駄菓子屋から地域を元気に! 平塚の「駄菓子屋カフェ」に行ってみた
神奈川県平塚市。湘南の外れの静かな住宅地に1月3日、カフェを併設した小さな駄菓子屋がオープンした。店の名は『駄菓子屋カフェ 竹屋萬吉商店』。『竹万』という老舗割烹料理店の若主人である関口雄一さんが、別館のガレージを自らの手で改装して作り上げた店だという。飲食店の一部で駄菓子を売る光景は良く見かけるが、新規で駄菓子屋をオープンする例は珍しい。オープンから1週間足らずのある日、地図を片手にさっそく店にお邪魔してみた。
冬休みも終わり、落ち着きを取り戻した昼間の住宅街を歩いていくと、「駄菓子屋カフェ」と書かれた手書きの看板が目に入る。ドアの奥を覗くと、オーナーの関口さんがさわやかな笑顔で迎えてくれた。オープンしたての店内には、木と簾を使った手づくりの棚に、懐かしの駄菓子が所狭しと並んでいる。『うまい棒 10円』『あんずボー 20円』『よっちゃんイカ 30円』……。見覚えのある商品たちは、値段も品揃えも当時のまま。懐かしさを感じて話を聞くと、なんと関口さんは私と同じ33歳。なるほど、我ら駄菓子屋世代(?)にとって、お馴染みの商品が取り揃えてあるというワケだ。「いや〜、でも実はAKBが一番人気でして(笑)」と、苦笑いの関口さん。子供たちの声を反映して『ワンピース』のお菓子も仕入れるなど、イマドキ小学生にも柔軟に対応中だ。
ところでカフェはどこに? 関口さんに案内されて一旦店の外に出ると、隣にカフェへの入口があった。靴を脱いで店内に入ると、そこは、障子から柔らかい日差しが差し込む落ち着いた空間。テーブルは3つ並んでおり、カウンターにはコーヒー豆が数種類ディスプレイされているのが見える。「カフェでは同じ平塚にある『いつか珈琲屋』の本格的なコーヒーが味わえます。地元のお店同士がコラボして作ったお店なんですよね」と、関口さん。カフェには、駄菓子を持ち込むこともできるので、親子連れで来て、子供は駄菓子を、お母さんはコーヒーを味わいながら、のんびり休憩して行くのも良いだろう。開店は昼12時から「日没」まで。このユルさも、なんだかここでは心地いい。
しかし、関口さんは割烹料理店の若主人というお仕事をお持ちの方。なぜ今、駄菓子屋カフェを? そこにある想いを聞いてみた。「今の子供たちはコンビニやスーパーでお菓子を買います。ショッピングセンターの中に駄菓子屋チェーンが入っていたりもしますが、それは子供たちが自分で行くのではなく、親に連れられて行く場所ですよね。そうではなく、地域の子供たちが集まれる場を作りたかったんです」と、関口さん。
もともとこの地で生まれ育った関口さんだが、実は平塚には2010年に帰って来たばかりだと言う。アメリカの大学で経営学を学び、帰国後は東京と京都で料理人を経験。戻って来た平塚の街には、当時とは違って個人商店が無くなってしまっていたそうだ。「個人商店ががんばらなければ、街自体がつまらなくなってしまうのではないか」と感じた関口さんは、元々割烹の別館として主に予約客用に利用していた建物を改装して、駄菓子屋とカフェを営業することを思いつき、実行に移した。半年かけて手作業で作り上げた店舗は、実は可動式で、割烹の予約が入ったときにはもとの形に戻せるようになっている。「駄菓子屋カフェ」は、割烹料理店の空いた時間と場所を有効利用してつくった、カラクリ屋敷のような店だったのだ。
オープンして1週間、既に駄菓子屋には、常連のように通い詰めている子供たちもいるのだとか。くじ付きのお菓子の当たり外れに熱中する様子も、店番のお姉さんと会話を交わして行く様子も、当時と同じ。その光景と同時に、関口さんにはうれしく感じていることがあると言う。「懐かしい知人たちが店に遊びに来てくれるんです。割烹では敷居が高くてなかなか難しかったので、その気軽さがとてもうれしいですね」と、関口さん。想い描いた「人が集まる場所」としての役割が、早くも機能し始めているようだ。今後は、カフェのスペースを利用して、お年寄りと子供が触れ合えるイベントや、そば打ち教室、ギャラリーとしての貸し出し(駄菓子屋の店番をすれば、なんと無料!)にもトライしていきたいとのこと。
「場所と機会さえあれば人は集まれるんだと感じました。私のモットーは『温故知新』。新しいものにばかり目を向けるのではなく、日本人が昔から培った伝統や文化から新しい発見ができるような活動ができればと思います」と、関口さんは語る。駄菓子屋のいいところは、大人も子供も一緒に楽しめる場所であること。この古いようで新しいコミュニティづくりの手法は、どこの街にも応用ができるだろう。今後の展開も楽しみに見守りたい。(池田美砂子)
ところでカフェはどこに? 関口さんに案内されて一旦店の外に出ると、隣にカフェへの入口があった。靴を脱いで店内に入ると、そこは、障子から柔らかい日差しが差し込む落ち着いた空間。テーブルは3つ並んでおり、カウンターにはコーヒー豆が数種類ディスプレイされているのが見える。「カフェでは同じ平塚にある『いつか珈琲屋』の本格的なコーヒーが味わえます。地元のお店同士がコラボして作ったお店なんですよね」と、関口さん。カフェには、駄菓子を持ち込むこともできるので、親子連れで来て、子供は駄菓子を、お母さんはコーヒーを味わいながら、のんびり休憩して行くのも良いだろう。開店は昼12時から「日没」まで。このユルさも、なんだかここでは心地いい。
しかし、関口さんは割烹料理店の若主人というお仕事をお持ちの方。なぜ今、駄菓子屋カフェを? そこにある想いを聞いてみた。「今の子供たちはコンビニやスーパーでお菓子を買います。ショッピングセンターの中に駄菓子屋チェーンが入っていたりもしますが、それは子供たちが自分で行くのではなく、親に連れられて行く場所ですよね。そうではなく、地域の子供たちが集まれる場を作りたかったんです」と、関口さん。
もともとこの地で生まれ育った関口さんだが、実は平塚には2010年に帰って来たばかりだと言う。アメリカの大学で経営学を学び、帰国後は東京と京都で料理人を経験。戻って来た平塚の街には、当時とは違って個人商店が無くなってしまっていたそうだ。「個人商店ががんばらなければ、街自体がつまらなくなってしまうのではないか」と感じた関口さんは、元々割烹の別館として主に予約客用に利用していた建物を改装して、駄菓子屋とカフェを営業することを思いつき、実行に移した。半年かけて手作業で作り上げた店舗は、実は可動式で、割烹の予約が入ったときにはもとの形に戻せるようになっている。「駄菓子屋カフェ」は、割烹料理店の空いた時間と場所を有効利用してつくった、カラクリ屋敷のような店だったのだ。
オープンして1週間、既に駄菓子屋には、常連のように通い詰めている子供たちもいるのだとか。くじ付きのお菓子の当たり外れに熱中する様子も、店番のお姉さんと会話を交わして行く様子も、当時と同じ。その光景と同時に、関口さんにはうれしく感じていることがあると言う。「懐かしい知人たちが店に遊びに来てくれるんです。割烹では敷居が高くてなかなか難しかったので、その気軽さがとてもうれしいですね」と、関口さん。想い描いた「人が集まる場所」としての役割が、早くも機能し始めているようだ。今後は、カフェのスペースを利用して、お年寄りと子供が触れ合えるイベントや、そば打ち教室、ギャラリーとしての貸し出し(駄菓子屋の店番をすれば、なんと無料!)にもトライしていきたいとのこと。
「場所と機会さえあれば人は集まれるんだと感じました。私のモットーは『温故知新』。新しいものにばかり目を向けるのではなく、日本人が昔から培った伝統や文化から新しい発見ができるような活動ができればと思います」と、関口さんは語る。駄菓子屋のいいところは、大人も子供も一緒に楽しめる場所であること。この古いようで新しいコミュニティづくりの手法は、どこの街にも応用ができるだろう。今後の展開も楽しみに見守りたい。(池田美砂子)