メジャーリーガー・ダルビッシュ有(25)の誕生が確定的だが、その未来は決して明るくないようだ。高温乾燥の土地柄に中4日のローテーション、人種差別…と、幾重にも重なる困難が待ち受けていた−−。

 ダルビッシュを落札したのは、テキサスレンジャーズ。“伝説の奪三振王”ノーラン・ライアンが球団社長を務めるレ軍は「ダルの本命だった」という。
 「日ハムは明らかにしませんでしたが、米各紙の報道によれば、落札額は5170万ドル(約39億円)。『松坂大輔の5111万ドル(約60億円/当時)を上回る争奪戦』として全米に報じられました。しかし、松坂も巨額な落札金、高額年俸で契約しなければ、ここまで叩かれることはなかった。ダルの不幸は既に始まっており、全米が好奇の目線を向けています」(スポーツライター・飯山満氏)

 レ軍は2年連続でワールドシリーズ決勝戦に勝ち上がった強豪チームである。先発枠5人は埋まっているが、ライアン社長はダル加入について「嬉しい悩み」とコメントしていた。日本球界の至宝といえども、レギュラー争いは楽ではあるまい。移動も多く、なおかつダルは中4日での登板の経験はほとんどない。さらに、夏は気温が40度にも達するアーリントンがホームなだけに、体力的な心配は尽きない。
 また、本拠地レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントンはメジャー30球団で被本塁打率がワースト1位ということでも知られている。

 メジャーリーグ名鑑を編著しているスポーツジャーナリスト・友成那智氏がこう解説する。
 「比較的広い球場にもかかわらず、“ヒッター・パラダイス”なのは、夏場の高温に加え、空気が乾燥しているからです。大魔神・佐々木もこの球場を大の苦手にしていましたし、建山は9月に2試合連続で満塁本塁打を喰らっています」

 日ハム時代の先輩にも当たる建山義紀(36)は今季44イニングに登板して、被弾は「8」。本拠地球場のあるテキサス州のアーリントンが、いかに高温乾燥地帯なのかがわかる。
 「フライアウトピッチャー(フライでアウトをとる投手)は大変です。失投が即本塁打になる。ダルビッシュはシンカー、スライダーなどを操って、『ゴロアウト』も取れるので、なんとかやっていけると思いますが…」(友成氏)

 成功のカギは変化球と配球術にあるようだ。しかし、レ軍の正捕手はマイク・ナポリ。典型的な『打』の選手で、ボールキャッチ、配球、スローイングの実力は全て平均以下。日本式の配球も通用しないと言われている。建山も帰国直後の会見でダルに次のようにアドバイスしていた。
 「いろんなことを気にしすぎない方がいい。ある種、適当な感じの方がいい」
 建山によると、レ軍ナインからダルについて色々と質問されているそうだが、いくら元同僚でも今季の“事件”については知るまい。ダルは今季の開幕戦で、捕手(配球)に関する弱点を露呈している。