帝京大可児の絶対エース加藤。選手権予選では計21ゴールをマークした。写真:安藤隆人

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 第103回全国高校サッカー選手権大会の岐阜県予選決勝、帝京大可児vs.中京の一戦。このゲームで4−2の勝利を収め、6年連続11回目の選手権出場を果たした帝京大可児には、驚異の得点感覚を持つエースストライカーがいる。

 FW加藤隆成は175センチと大柄ではないが、一瞬のスピードと多彩なシュートスキルを誇り、これまでインターハイと選手権の全国大会に5回出場し、合計9試合で9ゴールをマークしている。さらに岐阜県リーグでは昨年に40ゴールを叩き出し、今年の同リーグでも30ゴールを記録している。

「やっぱりどんな時も決めきる。相手がどこであろうと決めきる。それが僕の役割だと思っています」と強気の性格はまさにストライカー向き。この強気の中に冷静さも併せ持ち、一発で背後を取ったり、パスワークに関わりながら点が取れるスペースに入り込んだりするなど、相手のディフェンスラインとの細かい駆け引きを繰り返すことを得意とする彼は、今予選もゴールを量産した。

 初戦の多治見戦で10ゴール、3回戦の岐阜戦で7ゴール、準々決勝の岐阜聖徳学園戦で1ゴール、準決勝の大垣日大戦で2ゴールの加藤は、中京との決勝戦でも1−0で迎えた33分にMF青木嘉宏のスルーパスに反応し、左足を振り抜いて1ゴールをマーク。昨年の予選で自身が記録した21ゴールと同じ数を叩き出した。
 
 決勝ではゴールの他にも9分にMF明石望来の先制ヘッドをアシストし、71分にはダメ押しとなるMF五十嵐瑛人の4点目をアシストするなど、大車輪の活躍を見せた。しかし、試合後の表情は喜びよりも悔しさを滲ませていた。

「自分のところにたくさんチャンスが来ましたし、(10分に)PKを獲得したのに、それも止められてしまいました。その後に1点は取れましたが、あのPKやゴール後のチャンスをしっかりと決めていたら、早い段階で勝負を決められていた。そこは選手権に向けてきちんと向き合わないといけないと思います」

 この言葉には理由がある。今年のインターハイにおいて、1回戦の立正大淞南戦でハットトリックを達成した加藤は、続く2回戦の桐光学園戦でも1ゴールを決めた。しかし、彼が決めた時間帯は後半アディショナルタイム。0−1からの劇的な同点弾とはなったが、実はこのゴールまでに彼は6本ものシュートを放っていた。結果、チームはPK戦の末に敗退。この負けに加藤は大きな責任を感じた。

「僕が点を取る時間が遅ければ遅いほど、それだけチームは苦しむし、あれだけのシュートを打っていたら、その前に決めておかないといけない。チームは全国ベスト8以上という目標を持っているので、それを成し遂げるために決定率を上げていきたいです」

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 もちろん、それだけシュートを打てるということは、前への凄まじい推進力と積極性があり、それ自体が相手にとって大きな脅威となっていることは間違いない。だが、加藤はやはりゴールへの強いこだわりと、帝京大可児を中学時代から6年間も牽引し、中学から高校にかけてずっと10番を背負ってきたエースとしての強い自覚がある。

「帝京長岡の安野匠(ベガルタ仙台内定)など、同級生にプロに進むストライカーがいるなかで、僕は大学に進みます。高卒プロになれなかったのは、僕には足りないところがあるから。個人的には流れに乗ったなかで最後を決めきることができても、流れが悪い時に自分で流れを作り出して決めることが、まだ足りないと思っているので、残りの高校サッカーと大学でそこができる選手になりたいと思っています」
 
 野心家であり、努力家でもある加藤はまだまだ伸びる余地をたくさん持ち合わせている。まずはチームをプリンスリーグ東海に戻すことと、全国大会で通算二桁ゴールのみならず、大会得点王とチームとして初のベスト8以上の成績も視野に入れて、高校最後の2か月でチームの歴史に名を深く刻むべく準備を始めている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)