無罪判決から一夜明け、心境や巌さんの様子を語るひで子さん(27日、浜松市中央区で)

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 1966年に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件で、袴田巌さん(88)に再審無罪が言い渡されて一夜明けた27日、姉のひで子さん(91)は念願の判決を弟に伝えたことを明かし、「だんだん分かってくれると思う。しっかり伝えていきたい」と話した。

 「表情が明るくなった」。ひで子さんは取材に袴田さんの様子を明かし、声を弾ませた。静岡地裁から戻った26日夜の帰宅後に「あんたが勝った。安心しな」と伝え、27日午前には新聞各紙を並べて見出しを読んで聞かせ、「これからみんな『袴田さんおめでとう』って言うよ」と語りかけた。

 「拘禁症」で意思疎通が難しい袴田さんから返事はなかったという。

 無罪判決を受け、支援者らは27日、検察側の控訴断念を求める活動を行った。

 静岡市葵区では支援者5人が静岡地検前や県庁前で「無罪判決が決まったわけではありません」「控訴しないように声を届けてください」などと呼びかけた。支援者の山崎俊樹さん(70)は「これ以上争わないでほしい。検察官に控訴をさせないことに全力を尽くす」と語った。

 JR浜松駅前では「浜松 袴田巌さんを救う市民の会」のメンバーら約10人が「検察官は控訴するな」「袴田巌さんに直接謝罪を」などと書かれた横断幕や旗を掲げ、チラシを配った。共同代表の寺沢暢紘さん(79)は「58年間闘い続けて、やっと獲得できた無罪判決を、検察の不正義によってさらに最高裁まで争うことがないように、潔く控訴をしないと決断してほしい」と力を込めた。

 県警の津田隆好本部長は27日の県議会本会議で、捜査機関による捏造(ねつぞう)が認定された判決について問われ、「判決は確定していないことからお答えを差し控えさせていただきます」と答弁した。