってくれるシステムなので、今日もその調子で忘れてしまったのです。「レジでは計測できないから、自分で測って、改めてレジに戻って来い」と、冷たく追い返されることもありえます。順番はもうすぐなので、果物売り場まで戻っている時間はありません。かと言って、私の後ろには、すでに何人もの客が行列をなしていますから、再び最後尾に並び直すのもゴメンです。これは弱ったなあと思いつつ、すぐ後ろに並んでいた女性客に尋ねてみました。

私「この店って、バナナ、自分で測らないとダメなんでしたっけ?」
女性客「ええ、自分で測ってこなくちゃだめですよ」
私「ああ、やっぱりね……」
私の前に並んでた男性客「いらない、いらない! オレもこの前、計量忘れたけど、レジで計測してくれたよ」
その男性客の前に並んでた女性客「いちいち面倒よね。◯◯(他の店名)なんて、計り忘れた客には、自分で計って来いって、追い返すわよ!」

右隣のレジに並んでいた女性客「最初から、全商品に値札を貼っておいてくれればいいのに」
その女性客の後ろに並んでいた客「その人件費が小売価格にのせられるのなら、値札は要らないですよ」

レジ係「あ、あの、当店はレジでも計量していますから、ご心配なく」

いやはや、たかがバナナで、盛り上がる盛り上がる。実は、こういうレジ端会議は日常の光景。レジ渋滞の要因は、一概にレジ係の責任ばかりとは言えないようです。

レジ待ち行列短編ドラマ 第2話「花束」へと続く。
(柴山香)