© Lisa Mariann Strand

ヴァイキングって意外と荒々しくなかったかも?

人類学者チームの調査で、ノルウェーのヴァイキングと比べてデンマークのヴァイキングは平和的で、所有している武器の数も少なく、武器を使用する頻度も少なかったことがわかりました。

デンマークのヴァイキングとは?

『Journal of Anthropological Archaeology』に掲載された新しい研究で、ノルウェーとデンマーク2つの異なる場所でヴァイキングたちがどう異なっていたか、人骨や古代の武器の分析、古いルーンストーンの解読などをおこなって調査しました。研究チームは、デンマークのヴァイキングが暴力に訴える傾向が少ないだけでなく、より中央集権的な権力構造を持っていたことも発見。この2つの特性には関連性があるかもしれないと指摘しています。

ヴァイキングのイメージとしては、荒々しい略奪者という感じですが、実際はヴァイキングが同じ時代の他の民族たちと比べて特別暴力的だったわけではないと一部の歴史研究家は考えているようです。とはいえ、今回の研究の著者たちは、暴力がヴァイキング文化において重要な位置を占めていたのではないかと指摘しています。ヴァイキングの詩や宗教的信念もまた、血なまぐさいものだったことがわかっています。

ノルウェーとデンマークの違い

しかし、デンマークではヴァイキング時代の剣がほとんど発見されておらず、後期鉄器時代の剣が547平方kmあたり1本しか見つかっていないのです。これに対して、ノルウェーのスタヴァンゲル周辺地域では、32.7平方kmあたり1本の剣が発見されています。

さらに、ノルウェーのヴァイキングの遺骨には生前の傷がより多く発見されていて、実際、調査された30体の遺骨のうち18体が傷を負っていました。デンマークのヴァイキングの遺骨では傷があったのは6体のみ。しかも明らかに死亡した際に負ったもので、調査された82体のうち4体は斬首され、もう1体は絞首刑にされたことがわかっています。対照的に、ノルウェーの遺骨には斬首された痕跡がなかったのです。

この違いから、著者の一人Jacobson氏は、暴力だけがデンマークとノルウェーの違いではないと結論づけています。つまりノルウェーのヴァイキングは「力こそ正義」という社会組織のアプローチを取っていた可能性がある一方で、デンマーク人は中央集権的な権力に従い、日常生活がより「市民化」されていたと分析しています。

「このパターンの発見は、ノルウェーとデンマークの地域で異なる社会が存在していたことを示唆しています。ヴァイキング時代のスカンジナビア地方は社会的にはほぼ単一だと考えられてきたので、この発見は非常に驚きでした」とJacobson氏は声明で述べています。

遺骨を見るとどんな社会構造だったかわかる?

研究者チームは、この研究が他の歴史的文明における中央集権化と権力の関係を明らかにする可能性があると述べまています。論文ではアンデスの部族についても言及されていて、政治的中央集権化が進んでいない地域では遺骨に多くの外傷があったと説明されています。少なくとも今回の研究は、暴力的だと考えられているヴァイキング社会でさえ、ひとまとめに「暴力的」とは言い切れないほど複雑で繊細だったことを示しています。

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