寄付額は「15億円」に倍増 総選挙の当日にひっそり「24時間テレビ」が募金使途を報告で“禊”は済んだのか
10月27日、衆院選の投開票日の夕方(16:00〜16:55)、「24時間テレビ47 もう1つの物語 上田・羽鳥・水卜・やす子・一茂が動く」(日本テレビ)という特別番組が放送されたのをご存知だろうか。投票所に行っていて気づかなかったという方もいるだろう。
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特別番組の趣旨は、今年8月31日〜9月1日に放送された「24時間テレビ47 愛は地球を救うのか?」で集められた寄付金がどの様な形で届けられ、何に使われるのかというものだった。
併せて、今年の「24時間テレビ」の寄付金総額が15億1095万1707円(9月30日時点)になったことが発表された。このうち、お笑い芸人のやす子がランナーを務めた“全国の児童養護施設に募金マラソン”の募金額は、「24時間テレビ」終了時の4億3801万4800円から5億493万6310円に達したという。民放プロデューサーは言う。
「まず、総額で15億円を突破したということにビックリしました。歴代4位となる募金額で、最終確定は来年6月の予定だそうですが、昨年が8億2100万8847円でしたから現時点ですでに2倍近くになっています。もっとも、視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)は昨年の11・3%から今年は12・5%と多少上がったものの、決して良い数字とは言えませんでした。それでも募金額が倍増したのは、キャッシュレス決済での募金が浸透し、前年比で8倍になったことが大きかったと思います。とりわけ、5億円以上がやす子のチャリティーマラソンへの目的別募金だったわけですから、まさにやす子様様。日テレとしては来年以降も目的別募金を継続するでしょうね」
人気出演者と見応えある企画
特番「もう1つの物語」には、「24時間テレビ」で総合司会を務めた羽鳥慎一アナ、水卜麻美アナ、上田晋也、チャリティランナーのやす子、さらに、能登半島地震の復興企画に参加した長嶋一茂も登場し、集められた募金の使い途が明かされた。
「マラソンの募金で全国606の児童養護施設に図書券10万円分、お食事券10万円分が贈呈されるそうです。やす子と羽鳥アナが養護施設を訪ねて子供たちに欲しいものを尋ねるなど、VTRは短く編集されていましたが良くまとまっていたと思います。また、『24時間テレビ』で能登半島地震の被災地を訪ねた水卜アナが、放送後に豪雨被害に遭った地域を再訪して現地の声を聞くといった企画も悪くありませんでした」
今年のパリ五輪で日テレのスペシャルサポーターを務めた上田は、「上田と女子パラリンピアンが吠える夜」と題して車いすバスケ女子日本代表をスタジオに招き、「24時間テレビ」の募金で寄付されたバスケ用車いすが役に立っていたことなどを明かした。
「夕方の放送なんだから『吠える夕方』じゃないかと思いましたけど、見応えのある企画で、出演者も人気どころが揃っていたので、特別番組としてよくできていました」
むしろ、総選挙の日を外して夜のゴールデンタイムに堂々と放送したほうが良かったのでは?
ゴールデンで放送しない事情
「日曜夕方の放送になったのは枠が取りやすいこともあったのでしょう。実際、視聴率は5・6%と、この時間帯ではまずまずの数字でしたが、ゴールデンで放送すればもっと取れたでしょうね。ただし、内容としては“手前味噌”で、“募金の使われ方”より“24時間テレビの続編”という色を強く出したのは視聴者からの批判を恐れたからかもしれません」
今年の「24時間テレビ」は、ジャニー喜多川氏による性加害問題でジャニーズ事務所(現・スタートエンターテイメント)のタレントをメインパーソナリティーに起用できなくなったり、放送当日、台風10号の影響で企画したイベントが中止されたりするなど逆風続きだった。なかでも、昨年11月に発覚した系列地方局の社員による寄付金の着服は、チャリティー番組の根幹を揺るがすものとなった。番組スタート時から使われてきた「愛は地球を救う」というテーマに疑問符をつけ、「愛は地球を救うのか?」に変更して放送したほどだ。
「募金の着服が発覚すると水卜アナが日テレを代表して謝罪し、今年の『24時間テレビ』の終盤には『寄付金をどのような形で必要な方々に届けていくか、責任を持って皆様にお伝えしたいと思います』とまで説明していました。ところが、今回の特番は告知もほとんどなく、視聴者に見てほしい、届けたいという思いが伝わってきませんでした。もっと積極的に宣伝してもよかったはずです。それをしなかったのは、昨年をはるかに超える莫大な募金が集まったことで禊は済んだと考えたのか、それとも、ゴールデンで発表するとかえってクレームがくると思ったのか……」
特番の最後は土屋太鳳の「『24時間テレビ』はこれからも支援が届くチャリティーを目指し動き続けます」というナレーションで締めくくられた。
「15億円もお金を集める番組なのですから、募金の使い途、使われ方を多くの視聴者に伝えるべく、今後は特番『もう1つの物語』も堂々と放送し続けてもらいたいですね」
デイリー新潮編集部