今年7月には「日本ジュエリーベストドレッサー賞」特別賞を受賞した高市首相

写真拡大

 9月3日にNHK総合で放送された生活科学情報エンターテインメント番組「あしたが変わるトリセツショー」が波紋を呼んでいる。この日は「緊急対策!『大腸がん』切り札プレゼントSP」と題し、いつもより約30分延長して、がん検診の重要性を説いた。ただ、そこに高市早苗首相が唐突に登場したため、「何のために?」「政治宣伝か?」という声が広がったのだ。

 ***

【写真を見る】「激ヤセ」する前の高市首相 現在と比較すると「まるで別人」

 番組冒頭、大腸がんについてこんな説明が行われた。

 日本人が最も多く罹る“がん”は大腸がんだが、早期に発見できれば90%以上が治るという。そのために重要なのが検便であり、各国の政府もテレビCMなどで受診を勧めている。日本でも40歳以上を対象に国が推奨しているが、大きな問題があるという。

今年7月には「日本ジュエリーベストドレッサー賞」特別賞を受賞した高市首相

「全然、受けてくれないのだ!」とナレーターが強調する。

 欧州では60~70%が受診する検便だが、日本の受診率は46%。なかでも低いのが沖縄県の与那国島で25%前後なのだという。そこで番組は、与那国の人々にいかに受診してもらうかというプロジェクトを実施。その中心となったのが静岡社会健康医学大学院大学の溝田友里准教授だった。社会部記者は言う。

「溝田氏は島民を検便に導くお祭り形式の企画“トリセツ祭”を開催しました。番組も全面協力で、司会の石原さとみが島内放送でPRし、様々なイベントを仕掛けて島民を会場に誘いました。事前に検便キットを送付していたため、受診率は51%と飛躍的に向上。国が推奨しただけでは、ここまで受診率は上がりません」

 さらに溝田氏は、検診の必要性や検便の取り方などを解説した「大腸がん検診の案内」を作成。これを放送に合わせて全国に届けるというのが、この日の番組内容のサブタイトルにあった“切り札プレゼント”というものだった。

大物登場

「各自治体に協力を要請するため全国を飛び回る溝田氏の様子も放送されました。その直後に登場した大物こそが高市首相だったのです」

 溝田氏がプロジェクトへの協力を願い出ると、高市首相は笑みを浮かべてこう答えた。

「溝田先生のお取り組みっていうのは、未受診者へのアプローチとして素晴らしいと思っておりますんで、受診率をアップするために頑張ってまいりましょう」

 そして番組では、溝田氏の尽力により全国600の自治体が参加して300万人に「大腸がん検診の案内」が届けられることになったと伝え、参加した自治体名が表示された。

「びっくりしましたね。高市首相のコメントは時間にしてわずか15秒ほど。そのためにバラエティ番組のオファーを受けるとは……」

 その驚きは視聴者も同じだったようだ。

《トリセツショーに高市でてきてげんなり なにこれ、好感度アップ? 国会にはでないし、SNSでしか発言しないくせにスポットライトは浴びたいのね》

《NHKトリセツショー。大腸がん検診の大切さが伝わるいい内容だと思っていたら、検診キットを送る自治体を広げる取り組みの中に、なぜか高市首相が登場。具体性のない話の後、約600自治体が協力と。なんの根拠もなく、「高市首相のおかげ」という演出を見させられたようで強烈な違和感》

 従来からNHKは、時の政権との距離の近さが指摘されてきた。ましてや高市首相は、かつて歴代最長の総務大臣としてNHK改革に取り組み、現在は支持率が下降気味ときている。違和感満載の登場に批判が集まったのも当然だ。

 中には「全く政策の説明をしていない」という指摘もあったらしい。すると高市首相は自らSNSのXで弁解を始めた。

編集が悪い

《9月3日に放送されたNHKの番組に私が短い収録コメントで出演したことについて、私が全く政策の説明をしていないなどのご指摘がありますので、経緯を説明いたします。(中略)実際の収録では、官邸内の会議室で、溝田先生からの説明を受け、私からは次のとおり発言しました。/「私も、早期に検査を受けて、発見して、早期に対応するという『攻めの予防医療』というのを重視しております。/そんな中で、やっぱり命を守っていただく為に『がん検診を受けていただく方の数を増やす』それから、『再検査が必要ですよという時に、もう一度ちゃんと受診していただく方を増やす』という取組を地域などでやっていただくというのは、ものすごく大事なことだと思っています。/ですから、溝田先生のお取組というのは未受診者へのアプローチとしては素晴らしいと思っておりますので、ぜひとも受診率をアップするために頑張ってまいりましょう。」(以下略)》(9月5日)

 ただし“攻めの予防医療”とは言っても、番組は冒頭から「国のやり方は手緩い」と言わんばかりの内容だったから、あまり宣伝効果はなかったかもしれない。

「それに、もし高市首相の全面推しのプロジェクトなら、全国1788ある地方自治体の中で、参加したのが600だけでは少ないとも言えるでしょう。30分延長した特番ですから、高市首相のセリフはいくらでも入れることはできたはずです。そもそも与那国のイベントのシーンも、前後が行ったり来たりで決して上手い作りとも思えませんでした。そんな中、あえて高市首相のセリフをカットしたのは、番組として都合が悪かったからとしか言いようがありません。それならむしろ、高市首相のシーンを全面カットしたほうが違和感はなかったでしょうね」

 NHKの編集がいまいちだったということか。ならば司会の石原が官邸に行って首相と対談したら、いろいろな意味で見所はあったかも……。

デイリー新潮編集部