山形のラーメンは有名ですが、今回は知る人ぞ知る山形の蕎麦をご紹介します。そもそも私が小さい頃の山形は蕎麦王国だった気がします。事実、「そば粉」の生産量は全国5位(令和4年、農水省調べ)。それに比例して蕎麦屋さんも多く、「…

山形のラーメンは有名ですが、今回は知る人ぞ知る山形の蕎麦をご紹介します。そもそも私が小さい頃の山形は蕎麦王国だった気がします。事実、「そば粉」の生産量は全国5位(令和4年、農水省調べ)。それに比例して蕎麦屋さんも多く、「そば街道」と呼ばれるエリアには個性豊かな名店がひしめきあっています。山形では蕎麦屋でラーメンを置いているお店も多く、それが評判を呼び今のラーメン王国に進化したのではないかと思っているくらいです。ラーメン王国で食べる蕎麦。今回は山形の観光名所をご紹介しながら知る人ぞ知る名店3店ご紹介したいと思います。

橋本マナミさん行きつけのお蕎麦屋さん

最初にご紹介するのが今では全国区になりつつある「冷たい肉そば」です。山形県中央部にある河北(かほく)町で生まれた地元グルメ「冷たい肉そば」の特徴は肉が親鳥なこと。コリコリした触感にコシの強い田舎蕎麦と甘じょっぱいタレが得も言えぬハーモニーを醸し出します。「一寸亭(ちょっとてい)本店」、「いろは本店」など本場河北町には13店の「冷たい肉そば」提供店がありますし、いまや近隣の天童市や寒河江市にもお店は広がり、仙台や東京含め今後ますます勢力拡大が期待されます。

今日はあえて本場河北町ではなく、山形市にある「肉そば 扇屋」をご紹介したいとおもいます。同店は2〜3年前までは天童市にお店を構えていました。山形が生んだスター、橋本マナミさんが行くお店として有名で、これは行かねばと数年前に初訪問しました。何せ橋本さんは競馬番組にも多く出演しており、私含め競馬ファンのアイドルでもあります。いまでも競馬中継で時折見かけますが、何でも小学校時代6年間乗馬クラブに通った血統書付きのウマ女でらっしゃいます。そんな彼女の行きつけのお店なら食べないわけにはいきません。

扇屋

河北式「冷たい肉そば」のお店には必ずと言っていいほど、「とり中華」と言われるラーメンもありますが、同店の売りは両方が楽しめる「二色肉そば」があること。大きなどんぶりに半分づつ麺が並ぶ姿は壮快な眺めですので、ぜひトライしてみてください。

扇屋(二色肉そば)

扇屋から近い観光地と言えば、山形県郷土館「文翔館(ぶんしょうかん)」が有名です。かつての県庁で、最近では映画「るろうに剣心」のロケ地として知られるようになりました。英国復興様式レンガづくりの洋館を是非訪問ください。

文翔館

さて、河北式「冷たい肉そば」は今や東京にも多くのお店があります。お勧めは銀座にありながら庶民的な価格で美味しい蕎麦と山形料理を食べることができる「山形田(やまがただ)」。同店にも橋本マナミさんが訪問されているようで、同じく山形出身の女将さんに写真を見せていただきました。ぜひ皆さまもお運びいただき、山形の味をお楽しみください。

山形田の冷たい肉そば(正式名称は「蔵王冷やし地鶏そば」)
山形田

松尾芭蕉ゆかりの地の蕎麦

続いてご紹介するのが河北町にもほど近い大石田(おおいしだ)町にある「手打ち大石田そば きよ」です。同地は最上川の船運の要衝だった町で、松尾芭蕉が3日間滞在し歌を残したことでも有名です。同店近くには松尾芭蕉の句碑「さみだれをあつめてすゞしもがみ川」もありますので是非お立ち寄りください。

芭蕉句碑の案内
芭蕉句碑

「きよ」は20年ほど前、ゴルフの打ち上げで高校の先輩に連れて行ってもらったのが最初でした。その当時はお店の女将手作りのお漬物を食べながらビールを飲み、山形ならではの「板そば」で締めたものでした。

きよ(板そばハーフ)

先日久しぶりに訪問したところ、河北式「冷たい肉そば」もメニューにあります。こうなるとどちらも食べたくなるのが麺好きの人情というものです。とは言え突き出しの漬物もたっぷり食べたいし……困った……と思案した挙句、思いついたのが「値段は同じでいいので、麺を半分にして両方ください」作戦。これでもお腹が一杯なってしまいましたが、後悔の無い「きよそば」を満喫したのであります(笑)。昔と変わらぬ自家製漬物も筆舌につくしがたい美味しさでした。

きよ(冷たい肉そば麺ハーフ)
大石田から眺める最上川
大石田から眺める最上川(特殊堤防壁画)

メニューは「もりそば」と「そばがき」のみ

最後に歌人斎藤茂吉を生んだ上山(かみのやま)市にある「原口そば」をご紹介します。上山市には昔、競馬場(2003年に廃止)があり、幼い時に父親に連れていってもらったのを思い出します。その時の競馬場独特の喧噪や匂いが今の競馬好きにつながっているのかも知れません。競馬の前後によく連れていかれたお店が「原口そば」でした。

上山の原風景
原口そば

メニューは超シンプルで、「もりそば」と「そばがき(かいもち、とも言います)」のみ。当時の記憶は曖昧ですが、今もメニューは変ってないと思われます。

今回は「そばがき」を久しぶりに食べましたが、見た目よりも美味しいものですね。写真を見るとなんか硬そうなイメージがありますが、箸でも簡単に切れるほど柔らか。納豆もちのようにして食べますが、フワっとした触感と蕎麦本来の風味がよくわかる逸品です。

原口そば(かいもち)

上山の観光といえばやはり斎藤茂吉記念館。記念館駐車場からは茂吉が愛した蔵王連峰を仰ぎ見ることもできます。山形が生んだ巨匠の足跡をじっくり辿ってはいかがでしょうか。

斎藤茂吉記念館
斎藤茂吉記念館から蔵王を望む

いも煮会のシーズン到来!

今日は蕎麦王国山形の名店3選をお届けしました。これから山形は「いも煮会」のシーズンに入ります。県内あちこちの河川敷は多くの市民で賑わうことでしょう。

最後に実家の母が作ったいも煮の写真をお届けして終わりたいと思います。ぜひ皆さまも山形にお運びいただき、ラーメンと蕎麦といも煮を味わってみてください。美味しい山形をきっと気に入ってもらえると思います。

いも煮(母の手作り)

文・写真/十朱伸吾 
おとなの週末Web専属ライター。旅と食とビールと競馬をこよなく愛する。ツーリングとゴルフも趣味。ツーリングの成果でダイエットにも成功。