『オクラ~迷宮入り事件捜査~』©︎フジテレビ

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 『オクラ~迷宮入り事件捜査~』(フジテレビ系)第2話が10月15日に放送された。 第1話ラストの衝撃展開が世間を騒然とさせた余韻もさめやらぬうちに、続く第2話ではさらなる劇薬が投下された。

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 警視庁捜査一課特命捜査情報管理室、通称「オクラ」が第2話で扱うのは、ある高校生の死だ。彼の名は道尾忠司(浦上晟周)。道尾の死は自殺ではなくいじめによる殺人である、というタレコミがオクラに寄せられる。サイバー犯罪対策課から異動してきた吉岡雷(前田旺志郎)は自ら再捜査に名乗り出る。道尾は吉岡の同級生で友人だった。道尾の死は事件ではなく自殺として処理されていた。オクラにはもう一人、当時のことを知る人間がいた。それは千寿(反町隆史)だった。

 情報提供者の名前「わかきたかあおい」は、道尾をいじめた不良グループのリーダー追川孝晃(豊田裕大)の名前を並び替えたアナグラムで、吉岡がオクラに飛ばされたのは、道尾の事件ファイルにアクセスしようとしたことが原因。その事実は、道尾の死を隠ぺいしようとする何者かがいることを示していた。追川を尾行して隠れたつながりと所在不明の凶器(金属バット)のありかを明らかにする過程が第2話の中心となった。

 それと同時に、過去へ遡行する流れも随所に配置されていたことは見逃せない。吉岡が述懐する道尾との友情、利己(杉野遥亮)と同期の志熊亨(有澤樟太郎)との因縁、そして千寿と殉職した結城(平山祐介)の絆。過去と現在を行き来しながら、再捜査もといドラマはスムースに進行。黒幕が発覚し、追川が自らの罪を自白するまでが流れるように描かれた。

 そんな中でひときわ印象的だったのは、吉岡の回想シーンだ。自分が見捨てたことで道尾は悲劇的な死を遂げた。記憶に残る10代の日々は、一瞬のきらめきと胸にうずく後悔が同居し、誰にとってもほろ苦いものだ。ある種の“青春感”を想起させるエピソードは、本作の脚本家で『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)を手がけた武藤将吾の得意とするところかもしれない。道尾を失った吉岡の心情こそ、第2話のエモーションの源泉だった。

 小さすぎる車で乗り付け、さっそうと歩む刑事の立ち姿。ちょうどよいタイミングで流れるクサい劇伴。単なる資料整理の部署にしては大がかりな捜査車両や盗聴機器など、ご都合主義で彩られた刑事ドラマのフックは第2話でもてんこ盛りだった。刑事ドラマお得意の組織VS個人、正義と正義の頂上決戦というテーマは、千寿と同期の警視正・加勢(中村俊介)の関係に反映されていた。

 しかしながら、それらはほんの序章にすぎない。名作のフックをちりばめた王道ドラマと思わせて、『オクラ』が従来の刑事ドラマの枠を壊す作品であることは前回指摘したとおりである。第2話では、その推進力がバディの化学反応から生じることが明確になった。利己が千寿を裏に呼び出す流れは早くも定着したかに見える。管轄外の場所で、今度も利己は再捜査が千寿の自作自演であることを突き付ける。タレコミにとどまらず、加害者の通話音声までもが千寿の手によるものだった。

 利己には不正を憎む理由があり、千寿には犯罪を憎む理由がある。利己の脳裏をよぎった光景、血を流して倒れている女性の姿は、千寿だけでなく、利己もまた必然性があってオクラに行き着いたことを暗示している。野放しになった犯罪者は法の追及の及ばない場所にいて、冤罪事件の陰でほくそ笑んでいる。彼らを検挙できるのは通常の指揮系統にない千寿や利己のような刑事だけ。銃口を突き付けたバディの対峙はどこまでエスカレートするのか。おそらく千寿には協力者がいて、利己の過去もこれから明らかになるだろう。早くも次週が待ち遠しい。

(文=石河コウヘイ)