完全密閉型では世界最大級の野菜工場が、福井県美浜にある。運営するのは京都のベンチャー、株式会社フェアリーエンジェルだ。同社の活躍は政府の目にも留まり、これを機に野菜工場支援策として150億円の補正予算が組まれた。世界の食の未来を考える同社の使命感に迫る。

第1回 「世界の食料危機と日本の農業崩壊」

■世界の食料問題を解決したい

「このまま自然破壊が進んだら、一体この先、食料はどうなるんだって。そんな問題意識が起業の原点なんです」

フェアリーエンジェル社の創業社長江本氏は数年前まで、海外出張にたびたび出かけていた。宝石類の買い付けのためで、訪問先は発展途上国が多かったという。そこで見た風景、受けたショックが同社の創業につながった。

「そんな国々には、日本と比べればまだまだ自然は豊かに残っています。とはいえ、食料を作るために焼き畑農業なんかをがんがんやっている。恐ろしいほどの勢いで自然破壊が進んでいるわけです。ところが、そこまでやっても食料問題は解決せず、むしろ深刻化する一方でした」

原油暴騰、そしてリーマンショックから世界恐慌へとめまぐるしく危機が押し寄せたため忘れられがちになっているが、昨年、世界ではとても不気味な事態が起こっていた。アジアや中東、さらにはアフリカで勃発した食糧危機である。

「問題が初めに表面化したのは、確かフィリピンでの米騒動ではなかったでしょうか。エジプトでもパンの値上げをめぐって暴動が起こり死者が出たはずです。アフリカ諸国などでは、もっと前から食料不足が常態化しています。未来を担うはずの子どもたちが栄養失調でなくなっている姿を見て、これは何とかしなければならないと強く思った。この江本の危機意識が、我々の創業の直接のキッカケとなっています」


続きはこちら