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人生100年時代、現役世代を駆け抜けた後はどのように過ごせばいいのでしょうか。精神科医の保坂隆先生いわく、人生後期は無理をせず「ほどほど」をキーワードに過ごすことが大切とのこと。『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』より、日常生活を元気で楽しく暮らすための知識をご紹介します。

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硬いものは苦手ですか

最近の日本人は噛(か)む力が弱くなっているのをご存じですか。

テレビのグルメ番組を見ていると、「やわらかい、おいしい!」とレポーターが話しています。こうしたことからも、だんだん噛むのが苦手な人が増えているように思います。一方、噛むことは脳の健康にも大切だと指摘されています。

咀嚼(そしゃく)する(噛む)行為は脳を刺激して血流が増し、その結果、脳を活性化する効果があるのです。

74歳の人にガムを噛んでもらい、脳を調べた結果、記憶をつかさどる海馬や、思考や判断力をつかさどる前頭葉の活性化が認められました。

よく噛む人と噛まない人をくらべると、高齢になってから認知機能が大きく違ってくるという調査結果も出ていて、噛むことと認知症の発症との深い関係が広く認められています。


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一口につき30回

そこで提案したいのは、食事のときに、一口につき30回噛むこと。99歳でモンブランの氷河をスキーで滑り降りた三浦敬三さんの場合、80歳から総入れ歯になっていましたが、一口につき60回ずつ噛んでいました。

なんと、101歳で亡くなる直前まで、圧力鍋で煮た魚や鶏肉を骨ごと食べていたそうですよ。

東北大学大学院の歯学研究グループが70歳以上の人の歯の本数を調査したところ、認知症の症状が見られない人は平均で14.9本、軽度認知症が疑われる人は13.2本、認知症が疑われる人は9.4本と、自分の歯が少ないほど認知症になりやすい傾向が出たそうです。

歯の治療は痛みをともなうことが多く、入れ歯やインプラントは場合によってはかなりのコストがかかります。

「痛い」「お金がかかる」という嫌な思いはしたくないなら、半年に一度ぐらいは歯科医院に行き、虫歯や歯肉炎などがないか、きちんとチェックしましょう。

「たかが歯」と考えるのは昔のこと。日頃からしっかりと歯の健康に気をつけていれば、大きな出費もなく、健やかに過ごせます。