日本外国特派員協会で会見する林芳正官房長官

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自民党総裁選(2024年9月12日告示、27日投開票)への出馬を表明している林芳正官房長官が9月9日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。

官房長官として、平日は1日2回会見する林氏。今回は「候補予定者」としての会見で、官房長官会見と違ってメモを見ずに話していることを指摘され、立場上、官邸の会見場では「自分の言葉で語ることができない」などと応じる一幕があった。

「なぜ、誰かからメモを渡されるのを待たないといけないのか」

 

林氏は通訳なしで約30分にわたって英語で会見。冒頭発言で立候補の理由を述べる中でも、

「毎日2回の記者会見を行い、1日に2回すべての質問に答えなければならない。(政府が)何をやっているのか、どういう方針なのかを説明できるようしておく必要がある」

などと記者会見にも触れた。

今回の会見では、普段の官房長官としての記者会見とはスタイルが異なり、記者からは

「今日はメモがないことに気付いた。非常に流ちょうに話している」

という指摘も出た。この記者は続けて、官房長官会見のあり方を

「大臣として、あるいは官房長官として、なぜ、あえて自分の言葉で答えないのか。なぜ、誰かからメモを渡されるのを待たないといけないのか。日本の閣僚には、それが義務付けられているのか」

などと疑問視した。

「政府や党の公式見解が私の考えと異なることもあり......」

林氏は「候補(予定)者としての会見」だと断った上で、紙に目を落としている経緯を

「紙を読まされているということではない。実際に紙を読んでいるということではなく、私が使っている紙は全部、答える前に1つ1つチェックしている。政府のスタンスであって自分のスタンスではないので、発言には正確を期しており、後で何かまずいことがないようにしている」

などと説明。さらに、官邸の会見では自分の考えが発信できないとも指摘した。

「内閣の一員として、あるいは党の一員として、政府や党のスタンスを、できるだけ自分の考えに近づけたい。それが私の願いだ。しかし、政府や党の公式見解が私の考えと異なることもあり、あの部屋(官邸の会見場)では自分の言葉で語る(speak for myself)ことができない。私はここで、自分の言葉で話せる自由を感じている」

「私が総理総裁になったあかつきには......」詳細答えず

「言葉で語ることができない」ことは、直後の官房長官会見でも証明された。林氏は9月7日、視察先の病院で、現行の健康保険証を廃止して12月に機能をマイナンバーカードに一本化するスケジュールについて、の見直しの可能性に言及している。この点について問われた林氏は、政府見解を

「マイナ保険証は患者本人の健康医療情報に基づくより良い医療の提供を可能にするほか。緊急時の活用など含めそのメリットが今後増えていくものだ。このため国民の皆様にご理解いただき利用促進を図っていくことが重要であり、政府としては現行の健康保険証の新規発行を本年12月2日に廃止し、マイナ保険証を基本とする仕組みへ移行することとしており、円滑な移行に向けた取り組みを進めているところだ」

などと説明。続けて次のように述べ、「官房長官の立場」を強調した。

「その上で、この記者会見は政府のスポークスマンとしての官房長官の立場で臨んでいる。お尋ねの私の発言は、私が総理総裁になったあかつきには見直しを含めて検討したいという考えを述べたものであり、この官房長官会見の場において、これ以上お答えすることは差し控える」

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)