強力な代理人が就いた

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「良い代理人をみつけたね」

 NPB選手がメジャーリーグに挑戦する際に必要なものとは何だろうか。所属球団の理解とファンの応援もあるが、何より重視すべきは、自身に適した代理人の選択だと言える。

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 パ・リーグのクライマックスシリーズ・ファーストステージが終わり、千葉ロッテマリーンズの公式日程は全て終了した。それと同時に浮上してきたのが、第1戦で8回無失点の好投を見せた佐々木朗希(22)の去就問題だ。

 焦点は「今オフ、球団がポスティングシステムによるメジャー挑戦を認めるか否か」だ。CSファーストステージ第3戦終了後、松本尚樹球団本部長が取材陣に囲まれた。シーズン中は去就に関する話し合いは一切していないとし、「これから一つ一つ話をしながら」と繰り返していた。この言葉通りだとすれば、佐々木の進路はまだ何も決まっていないということになる。

強力な代理人が就いた

「25歳以下での渡米はルールにより、マイナー契約しか結べません。ロッテ球団も移籍譲渡金をアテにできません。でも、これ以上彼を引き止めると感情的な衝突にもなりかねないので、球団は不本意でも認めるのではないか、との見方が強まっています」(スポーツ紙記者)

 一方、米球界では“意外な日本人選手”の名前も浮上してきたという。35歳での再挑戦が囁かれる巨人・菅野智之(35)だけではない。東京ヤクルトの主砲・村上宗隆(24)だ。

「良い代理人を見つけたね」

 これは村上のメジャーリーグ挑戦について触れる際、米メディアの関係者が語っていたものだ。

 村上の代理人は、ケーシー・クロース氏(61)に内定した。米国でも有名な大手マネジメント会社「エクセル・スポーツ・マネジメント」の看板交渉人で、米球界に挑戦した日本人選手では元巨人の木田優夫(56=現日本ハムGM代行)、現楽天の田中将大(35)、同広島の秋山翔吾(36)を担当してきた。

 同社のクライアントには、22年MVPのカージナルス、ポール・ゴールドシュミット(37)や、カブスのチームリーダーでもあるダンズビー・スワンソン(30)、ブルージェイズのリードオフマン、ジョージ・スプリンガー(35)などの一流メジャーリーガーがいる。ゴルフのタイガー・ウッズ(48)も同社のクライアントで、NBAやNFLのスター選手も複数在籍している。

選手の練習にも付き合う

「クロース氏は、全米大学野球選手権で優勝を経験し、元ヤンキースのマイナー選手でもあります。『交渉で負けたことがない』とも言われており、IMG、クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー などの大手エージェント会社を渡りあるき、11年から現在のエクセル社で活躍しています。大手エージェント会社に在籍していても、代理人の年収は完全な出来高払いで、クロース氏はすでに6500万ドル(約96億円)以上を稼いでいる敏腕です」(米国人ライター)

 そのクロース氏を代理人として有名にしたのは、IMG社時代の93年にヤンキースのデレク・ジーター(50)の代理人グループのリーダーを務めたのがきっかけだった。

 まさにスゴ腕代理人がつくことになったわけだが、今季の村上は本塁打と打点の二冠を獲得したものの、シーズン180個で「三振王」にもなっている。リーグ2位が細川成也の159個で、パ・リーグ1位が山川穂高の158個であることを考えると、ダントツに多いことが分かる。三冠王に輝いた22年の三振数は「128」、昨季は168個だったから、「年々酷くなってきた」とも解釈できる。

「配球のヤマが外れたからか、外角球に振り遅れて空振り三振となるシーンも目立ちます。三冠王となった22年当時は、メジャースカウトも注目していましたが、23年のWBCでの成績は今一つでした。ここ2年間は、村上の名前を聞くことも少なくなりました」(NPB関係者)

 このままメジャーリーグに挑戦しても“厳しい局面”が続きそうだ。クロース氏は野球、ゴルフ、バスケットボール、アイスホッケーのスター選手をマネジメントしてきた一流の交渉人。日本の「元三冠王」とはいえ、今の成績では不釣合いな感がしないでもない――しかし、取材を進めてみると、クロース氏がサポートしてきたのは最初からスターであった選手ばかりではなかったことがわかった。

「ジーターがヤンキースでレギュラーを掴んだのは96年です。92年のMLBドラフトで指名されてから2年くらいは、マイナーリーグでもバッティングや守備に苦しんでいました。その苦しい時代からジーターを支えていたのが、クロース氏です。クロース氏はジーターの守備練習にも協力してきました」(現地記者)

 村上がメジャーリーグで三振を量産したとしても、それを克服するための的確な助言だけではなく、練習パートナーも買って出てくれそうだという。前出の米国人ライターによれば、クロース氏に代理人を依頼するプロスポーツ選手は後を絶たないそうだが、全てを引き受けるわけではない。その選手の考え方、競技や練習に取り組む姿勢などを調べ、人柄も理解したうえで引き受けるかどうかを判断しているそうだ。

 その意味では、村上は一流代理人のお眼鏡に適った数少ない選手とも言える。村上は練習態度もマジメで、バットを振る回数もチームで1、2を争う努力家だ。ビハインドの試合中もベンチから身を乗り出して仲間を鼓舞するなど、そのキャプテンシーは多くの関係者が認めていた。

「村上が親身になってくれる代理人を見つけたのは大きい。日本人の場合、専属通訳やトレーナーもつける必要があるし、州ごとに納める税金もあるのでグラウンド外のこともお願いしなければなりません」(前出・米国人ライター)

準備は万全

 そもそも、メジャーリーガーの代理人は25人のロースター枠に入っている選手2人と契約すれば、弁護士などの資格を持っていなくてもメジャーリーグ機構に認めてはもらえる。とはいえ、選手側からすれば、交渉の実績のない者に自分のキャリアを預けることはできない。だが、米ドラフト会議で上位指名される大学生、高校生にはすでに代理人が付いている。マネジメント会社のスタッフがスカウトも顔負けの情報網とフットワークで全米を駆け巡り、在学中に契約を結んでいるそうだ。

「中南米で開催されるウィンターリーグにはメジャーリーグとの契約を勝ち取ろうとする無名選手も集まってきます。それと同様に、有名マネジメント会社やこれから大きくなろうとするエージェント会社のスタッフも現地入りし、若い未契約選手を探してスカウティングをしています。また、クロース氏のように元選手で大手マネジメント会社に再就職した人は少なくありません」(同)

 その意味では、クロース氏もジーターとともに階段を上っていった成功者なのだろう。私生活では公立の難関校・ミシガン大学の卒業で、夫人は「ミス・ミネソタ」にも選ばれたジャーナリストのグレッチェン・カールソンさんだ。

「21年オフ、フレディ・フリーマン(35)がブレーブスからドジャースに移籍した直後、FOXスポーツラジオの司会者が『クロース氏はフリーマンにブレーブスからの最終オファーを伝えなかった』とツイートしました。クロース氏とフリーマンは言った、言わないの大喧嘩となり、関係も終了となりました。後日、司会者が『私の誤報でした』と双方に謝罪しましたが、クロース氏の怒りは収まらず、訴訟に発展しかけたんです。エクセル・スポーツ・マネジメントのスタッフが宥め、大ごとにはなりませんでしたが」(現地記者)

 22年オフに3年契約をヤクルトと結んだ村上が“フリー”となるのは25年オフ。具体的に動き出すのは少し先になるが、代理人の準備まで終わったということはヤクルト球団も応援しているからにほかならない。メジャーリーグ挑戦の準備では佐々木朗希のほうが遅れているようだ。

デイリー新潮編集部