『おむすび』写真提供=NHK

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 橋本環奈が主演を務める朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の放送開始から、早くも2週間が経過した。これは平成元年生まれのヒロインが栄養士として、人の心と未来を結んでいく青春模様を描く作品である。

参考:あらすじニュース

 物語のはじまりは、平成16年の福岡県糸島ーー。第2週目の「ギャルって何なん?」では、ヒロイン・米田結(橋本環奈)がこれから関わっていくのであろう人々との相関図が見えてきた。

 高校生活をスタートさせたばかりの結は、憧れの風見先輩(松本怜生)がいる書道部に入部。野球部の試合の応援のために横断幕を作成することになり、クラスメイトの恵美(中村守里)たちと一緒に参加して青春を謳歌する日々だ。しかしそのいっぽうで、姉の歩(仲里依紗)が結成した「博多ギャル連合(通称:ハギャレン)」のメンバーに結は加入を迫られ続け、最終的には一緒にパラパラを踊るところで第2週目の幕は閉じられた。ギャルに向かって一歩前進、といったところだろうか。

 とはいえ結は、いまのところ姉の歩のことが嫌いである。彼女のギャル嫌いは、この姉との関係に原因があるのだ。まだ歩は本格登場を果たしていないから、いったいどのような人物なのかは分からない。けれども現在の“ハギャレン”の総代である真島瑠梨/ルーリー(みりちゃむ)の発言から察するに、彼女はギャル界の圧倒的なカリスマのようだし、結が歩のようになってしまわないかと過剰に気を揉む父・聖人(北村有起哉)の様子からすると、かなりの人物なのだろう。果たしてどんなキャラクターなのか、私たち視聴者にとって謎は深まり、期待は高まるばかりだ。結と歩の間に何があったのだろうか。

 さて、先述しているように第2週目の物語の流れから、結を中心とする『おむすび』の世界の人物相関図が見えてきた。

 現在の結が関わりを持っているコミュニティは3つ。いつも彼女を温かく見守る“米田家”、高校生らしい青春のひとときを過ごすことのできる“書道部”、そして“ハギャレン”である。そう、これらはすべて彼女の居場所。結には3つもの“居場所”があるのである。 結は“ハギャレン”の面々との交流を重ねるうちに、彼女らの居場所が基本的にここにしかないことを知った。田中鈴音/スズリン(岡本夏美)は母と二人暮らしの家計が非常に厳しい事情があるし、ルーリーは不仲の父母とうまくいっていない。“ここ=ハギャレン”だけが心の拠り所であり、彼女たちが彼女たちらしくあれる特別な居場所なのだ。逆のことをいえば、彼女たちにはここしかない。

 結が“ハギャレン”の面々に心を開き、一緒にパラパラを踊るまでに至ったのは、このことに気がついたからなのではないだろうか。これはあくまでも私の想像だが、結は勘が鋭く心の優しいヒロインだ。大嫌いな姉の歩だって、結や米田家のみんなに明かすことのできない秘密を抱えていたのかもしれない。大いにあり得るだろう。

 結という存在が中心にあることで、各キャラクターの個性やバックグラウンドが垣間見えてくる。これがいまの朝ドラ『おむすび』だ。

 本作は結の幼なじみの古賀陽太(菅生新樹)や、偶然出会った四ツ木翔也(佐野勇斗)が野球部員であることも重要なポイントだと思う。野球は“チーム”というコミュニティがなければ成立しないし(いうまでもないが、試合をするにはふたつの“チーム”が必要になる)、この“チーム”はメンバー全員にとってかけがえのない居場所だ。一人ひとりの存在が、コミュニティ全体に影響を与える。

 パラパラを踊りはじめた結は、“ハギャレン”にどのような影響を与えていくことになるのだろうか。(文=折田侑駿)