呂比須氏 W杯初出場狙うインドネシアのサッカー事情語った! 国籍変更の“功罪”一体感を危惧
日本代表は11日、26年W杯北中米大会アジア最終予選インドネシア戦(15日、ジャカルタ)へ向けて現地合宿をスタートさせた。インドネシア1部PSSスレマンのテクニカルダイレクター(TD)を務める元日本代表FW呂比須ワグナー氏(55)が、スポニチ本紙の取材に対応。W杯出場を狙う同国のサッカー熱など現地の様子を明かした。
日本初のW杯出場となった98年フランス大会のメンバーだった呂比須氏は、今季からインドネシアで後進育成に努めている。スレマンTDとして下部組織の指導にあたり、高いサッカー熱を感じ取っている。
「皆がサッカーを愛していて、毎日、新聞で確認したり、仕事の合間もサッカーの話ばかりです。練習をオープンにしたら多くのファンが来ます。集中するためにクローズにするしかないのです」
15日の試合会場「ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム」は7万8000人収容。W杯アジア最終予選オーストラリア戦(9月10日)は7万人以上が観戦に訪れ、勝ち点1獲得を後押しした。日本戦でも同様の雰囲気になることが予想される。
国籍変更選手の多さも特徴的だ。1―1で引き分けた同最終予選サウジアラビア戦で代表デビューしたGKパエス(MLSダラス)は年代別オランダ代表に選ばれたこともあり、「PKを止めたりして、すでにスーパースター。シュートストップがうまい」と実力は折り紙付き。同じく出身がオランダのDFイツェス(ベネチア)ら14、15人の国籍変更選手を今回も招集した。だが「W杯出場の機運は高まっているけど、ファンは楽観視していないですね。国内選手も多く“その選手がもっとレベルアップしないと、W杯は届くところではない”と言っています」と話す。また、国籍を変更して日の丸を背負った呂比須氏はこうも付け加えた。
「W杯に行きたいというならばありな話だろうけど、選手たちの気持ちはどうなのだろうかとは思います」
インドネシアは多民族、多言語国家。同国にルーツを持つ人間は世界各地に多い。「僕は日本を愛していて、ずっと住みたかった。日本語もしゃべれたし、文化も理解した。だから日本人になりました」。母国を深く知らない選手たちが何を背負って戦うのか、苦しい時期に陥った時の一体感を危惧する。
「インドネシア代表には頑張ってほしい。サッカー熱だけではなく向上心があり、伸びしろも大きい。でも僕は日本人だから、日本を応援する。チャンスがあれば日本に戻りたい。カテゴリーを問わず日本で仕事がしたい」
試合当日は仕事でスタジアムには来られないが、テレビの前で両国の戦いを見守るつもりだ。
◇呂比須ワグナー(ろぺす・わぐなー) 1969年1月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ州出身の55歳。17歳でサンパウロFCとプロ契約。87年、JSL1部の日産自動車に移籍。日立やJFL本田技研などで活躍し、97年にJリーグの平塚(現湘南)へ移籍。同年9月に日本国籍を取得し、同月末のW杯フランス大会アジア最終予選・韓国戦で日本代表デビュー。同予選3試合連続得点などW杯初出場に貢献した。引退後はG大阪ヘッドコーチや新潟監督を歴任。国際Aマッチ通算20試合5得点。