年々高くなる自動車の車両価格だが、それに合わせて維持費もじわじわと高くなっている。ガソリン代はもちろんのこと、保険料も少しずつではあるが値上げされている。そして気になるのが修理費用だ。車両価格が上がればパーツ代が上がるのは当然のことだが、実際のところはどうなのだろうか?

アフターコロナで増える交通量

アフターコロナで増える交通量(イメージ)/show999@Adobe Stock

損害保険の大手数社は、2025年1月から、自動車保険の任意保険料を値上げする模様だ。保険料の値上げ幅は3〜5%程度と見られる。最近は任意保険料の値上げが続いており、ガソリン価格の高騰、所得の伸び悩みも考慮すると、ドライバーとしては辛いところだ。

任意保険料が値上げされる背景には、複数の理由がある。まずは交通事故件数の増加だ。新型コロナウイルスが終息に向かうと、クルマで外出するユーザーが増えて、交通事故の件数も増えた。そうなれば任意保険の保険金支出も増大して、任意保険料を押し上げる。

車両価格と同様に高くなった補修用部品

車両価格と同様に高くなった補修用部品(イメージ)/itthiphon@Adobe Stock

2つ目の理由は、クルマの修理費用が以前よりも高くなったこと。車両価格と同様に、修理に使われる補修用部品も値上げされている。販売会社の人件費も上昇しており、同じ修理を行っても、以前に比べると修理費用が高くなった。

さらに保険会社の担当者は「LEDヘッドランプを始めとする上級装備、上質な塗装なども、修理費用を高める要因になる」と述べた。最近のクルマでは、内外装のデザインが上級化して、塗装も深みのある光沢を発揮するタイプなど多岐にわたる。これらは車両価格も高く、修理費用も上乗せされる。

高額な先進安全装備用パーツ

LEDヘッドランプを始めとする上級装備も高額に(イメージ)/Dmitriy@Adobe Stock

皮肉と受け取られるのは、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備だ。装着車が増えれば追突する危険が減って修理費用の上昇も抑えられるが、実際にはすべての衝突事故を防げるわけではない。

安全装備の装着車では、ボディの先端や後端にセンサーを内蔵した車種も多いため、交通事故を防げずに衝突すると修理費用を高めてしまう。それが任意保険料の値上げにも結び付いている。

修理費用や任意保険料が高まると、ユーザーの負担が増えてクルマの売れ行きにも悪影響を与える。昨今はクルマの価格も高まり、同じ車種と同等のグレードで比べた場合、15年ほど前の1.2〜1.4倍に達する。その一方で、平均所得は約30年前に比べて増えていない。修理費用まで視野に入れて、クルマの装備や塗装を見直す必要がある。

文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/Adobe Stock(アイキャッチ画像:Kwangmoozaa@Adobe Stock)