SHEINやTemuといったプチプラ通販サイトは、低価格の商品を販売しているため各国の関税免除規則を利用してきました。しかし、この関税免除規則を濫用するケースが急増しているため、アメリカでは関税免除規則の改正に向けた動きを加速させています。

FACT SHEET: Biden-Harris Administration Announces New Actions to Protect American Consumers, Workers, and Businesses by Cracking Down on De Minimis Shipments with Unsafe, Unfairly Traded Products | The White House

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2024/09/13/fact-sheet-biden-harris-administration-announces-new-actions-to-protect-american-consumers-workers-and-businesses-by-cracking-down-on-de-minimis-shipments-with-unsafe-unfairly-traded-products/



White House de minimis loophole rules target Shein, Temu

https://www.cnbc.com/2024/09/13/de-minimis-shein-temu-biden-china-rules.html

Secretary Raimondo Statement on New Actions to Address Surge in De Minimis Shipments | U.S. Department of Commerce

https://www.commerce.gov/news/press-releases/2024/09/secretary-raimondo-statement-new-actions-address-surge-de-minimis

Biden moves to crack down on Shein and Temu, slow shipments into US | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2024/09/biden-moves-to-crack-down-on-shein-and-temu-slow-shipments-into-us/

Biden Administration Ratchets Up Tariffs on Chinese Goods - The New York Times

https://www.nytimes.com/2024/09/13/us/politics/biden-tariffs-chinese-goods-clothing.html

Biden is cracking down on Shein and Temu | Fortune

https://fortune.com/2024/09/13/biden-china-shein-temu-tariffs-imports-loophole-crackdown/

海外から輸入される安価な製品の場合、「関税として徴収することができる税収」を「関税を徴収するために費やされる費用」が上回るケースがあるそうです。そのため、安価な製品に対しては関税を徴収しないようにする「デミニミス免除」と呼ばれるルールが存在しており、アメリカの場合、800ドル(約11万3000円)以下の商品は関税が免除されるようになっています。なお、2016年以前はデミニミス免除が対象とするのは「200ドル(約2万8000円)以下の商品」でした。

現地時間の2024年9月13日、特に中国の電子商取引プラットフォームの登場によりデミニミス免除の濫用が急増しているとして、バイデン政権がアメリカの消費者・労働者・企業を保護するための新しい措置を講じると発表しています。バイデン政権による公式声明によると、過去10年間でデミニミス免除を主張してアメリカ国内に輸入される商品の数は、年間1億4000万点から10億点超にまで増加しており、違法合成薬物の原材料や製造機械の国内流入を阻止することが難しくなっているとのこと。

デミニミス免除を主張してアメリカに輸入される貨物の大部分は、中国が設立した複数の電子商取引プラットフォームから発送されたものです。これについて政府は「アメリカの消費者を危険にさらし、労働者と企業を圧迫し、繊維やアパレルなどの低価格の製品が大量に免税でアメリカ市場に輸入される事態を招いています」「デミニミス免除を悪用するケースが増加することで、違法または安全ではない貨物を正確にブロックすることがますます困難になっています。デミニミス免除を悪用する海外企業はさまざまな理由でそうしており、一部の企業は違法で危険な製品を出荷していることを隠し、アメリカの健康および安全法と消費者保護法の順守を回避するためにデミニミス免除を悪用しています」と説明しました。



バイデン政権はデミニミス免除の濫用を阻止するために、デミニミス免除を包括的に改善するための法案を2024年中に可決するよう議会に求める声明を発表しました。具体的には、デミニミス免除に該当する輸入品の数を削減するために、1974年通商法第201条または第301条、1962年通商拡大法第232条に基づいて課せられる関税の対象となる製品を含むすべての出荷をデミニミス免除から除外することを求めています。

1974年通商法第301条はアメリカの輸入品の約40%をカバーしており、これには中国からの繊維およびアパレル製品の輸入の70%が含まれます。一部の電子商取引プラットフォームやその他の海外販売業者は、最小限の免除を主張して中国からアメリカに商品を出荷することで、これらの関税を回避しています。

デミニミス免除の改正案では10桁の関税分類番号やデミニミス免除を申請する人物など、デミニミス貨物に関する特定の追加データを要求することを提案しており、これによりデミニミス貨物のターゲット設定が改善され、合法的なデミ​​ニミス貨物の迅速な通関が容易になります。

他にも、行政免除の対象となる人物が明確にされ、申告者は誰に代わって免除を申請しているのか特定することが義務付けられます。これらの新しい要件はアメリカの税関や国境警備局(CBP)が規制上の健康・安全基準を満たさない商品から消費者を保護し、関税が課せられたり入国が制限されたりする輸入品に対する不当競争からアメリカ企業を保護するのに役立つことが期待されます。



さらに、消費者製品安全委員会(CPSC)のスタッフは、デミニミス貨物を含め、消費者製品の輸入業者が入国時にCBPおよびCPSCに電子コンプライアンス証明書(CoC)を提出することを要求する最終規則を提案する予定です。この規制により、CBPとCPSCは安全でない製品をアメリカ市場に流入することを阻止する能力が強化され、外国企業がデミニミス免除を利用して消費者保護のテストおよび認証要件を回避することを防ぐのに役立ちます。

アメリカの繊維・アパレルメーカーは、同国の防衛産業基盤において重要な役割を果たしており、国内で数十万人の直接的および間接的な雇用を支えています。しかし、アメリカの繊維・アパレルメーカーは中国で設立された複数の電子商取引大手企業との不公平な競争に直面しており、バイデン政権はアメリカの繊維・アパレルメーカーとその労働者を支援するために改正案を検討していると説明しました。

なお、アメリカだけでなく欧州連合(EU)でも中国のプチプラブランドに関税を課すべく「150ユーロ(2万4000円)以下の輸入品は関税免除」という基準を廃止することが検討されています。

中国のSHEIN・Temu・AliExpressに輸入関税を課すべくEUが免税枠の廃止を検討 - GIGAZINE