『YUMA UCHIDA LIVE “VS YUMA 001- 内田真礼”』(撮影=ウチダアキヤ)

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 内田雄馬が9月28日、29日に『YUMA UCHIDA LIVE "VS YUMA 001 - 内田真礼"』を神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催した。『VS YUMA』は、内田がゲストアーティストを招いて対バン形式のステージを披露する企画ライブ。その第1弾アーティストに選ばれたのは、内田の実姉にして同じく声優/アーティストとして活躍する内田真礼だ。互いにトップ声優でありながら仲良し姉弟としても知られるふたりの貴重な共演を見届けようと、会場には多数の熱心なファンが詰めかけた。本稿では、9月29日に行われた2日目公演の模様をレポートする。

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 開演を待ちわびる場内には、独特のリラックスムードが充満していた。対バン形式のツーマンライブという彼にとっては初の試みでありながら、その相手が気心の知れた姉ということで、ファンの心にも絶大な安心感をもたらしていたのだろう。薄暗いステージ上には2バンド分の機材がセッティングされており、セットチェンジの時間を設けることなく雄馬バンドと真礼バンドがスムーズに入れ替われるのだということがわかる。さらに舞台には階段とキャットウォークも設けられ、段差を利用したダイナミックなパフォーマンスを期待させる作りとなっていた。

 定刻を迎え、まず雄馬バンドが所定の位置につくと、おもむろにワイルドなドラムビートが打ち鳴らされ始めた。すると舞台上段下手から紺のカジュアルジャケットと赤いパンツを着用した雄馬が、上手からピンクのミニスカートドレスに身を包んだ真礼がゆっくりと歩いて姿を現す。そして舞台中央のスクリーン前で向かい合ったふたりが〈VERSUS/鳴らせ始まりのゴング〉と歌い出し、『VS YUMA』のテーマソング「Chemi-story」でライブの幕が切って落とされた。

 フロアは瞬く間に青とピンクのペンライト光で埋め尽くされ、徐々に熱気を帯びていく。内田姉弟は息の合った掛け合いやユニゾン、ハーモニーを次々に畳みかけ、時折はにかんだような笑顔も浮かべながらパワフルかつ伸びやかな歌声でオーディエンスを圧倒。のっけからフルスロットルでキレキレの演奏を叩きつけるバンドの勢いも手伝って、みるみるうちに広大なホールの空気を制圧していった。そんなオープニングナンバーに続いて、雄馬がダンサブルなEDMナンバー「DangeR」を、真礼がデジタルロックチューン「ロマンティックダンサー」をそれぞれ披露。冒頭3曲で「今日はこういうライブですよ!」という趣旨説明を余すところなく完遂し、ここであらためてオープニングムービーがスクリーンいっぱいに映された。

 ここまでは、いわばアニメでいうアバンタイトルに相当するパートだ。そこから、ふたりそれぞれがソロステージを順に展開する対バン形式のライブが届けられる。初日の先攻はホストの雄馬が務めたが、この日はゲストの真礼が先攻。真礼のステージは「youthful beautiful」で華々しくスタート。その後も代表曲「創傷イノセンス」はもちろん、観客とウェーブを楽しんだ「Smiling Spiral」や、撮影OKの“内田雄馬化コーナー”ならぬ“内田真礼化コーナー”と称して披露された「モラトリアムダンスフロア」、さらには弟・雄馬のカバー「Congrats!!」など、さまざまな趣向を凝らした選曲でオーディエンスを大いに魅了した。

 途中のMCでは、雄馬のファンネームが「内田雄馬」であるという特殊な事情に触れて「みんなが内田雄馬ってことは、私がみんなの姉さんってこと?」との大胆な仮説を提唱して喝采を浴び、「4000人以上の弟?妹?ができたみたい(笑)」と顔をほころばせるひと幕も。卓越した歌唱パフォーマンスと軽妙なトークのコントラストで底抜けにハッピーな空気感を作り出した彼女は、「LIFE LIVE ALIVE」で自身のステージをフィニッシュ。弟へとバトンを渡した。

 バンドメンバーが入れ替わって攻守交代となり、雄馬のターンは「Horizon」で口火が切られる。その後も“内田雄馬印”と言っていい、疾走するポップロックとエッジィなダンスナンバーの二本柱を中心に清涼感あふれるクリーミーなマイルドボイスを伸びやかに響かせてフロアを熱狂させていく。ダンサーチームを従えてのシャープなダンスパフォーマンスや「Hope」などでの側転、「Over」でのマイクスタンド蹴り、さらに「スタートライン」における反復横跳びやニーアップなども惜しみなく披露。「初めての対バンライブを開催するにあたって、姉さん相手ですからどういうライブにしたらいいのかなと思ってたんですけど……僕はとりあえず右往左往することかなと」という本公演への心構えを余すところなく体現してみせたのだ。

 中盤では姉の代表曲「創傷イノセンス」のカバーも飛び出し、場内にはこの日最大とも言える驚喜の絶叫が轟いた。そして撮影OKコーナーで「ものたんない」を披露して会場を一体にしたのち、告知のMCを行い、対バン企画第2弾『VS YUMA 002』の開催が発表される。公開された映像からその相手が岡崎体育であることが明かされると、会場は大きなどよめきと万雷の拍手に包まれた。岡崎との面識はまだないという雄馬だが、「どんなライブになるんだろう。本当に楽しみです!」と声を弾ませる。その発表の興奮も冷めやらぬままに雄馬パートはラストスパートへ突入し、「SHAKE!SHAKE!SHAKE!」「Congrats!!」でさわやかに締めくくられた。

 盛大な「ウチダ! ウチダ!」コールに導かれ、内田姉弟と雄馬バンドが再びステージへ。まず披露されたのは、10月にCDリリースを控える内田真礼×内田雄馬名義のコラボシングル『Carnival/BIG LOVE』より「Carnival」。ラテンビートをベースにした文字通りお祭りムード満点の楽曲でフロアを踊り狂わせたのち、この日最初のふたりでのMCタイムへと突入した。

 「こうして姉弟2人でライブをする日が来るとは思ってもみませんでした」と感慨深げに語る雄馬に対し、真礼は互いの音楽性について「方向性の違いも見えたし、重なるところもあれば全然違うところもあって。でも、姉弟だからこそそれもいいなって……仲いいからか(笑)」と分析。さらに前日の初日公演に祖母らが来ていたというエピソードなど、実の家族ならではのハートウォーミングなトークが繰り広げられた。

 そんななか、雄馬がおもむろに「もう1曲あるんでね、やりたいと思います」と切り出し、真礼バンドおよび両者のダンサーチームが呼び込まれる。すなわちツインドラム、ツインベース、ツインギター、ツインキーボード+パーカッションというあまりお目にかかれないバンド編成が実現し、ダンサー陣も総勢8名という大所帯に。ふたりは「親戚の集まりみたいでしょ?(笑)」「多いなあ……」といった軽口も挟みつつ、雄馬の「ここで1曲やる前に、なんとスーパースペシャルゲストが来ています!」との言葉に客席がにわかに色めき立つ。すると『Carnival/BIG LOVE』のもうひとつの収録曲「BIG LOVE」の作曲を手がけたオーイシマサヨシ(作曲クレジットは「大石昌良」)がサプライズゲストとして呼び込まれ、ホールを揺るがすほどの大歓声がこれを迎えた。

 そしてオーイシが「僕はね、内田家が大好きなんです。大好きな気持ちがあふれて曲を作ってしまいました」と語るソウルテイストのパーティチューン「BIG LOVE」が華々しく演奏され、内田姉弟による盤石のツインボーカルにオーイシのハイトーンコーラスが加わったゴージャスなパフォーマンスでオーディエンスを魅了。タイトル通り大きな愛が会場全体の空気を支配していった。歌い終えた彼らは清々しい表情で「またこうしてライブしてもいいかもしれないですね」「そうだね。曲も作りましたし、これ1回きりというのももったいないから」と再共演を示唆してフロアを沸かせたのち、仲むつまじくステージをあとにした。

(文=ナカニシキュウ)