50-50に迫る大谷翔平の盗塁に“価値”はないのか? 「ルール変更の影響論」に米記者たちが意見「軽視する声はあるかもしれない」

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怒涛のペースで盗塁を重ねる大谷。そのスキルに関心が高まっている。(C)Getty Images

 メジャーリーグのレギュラーシーズンもいよいよ終盤戦。メディアやファンの間では、個人記録への関心度も高まっている。目下、話題沸騰となっているのは、大谷翔平が“金字塔”を打ち立てるかどうかだろう。

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 文字通り一挙手一投足に人々は熱狂している。今季の大谷は昨年9月に右肘へ執行した手術の影響もあり、フルタイムの指名打者(DH)として起用され、「打者専任」。だが、打撃に集中できるようになったためか、ある種の“枷”が外れて圧巻の数字を記録している。現地時間9月8日時点で打率.291、46本塁打、46盗塁、101打点、OPS.992を叩き出し、史上初の「シーズン50本塁打・50盗塁」も達成間近なのは周知の通りだ。

 必然的に複数メディアでMVP候補にも挙げられる。メジャーリーグ史において“純然たるDH”選手の受賞者は皆無で、「守らない」大谷の戴冠に批判的な意見がないわけではない。

 ただ、近年のMVP投票において最重要視されている指標WAR(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す数値)で「7.2」を記録するように、今の大谷は、あらゆる局面で違いを生み出せる稀有な万能型打者。今までのDH選手とは一線を画す評価を得ている。

 今季の大谷が声価を高める要因となっているのは、すでに46盗塁を記録している走塁技術(あるいは意欲)の向上だ。23年のピッチクロック導入とともに始まった投手による牽制回数(3回)の制限、さらにベースの拡大というルール変更の影響はゼロではないが、シーズン50盗塁に迫るのは並大抵のことではない。

 実際、大谷の盗塁を高く評価する現地記者は少なくない。MLB公式サイトの特集で、アンソニー・カストロビンス記者は「軽視する声はあるかもしれないが、そうではない」と論じている。

「オオタニがルール変更の影響を受けているのは間違いないが、MLBの盗塁率が新しい領域にあるかというと、そうではない。リーグ全体では、1992年の方が盗塁率は高かった。つまりオオタニの貢献は特筆すべきもので、はるかに重要なのだ」

 また、日々自身のXなどでメジャーリーグのありとあらゆるデータを紹介しているサラ・ラングス記者も「より歴史的なシーズンを送っているのは誰かという質問に対する答えは、オオタニしかない」と強調。その上で、盗塁がいかに稀有なものであるかを訴えた。

「たしかに盗塁を奨励するルール改正があったことは周知の通りだ。ただ非常に優れた投手である選手が、パワー・スピードのあるシーズンを送っているという事実は事実だ。オオタニが40盗塁を達成した瞬間に、彼は投手として200奪三振を少なくとも1度達成し、40盗塁を達成した5人目の選手となった。他の4人はいずれも、1893年にマウンドが現在の距離に移され、1898年に近代的な盗塁ルールが採用される前に達成している」

 歴史的に見ても稀有な存在だと言える今季の大谷。現時点で「シーズン52本塁打・52盗塁」ペースとなっている偉才が最終的にどこまで数字を伸ばせるか。その価値を巡っては、あらゆる議論が起こりそうな気配だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]