V12を直で! フェラーリ 12チリンドリ・スパイダーへ試乗 最上級フォールディング・トップ
現フェラーリ最上級フォールディング・トップ
現在のフェラーリには、ハイブリッドのSF90がある。12チリンドリは、先代の812 スーパーファストほど気張る必要がない。動的にはクーペへ劣るとしても、オープンとの相性が高いことは疑いようがない。
【画像】最上級フォールディング・トップ フェラーリ 12チリンドリ 競合クラスのGTたち 812も 全143枚
V型12気筒エンジンを積んだ12チリンドリ・スパイダーは、現在のフェラーリでは最上級にあるフォールディング・トップ・モデル。2025年秋に英国での販売が始まり、オプション抜きの価格は36万6500ポンド(約7146万円)だという。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
パフォーマンスでは、SF90が同社の頂点にある。そのぶん、12チリンドリはグランドツアラーの方向性を追求できる。それでも、信じられないほど剛腕で高速。充足度の高い運転体験を享受できる。
メカニズムは、クーペとほぼ変わらない。主な違いは、スパイダー化するため、ボディが強化されたことだろう。フェラーリによれば、812 GTS比で15%剛性が高いとしている。クーペとの違いは、明らかではない。
ピラーまわりを中心とするボディシェルの補強に加えて、サイドシルを肉厚化。ルーフの開閉機構と合わせて、車重はクーペから60kg増えている。乾燥重量で1620kgがうたわれる。
カンバス製のルーフなら、重量の増加は小さく留められた可能性が高い。しかし、スタイリング・チームを率いるアンドレア・ミリテッロ氏は、ソフトトップはローマのようにロマンティックな選択肢向きだと話す。
「より技術的なルーフで、スピードに適したシェルを作ります。ソフトトップでは、宇宙を目指せませんよね」
見惚れるほど美しい佇まい 上品で優雅な内装
佇まいは、クーペの方がより魅惑的だと筆者は思う。リアウインドウがなくなったことで、未来的な雰囲気は薄まった。とはいえ、スパイダーも見惚れるほど美しい。存在感も、実サイズ以上にある。
インテリアは、フォールディング・トップに関する部分以外、クーペと同じ。開閉用のボタンがあり、後方視界は狭められている。シートは、もちろん2脚だ。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
デザインは上品で優雅。内装の素材は、ラグジュアリーなものからカーボンファイバーまで、多彩に用意されている。ランボルギーニのような派手さはなくても、作り込みは極めて高い。
ベントレー・コンチネンタルGT スピードと同等の、堅牢性はないだろう。車重の差を考えれば、当然だが。
運転姿勢に変な癖はなし。空間にはゆとりがある。ステアリングコラムにシフトパドルが固定され、ステアリングホイール上にライトとワイパー、ウインカーのボタンが並ぶ。慣れるのに時間は必要だが、困るほどではない。
マネッティーノ・ドライブモードの選択も、ステアリングホイールから。タッチセンサーも備わる。段差を超える際のノーズリフト機能は、ダッシュボード上のタッチモニターで操作する。
このタッチモニターは、普段は目立たず、スマートフォンと連携可能。フェラーリは、そもそもカーナビを提供していない。スーパーカーを買えるユーザーは、最先端のスマートフォンを使い慣れていると判断した結果だが、賢明だと思う。
6.5L V12エンジンの咆哮をダイレクトに鑑賞
フォールディング・トップは、45km/hまでなら、走行中でも開閉可能。約14秒で、動作は完了する。オープン状態なら、世界屈指の6.5L V12自然吸気エンジンの咆哮をダイレクトに鑑賞できる。
ただし、本域の響きが放たれるのは、積極的なドライブモード時のみ。9000rpmを超えると、滑らかなクレッシェンドへ浸れる。ボディ剛性はクーペに劣るとしても、作られる12チリンドリの半分はスパイダーになるという、フェラーリの推測へ納得できる。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
アクセルレスポンスは、3速や4速になると、過激さが抑えられ扱いやすくなる。速度上昇もリニアだ。一般道の速度では、このギアを常用することになるが、音響と相まって運転体験が濃いものになる。
812 スーパーファストほどではないが、いうまでもなく圧倒的に速い。最高出力は830ps/9000rpm、最大トルクは69.0kg-m/7250rpmがうたわれる。ここまで回って、しっかり力を振り絞れるエンジンは限られる。
0-100km/h加速は3.0秒。最高速度は339km/hに達する。ブレーキペダルの感触も、バイワイヤ制御だが、踏みごたえがあり強力に効き好ましい。
8速デュアルクラッチのトランスミッションも素晴らしい。穏やかなドライブモードでは、滑らかにギアを切り替えてくれる。気張ったモードでの、レスポンスとチョイスはいうことなし。エンジンの回転数も、完璧に同調してみせる。
然な操縦性は維持 シャシー中央に座る感覚
えた車重と、上昇し後方へ移動した重心位置を考慮し、サスペンションはクーペと僅かにチューニングが異なる。それでも、クーペの自然な操縦性を可能な限り受け継ぐよう、技術者は尽力した。
現代のフェラーリは、往々にして乗り心地が良いが、これも例外ではない。12チリンドリには、荒れた路面用のダンパーモードがあり、ドライブモードを問わず乗り心地をなだめてくれる。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
フォールディング・トップを開くと、ボディの剛性感が僅かに弱まる。格納されたルーフがリア周りを補強する役目をし、開口部がしなる感じを伴う。
オープン状態での、風の巻き込みは最小限。リアウインドウは開け閉めできるが、デフォルトでは半分ほど閉まった状態になる。この高さが、一番首周りへ吹き込む風が小さい様子だった。
ステアリングレシオは、ロックトゥロックが2回転弱。適度に軽くクイックだが、神経質さはない。ホイールベースは812 スーパーファストより20mm短く、着座位置はリアアクスルへ接近しているものの、鼻先が遠くには感じられない。
ドライバーは、シャシー中央に座っている感覚。アクティブ後輪操舵システムと、フェラーリ独自の魔法のような技術力の賜物だ。
あらゆる面で先代以上 妥協へ見合う価値
カタログ値の燃費は6.3km/Lで、CO2の排出量は360g/km。そもそも、燃費や維持費を気にする人のクルマではないだろう。だが、フェラーリは長期保証の体制がしっかりしている。ブランド・リピーターが多い理由の1つではあるだろう。
クーペとほぼ遜色ないキャラクターを維持した、12チリンドリ。ボディの剛性感が僅かに劣ることは、乗り比べれば殆どのオーナーが気付けるのではないだろうか。それでも、V12エンジンのサウンドを全身で浴びれる。多少の妥協へ見合う価値はある。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)
インテリアもエンジンも、トランスミッションも世界最高レベル。乗り心地と操縦性との調和は秀抜。812 スーパーファストほど過激ではない12チリンドリは、あらゆる面で先代以上に優れている。近年のフェラーリの中で、筆者は特に気に入ってしまった。
◯:世界最高エンジンの1つを積む クーペへ迫る乗り心地と操縦性
△:車内の操作ボタンは、少し扱いにくい 驚くほど高価
フェラーリ 12チリンドリ・スパイダー(欧州仕様)のスペック
英国価格:36万6500ポンド(約7146万円)
全長:4733mm
全幅:1980mm
全高:1292mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃費:6.3km/L
CO2排出量:360g/km
乾燥重量:1620kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:830ps/9250rpm
最大トルク:69.0kg-m/7250rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
