ECB、0.25%連続利下げ 物価抑制から成長保護に軸足シフト

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Francesco Canepa Balazs Koranyi

[17日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は17日、ユーロ圏でインフレが一段と抑制される一方、景気見通しは悪化しているとの認識を示し、中銀預金金利を0.25%ポイント引き下げ3.25%とした。

利下げは今年3回目。ロイターによるエコノミスト調査でも利下げが予想されていた。9月も同じ幅で金利を引き下げており、2会合連続での利下げは13年ぶり。ユーロ圏の経済成長が2年連続で米国を大きく下回る中、連続利下げが決定されたことは、ECBの焦点がインフレ抑制から経済成長の保護にシフトしたことを示している。

ECBは次の動きについて新たな手がかりは示さず、今後のデータに基づいて「会合ごとに」決定を下すと改めて表明。「必要な限り十分に制約的な政策金利を維持する」とした。

声明では「インフレに関する新たな情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進んでいることを示している。インフレ見通しは最近の経済指標の予想外の下振れにも影響されている」と指摘。

また「賃金が依然高いペースで上昇するなか国内インフレ率は依然高い。同時に労働コスト圧力は徐々に緩和を続けるとみられ、利益がインフレへの影響を部分的に緩和する」との見方を示した。    

ラガルドECB総裁も理事会後の記者会見で「われわれはディスインフレーションのプロセスが順調に進んでいると見なしている。過去5週間に入手された全ての情報が同じ方向、つまり、下方を向いていた」と述べた。

ユーロ圏では企業活動や景況感調査のほか、9月のインフレ指標などがいずれも予想をやや下回っており、こうしたデータ受け、ECB内の見解が利下げ支持に傾いた可能性が高い。

ラガルド総裁は、11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利した場合に欧州製品に対する高関税が導入される可能性について、いかなる貿易障壁も欧州にとって「下振れ要因」になると指摘。「欧州のような開放された経済にとって、いかなる制約、不確実性、貿易障壁も影響する」と述べた。

また、ECBは中東紛争に関連する原油価格の動きも緊密に注視していると言及。ユーロ圏経済については「リセッション(景気後退)に向かっていない。ソフトランディング(軟着陸)をなお予想している」と述べた。

ラガルド総裁は今後の政策決定について具体的なことは示さず、入手されるデータに基づき会合ごとに決定を行っていくとの従来の姿勢を改めて表明。ただ、ラガルド氏がデータが予想を下回ったことや、インフレ率が来年には目標とする2%で安定化するとの見通しをなどを強調したことを受け、ECBは利下げを継続するとの見方が強まっている。

EFGアセットマネジメントのシニアエコノミスト、ジャンルイジ・マンドルザート氏は「インフレ圧力が緩和する中、成長に対する下振れリスクが出ていることは、(次回理事会が開かれる)12月に加え、2025年に入ってからも利下げが続くことを示している」と指摘。景気を刺激も冷やしもしない中立金利について、ECBは2%近辺にあると見なしているとし、政策金利がこの水準に達するまで利下げは続くとの見方を示した。