――バッファローマンのリベンジバスターやスクリュードライバーなど、一つ一つの技の重みがすごいことになっていました。個人的には、オモプラッタからのキン肉バスターとか、技への入り方が技術的にも進化している点が印象に残ってます。

「多分、キン肉マン自体は意識していないでしょうね。自分の本能で動いて、オモプラッタが出たんだと思いますよ。

ストーリーに関しては、最初は純粋にキン肉マンとビビンバの結婚披露パーティにテリーマンやロビンマスクら仲間たちが集まって、それを祝福するって話で考えてたんですよ。キン肉マンII世でもバトルは描いてますし、こっちでもバトルは、ちょっとキツイかなと思ったんです。でもよくよく考えてみたら、こいつら結婚パーティなんか来ないよなと思ってね。そこから、逆算して考えていくと、みんなから貰う一番のプレゼントって、みんなと戦っていくことだろうなって」

――例えば、当時前例の少なかった“II世”をはじめる際には、よぼよぼのキン肉マンを描くことで、「ただのリバイバル漫画にはしない」という先生方の覚悟がありました。古くからのファンや、現在進行形のジャンプ読者と、多様化する読者に対して、こうした続編やスピンアウト作品を描かれる時、そのバランスのとり方というのは?

「とにかく当時のキン肉マン読者に対して描こうと思いました。ただ、初めて読む読者にも分かるように、“ラーメンマンやウォーズマン”聞いたことがあるなって、オールスター大集合にする。小さい頃にお父さんから聞いたことがある子もいると思うんですよね」

――また、ジャンプに描くというのもまた特別な想いがあったと察しました。

「特別ですね。日本一売れている本で描くというのは、デビュー前からの夢でしたからね。また戻ってこれるとは思いませんでした。普段よりも売れたんですよね。僕もコンビニ行ったらなかったですから」

――22年振り。その間には、すでに「キン肉マンII世」が12年間続いてるわけですが、36巻⇒37巻が発売される間、ゆでたまごのお二人が最も進化したところ、変わったところというのはどんなところでしょうか?

「当時、読者が作品について思っていた気持ちが明確に分かるようになりましたね。当時も、送られてくるファンレターを読んだりして自分たちなりに判断していたつもりでしたけど。でも相手は子供ですから、なかなか意見をくみ取ることは難しい。

それが、時間が経ち読者が大人になって意見を聞くと、当時思っていた気持ちを理解できるようになった。まず開口一番言われるのが“ウォーズマンのあの扱いはないんじゃないか”とかね(笑)」

――アハハハハハ。

「そしたら、ウォーズマンをちょっと大事にしようとか、一人一人の超人への思い入れとかが分かってきました。バッファローマンにはこういう役回りがある、ロビンにはこういう役回りがあるという、すごく明確に見えてきましたよね」

――中井先生がご担当されている作画も研鑽がすごいといいますか、描写の迫力が年々際立っていくように感じられます。

「年とって画力が下がったって言われるのが嫌みたいで、ボディビルの本見たり、格闘技の映像繰り返し見たり、CGなんかも作って研究熱心ですよ」

――キン肉マンのコンセプトの一つに置いている“できそうで、できない技”というのも、今の技術のトレンドが、自然と超人たちの戦い方に溶け込むようになってきました。

「中井君も画力が上がっているので、昔だとタックル一つで“ワッ”とはならないんですよ。でも、今の絵だとタックル一つで“オオッ!”ってなる。しかも、これが片足タックルなのか、ダブルレッグなのか本当に細かいところまで描いていますから」

――例えば、嶋田先生が構想される描写や意図みたいなものというのは、中井先生にしっかり伝わるものなのでしょうか?

「伝わりますね。30年以上やっていることですけど、打ち合わせのときは、本当に技を掛け合ったり、DVD見たりしますからね。キン肉マンの場合は、あまり技術解説をしないで動きをリアルに見せる。

で、最終的には“できそうで、できない技”がドーンって出てくるわけですよね。技術解説をやりだすとね、読者全員が必ずプロレスファン、格闘技ファンというわけではないですし、キン肉マンだけのファンという方もいらっしゃいますからね」

――逆に、22年間変わらなかったところというわけですね。

「そうですね」

――そして、29日には人生初のサイン会も行われるとのことですね。中井先生との揃い踏みになるそうですが、ファンの中では、ゆでたまご先生のサインは二人揃って始めて完成と言われていますよね。その最大のチャンスですね(笑)。

「はい。31年漫画家やってて二人揃ってサイン会はやったことないので。僕たち自身も楽しみですね。漫画家って日頃読者の方と触れ合う機会がないので、“キン肉マンの日”には本当に感謝してますね。その日を、機会を与えてくれたっていうね。ここ2年で、読者の方との交流は多くなりましたからね。中井君が心配しているのは、沢山の方に“握手して下さい”っていわれたらどうしよう(笑)。後で右手が疲れてペンが持てなくなるんじゃないかって。なので、左手でいいじゃんって言いましたけどね」

――最後になりますが、常々スピンアウト作品は描きたいをおっしゃっている嶋田先生ですが、II世の本連載同様、こちらの方にも期待してよいでしょうか?

「やっぱり、万太郎は描いててしんどいですし、リフレッシュさせるという意味でもやりたいですよね。37巻の続きを描けるかもしれませんしね。ちなみに37巻の表紙もすごいんですよ。キン肉マンがマスクの紐を結ぼうとしているところですから」

(文=川頭広卓)

■元祖「キン肉マン」22年ぶりの最新刊=37巻、1月29日(金)発売!
定価:540円(税込)/新書判:本文256ページ

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キン肉マン著者、ゆでたまご嶋田隆司先生ロングインタビュー - 2006年05月12日
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