朝紅龍(左)を下し、1敗を守った阿武剋(撮影・佐藤厚)

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 「大相撲九州場所・8日目」(17日、福岡国際センター)

 平幕阿武剋が新入幕の朝紅龍を寄り切り、1敗を守った。入幕2場所目で堂々の首位タイでの中日折り返し。日体大で大関大の里と同級生だった新鋭が優勝争いを盛り上げる。琴桜と豊昇龍の両大関も1敗を堅守。平幕隆の勝を含めた4人がトップを並走する。2敗は大の里ら4人。

 冷静沈着なのは土俵上だけではない。中日まで7勝1敗の好成績。多くの報道陣に囲まれても、阿武剋は淡々と取材に答えた。トップ並走の質問も「まだまだ場所の途中。全然意識していない」とサラリと受け流した。

 モンゴル出身。中学時代には、数学オリンピックで地元・ウブス県の代表になった秀才でもある。日体大では大の里と同学年で、4年時に学生横綱に輝いた。この日は大学の先輩・朝紅龍を突き起こしてからつかまえて寄り切り。幕内での初対戦を「自分が2年生の時のキャプテン。稽古場とかも強くて、チームを引っ張ってくれた。先輩とやれてよかった」と流ちょうな日本語で喜んだ。

 昨年九州場所で、幕下15枚目格付け出しで初土俵を踏んだ。デビュー戦は「緊張して負けた」思い出がある。今場所中、師匠の阿武松親方(元幕内大道)に「あれから1年で、幕内で土俵をわかせる相撲をとっているのがすごい」と褒められ、「うれしかった」という。

 新入幕の秋場所は7勝8敗と負け越し。25カ所を回った秋巡業で連日稽古し、鍛錬を積んできた。「あと全部勝てるように頑張ります」。実りの秋にすべく、冷静にV戦線に食らいついていく。