16歳で電撃引退も…日本で3年ぶり競技、大人になった才女アリサ・リウが明かす復帰の経緯「スキーが楽しかったんです」
フィギュアNHK杯、アリサ・リウは3年ぶりに日本で競技
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦・NHK杯は10日まで、東京・代々木第一体育館で行われた。19歳となった今季、競技に復帰したアリサ・リウ(米国)が大会期間中に取材に応じ、16歳で一度引退した理由や大学生活などを語った。(取材:THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)
NHK杯では合計190.75点の4位だったリウ。「来季に向けてもう少し事前に、十分集中して取り組めるようになれれば、私が誇りに思えるような演技になるんじゃないかと思います」。10日のエキシビションでは「Let You Break My Heart Again」を演じた。パープルのドレス衣装でリンクに立ち、しっとりとした大人っぽいプログラムを感情込めて滑った。
リウは13歳だった19年に史上最年少で全米選手権優勝。その後も着実に実績を積み、2022年の北京五輪は7位入賞。同年3月の世界選手権も3位に入ったが、その直後に引退を発表した。今年3月に現役復帰を発表。今季は10月のブダペスト杯を制し、GPシリーズ第2戦のスケートカナダは6位だった。
今回は3年ぶりとなる日本での競技会出場で注目された。観客6185人が集まったSP。代々木のリンクでは温かい拍手を浴び、客席に視線を向けると多数のアメリカ国旗も揺らめいていた。
「緊張とワクワクの中間のような感覚で、落ち着いていたと思う。ここがまるで自分のホームリンクのような感じがしました。まるでずっとここで練習してきたような感覚があったので、圧倒されることはありませんでした。
外国に行くのは大変ですが、ここに来るととてもサポートされている気持ちになるし、とても嬉しかった。会場入りしてから、すぐに観客の皆さんが応援してくれていることに気が付いて、ポジティブなエネルギーを感じることができました」
16歳での電撃引退は、フィギュア界に驚きを与えた。「一度目のスケート人生で、自分がやりたいと思っていたゴールを全て達成しました」。理由の一つは達成感。さらに、大学進学のタイミングだったことも影響した。
「それまで練習で友人や家族とあまり時間を過ごすことができなかった。ならば大学生になる前に、人生を一番楽しみたい、やめるのにベストな時期だと思いました」
引退→復帰に至った意外なきっかけ「今年、スキーに行ったんです」
名門カリフォルニア大ロサンゼルス校に進学。心理学を学んでいる。「まだ専攻を決めきる必要はないのですが、2年目になろうとしているのでちょっと迷っています」。高校はホームスクールで、クラスメートがいなかった。大学では学生寮に入り、友達に囲まれながら過ごしている。「とても楽しいです。ただ、スケートをやると秋の学期が大変そう。これから冬、春の学期は学業も頑張りたいです」と笑った。
13歳の全米優勝で“天才少女”とも呼ばれた。大人になった19歳。リンクに戻ってくるきっかけは意外なものだった。
「今年、スキーに行ったんです。とてもスケートに似ているなと感じました。選手をやめてから一度もリンクに行っていなかったんですが、思いのほかスキーが楽しかったので、それならもう一度氷上に乗ってみようかなと思って。行ってみたら、凄く楽しかったんです!」
2週間置きにリンクに通い始めたら、いつの間にか今に至っているという。「全くプランしていたことではありませんでした」。本人も予想外の復帰。「実は学期とスケートを完全に両立したことがまだありません」と話すのは、GPシリーズ出場との兼ね合いで学期を休むことになったから。「冬と春は様子を見ながらやっていきたい」と効率のいい方法を探る。
「とにかくプログラムでやれるだけのことをやっていきたい。まだ私としては、学業とやりながらなので本格的な練習が続けられているわけではないですが、なるべく毎日、インテンスなトレーニングをするように心がけています。
30分の公式練習でも、トレーニングの一環だと思って。他の選手と比べると出遅れているので、今はトレーニングをやめてはいけないという気持ちです。ここで次の大会に向けて何ができるのか、良い学びがあれば」
フリーを終えた本人は充実感も漂わせながら「観客の皆さんからたくさんの愛を感じた。もっともっといい演技をしたい」と話した。日本のリンクで再び感じた温かみを胸に、前に進む。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)