【海外売上高7割】アイコムの「スマホにない機能で勝負!」 完全国内生産で高付加価値を実現
陸海空の業務用無線を展開 「完全国内生産というメイドインジャパンの品質で少量多品種の無線機を提供し、現場の生産性向上や無線通信が途絶したときの災害対応時におけるコミュニケーション手段の確保という点で世に貢献していきたい」─。このように強調するのは、独立系無線通信機器大手・アイコム社長の中岡洋詞氏。
ボタンを押せば即、そして一度に、複数人に情報を伝えられる無線機は現場で働くスタッフ同士が意思疎通を図ったり、物事の進捗を確認し合うために様々な現場で導入されている。航空会社や鉄道はもちろん、ホテル、レストラン、病院、学校など導入事例も多岐にわたる。
また、同社の主戦場は趣味向けのアマチュア無線ではなく、使用者の環境や用途に応じて様々な選択肢のある業務用無線だ。「陸・海・空の業務用無線を主力とし、無線機本体だけで、ひと月で約200モデルも生産しているのは当社だけだ」と中岡氏。
世界の無線機市場は約3兆円とも言われる。その中で日本は約3000億円。日本の産業界では人手不足を補うため、現場の生産性向上を実現させる無線機のニーズは増える。その中で同社の強みの1つが無線通信に欠かせない周波数帯「高周波」の電波を操る技術力だ。
電波は周波数によって性質が異なる。干渉やノイズ、発熱具合、アンテナとの相性などが異なり、伝わり方や届けられる情報量、距離が違ったりする。しかし、同社は企画、設計、製造まで全てを自社で完結。企画から生産・販売までの一気通貫体制を構築しているのだ。そのため、「顧客の声をすぐにフィードバックできる」(同)という。
同社が世界初の商品を数多く出しているのは、そのためだ。船舶用無線では世界初の完全防水の無線機を製品化したが、「海の中に沈んだら見つけられない」との顧客の声を受け、水面に浮く無線機を開発。しかし「浮いていても見つけにくい」という声が上がり、着水したときに光が点灯するようにした。
他にも、電話と無線機機能の双方を併せ持つ製品も開発している。テレワークの増加に合わせて会社に届いた外線電話に自宅で対応する用途や、不審者を見つけた場合に校内無線LAN環境を使って、教員が関係者に一斉に音声で情報共有するために利用されたりしている。
災害でも無線機は活躍している。2024年の元日に発生した能登半島地震では同社が無線機を現地に届け、災害対応で活躍した。「無線機は携帯電話と違って中継局を介さずに直接通話ができる。インフラにダメージがある大災害時に役立つ」(同)ことが再確認された。無線機の強みは同報性と即時性。インフラに頼らない点も大きい。
とかくアマチュア無線は価格競争に陥りやすいが、業務用無線では付加価値が高ければ価格競争に巻き込まれない。また、意思疎通はスマホで事足りるように思えるが、無線機はコミュニケーションに特化しているため、余計な機能はついていない。
1対N(不特定多数)に向けた情報発信などの機能が充実している上にスマホの多彩な機能を使って余計な動作をすることもない。「スマホから無線機に置き換えることで生産性が上がった事例もある」と中岡氏は語る。
完全国内生産を 貫く理由
そんな同社の売上高371億円(24年3月期)のうち海外は約7割を占める(営業利益は約34億円)。製造業では為替などの影響を最小限に留めようと、生産拠点の分散化を進めているが同社は違う。完全国内生産体制を敷いている。
中岡氏は「生産拠点を和歌山に置き、日本のスマートファクトリーのパイオニアを目指している」と強調した上で、「無人のロボットラインを整備して省力化を進めている」と話す。
