写真/産経新聞社

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 名門同士による夢の対決となった今年のワールドシリーズは、ロサンゼルスでの2試合を終え、ドジャースが2連勝。1日空けた第3戦からの3試合は、舞台をヤンキースの本拠地ニューヨークで行われる。果たしてドジャースがこのまま逃げ切るのか、それともヤンキースの逆襲はあるのか。
◆両チームの明暗を分けた“継投策”

 ここまでの2試合を簡単に振り返っておくと、カギとなったのは継投策だろう。第1戦は、ヤンキースの先発ゲリット・コールが7回途中まで1失点の好投を披露するも、88球で降板。その後、ドジャースに追いつかれると、延長10回裏にフレディ・フリーマンに逆転サヨナラ満塁弾を浴び黒星スタートとなった。

 コールがわずか88球でマウンドを降りたことに対して、元ヤンキースのレジェンド、デレク・ジーター氏が「なぜそうしたかわからない。この試合だけじゃなくて、第2戦、第3戦以降にも響いてくる起用だ」と異を唱えるなど、ヤンキースのアーロン・ブーン監督には批判の声が上がった。

 一方で、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督も第2戦で難しい継投を強いられた。先発した山本由伸が7回途中まで1安打1失点の快投を見せたが、左打者が続くところで左腕アンソニー・バンダにバトンタッチ。その後、9回表に守護神のブレーク・トライネンがヤンキースの猛攻に遭ったものの、最後はアレックス・ベシアがピンチを凌いで何とか逃げ切った。

 仮にドジャースがヤンキースに逆転負けを喫する事態になっていれば、山本の86球降板も批判の対象となっていたかもしれない。まさに「勝てば官軍、負ければ賊軍」を表した2試合だったといえるだろう。

◆大谷翔平、第3戦以降の出場は?

 ドジャースがホームで2連勝を飾り、残り5試合で2勝すればいい圧倒的優位な立場でニューヨークに乗り込むが、やはり気掛かりなのは主砲・大谷翔平の状態だ。

 ご存じの通り、大谷は第2戦の7回裏、四球で出塁後に二盗を敢行し、スライディングした際に左肩を負傷。苦悶の表情を浮かべ、ベンチ裏に退いた。

 試合後には、関節が部分的に外れる亜脱臼だったことが判明。第3戦以降の出場が危ぶまれていたが……。

 移動日の27日(日本時間28日)に会見を行ったロバーツ監督は、「(大谷の)けさの状態は良かった。(左肩の)可動域もいい。大谷はこれから30分後に球場に来て、練習に参加する」と話すなど、大谷の第3戦出場に前向きな姿勢を見せた。

 現地メディアも大谷の強行出場の可能性を報じると、ファンが次々と反応。SNSなどでは「良かった。史上最高の選手が最高の舞台でプレーできる」「いいニュースだ。これで来週の野球も楽しみになった」「大谷が無事でよかった。ヤンキースにとっては悪いニュースだな」など、手放しで喜ぶ現地ファンの意見が目立った。

◆日本のファンは心配の声が多数

 一方で日本のファンは、大谷の状態に安堵する意見とともに、第3戦出場の可能性に対しては心配の声が大半を占めた。

「嬉しい半面、無理はしてほしくない」「試合には出てほしいが、不安要素が少しでもあるのなら、試合出場はやめてほしい」「短期的な判断をせずに長期的に活躍するための判断をしてほしい」といったところだ。

 もちろん大谷のプレーは見たいが、来季以降に悪い影響が出るようなら無理はしないでほしい、というのが多くの日本ファンの共通した意見だろう。

◆「大谷なら右手一本でも…」といった声も

 ただ、なかには「確かにDHだし右手一本でも……」と、大谷のパワーをもってすれば、負傷した左肩をかばいながら右手だけでも活躍できる、という意見もあった。

 もちろん、大谷の出場可否は慎重に判断されることになるだろうが、ドジャースは2勝0敗とリードしており、2試合で合計10得点を挙げた打線の状態も悪くない。強いて言えば、大谷自身はワールドシリーズで8打数1安打とやや精彩を欠いていた。シーズンを通してチームをけん引してきた存在とはいえ、決して長期的なリスクを冒すチーム状況ではないはずだ。

 それでも大谷の性格なら、GOが出れば多少の無理をしてでも強行出場を訴えるだろう。指定席の1番DHか、代打での出場か、それとも……。ロバーツ監督、そして大谷の決断に注目が集まる。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。