グレイヘアが人生の転機となり、自分らしさを見つけることができたエピソードを紹介します。まだ「グレイヘア」という言葉が一般的ではなかった2016年、45歳のときに白髪染めをやめた朝倉真弓さん(現在53歳)のケースです。グレイヘアにしたらどんな未来が待っていたのでしょうか? 詳しく語ります。

コンプレックスだった白髪。費用総額を計算してみたら…

子どもの頃から若白髪に悩まされていた私。ときにはいじめやからかいの対象にもなりました。なので、18歳で大学に入学してすぐにヘアカラーを始めました。高校までは、校則で髪を染めてはいけなかったので。そのときから45歳で白髪染めをやめるまでの27年間、私は常に髪を染め続けてきました。

【写真】グレイヘアがきっかけで見つけた天職

最初は白髪が隠れて皆と同じ髪色になるのがとてもうれしかったのですが、40歳を過ぎた頃から、髪を染めるたびに頭皮がかぶれ、髪がごっそり抜けてしまうことも。「なぜ時間とお金をかけてまで自分を痛めつけているんだろう」と、やるせない気持ちが湧き上がってきました。

ちなみに、私がかけてきたヘアカラーの総額をざっと計算すると、27年間で約380回、300万円以上かけてきたことになります。ヘアカラーや通常の白髪染め、ヘナやヘアマニキュア、カラートリートメントはもちろん、染めるほどに髪にいいという触れ込みのものや、染めると白髪が“治る”という眉唾ものの商品にも手を出したことがあります。

それほどまでに、私は私の白髪を憎んでいたのです。

ロールモデルが見つからないなら、自分が発信していこう

白髪染めがつらくなりすぎて、45歳で「もうやめたい、やめよう」と思いました。

今でこそ、インターネットで検索するとたくさんのグレイヘア女性のSNSや記事がヒットしますが、2016年当時はまだ「グレイヘア」という言葉は一般的ではありませんでした。日本人女性でグレイヘアの方は数えるほど。カラーをやめていく過程はどうなるのか、そんなことを教えてくれる人はだれもいません。

「だったら、私が発信していこう!」

おそらく私のように、終わりの見えない白髪染めに悩んでいる人もいるはず。そんな人の役に立つように、白髪部分がのびていく過程を写真つきでブログにつづっていこうと決意したのです。

とはいえ、最初は本名を隠して、写真も顔にぼかしを入れての掲載でした。誹謗中傷のコメントが来るのが怖かったのです。

染めない快適さに満足したら、他人の声が気にならなくなった

案の定、心がズキっと痛むような言葉を書かれることもありました。

「みっともない」「汚らしい」「(染めないのがかっこいいと)勘違いしているのが痛い」「不潔な人」などなど…。なかなか手厳しいコメントの数々に、顔をあげて外を歩くのがいやになった時期もあります。

ですが、それ以上に「似合っている」「そういう髪色も悪くないと思う」「いつかはグレイヘアも潔くていいなと感じた」といった肯定的なコメントもいただきました。そしてなにより、10か月後に完成したグレイヘアの姿に、私自身が満足することができたのです。

たしかに白髪染めをしているときよりは、老けて見えます。でも、髪の根本に数ミリの白髪を見つけるたびに悲しくなり、2週間に1度ペースでリタッチを繰り返していた当時のやるせなさに比べたら、なんと今の気分の健康的なことか!

確実に言えるのは、白髪染めをしていた頃よりも外出が楽しくなり、活動的になったということ。白髪染めのスケジュールに振りまわされることのない人生は、想像以上に快適でした。

グレイヘアになって、外見以外にも変化が

グレイヘアになって外見が変わったと同時に、私の内面も大きく変わりました。周囲の意見を気にしすぎることがなくなったのです。

たとえば「やっぱり染めたほうがいいよ」と言われたとき。以前だったら「そうかもなぁ…」と思い悩み、そう言ってきた人とのつき合い方にも悩むところですが、今では「意見は意見、その人はその人」と、問題をきり分けて考えられるようになりました。「この人は髪色に関しての価値観は違うけれど、ほかの部分では共感できる」といったように。

グレイヘアの問題だけではありません。意見が異なる人と出会ったとき、「あなたはそうなのね」と受け止めつつ、「でも、私はこう思う」と声を上げることが怖くなくなりました。それで一瞬ギクシャクすることもあるかもしれません。でも、お互いの違いが鮮明になったことで、逆にひとりの人間として尊重し合う気持ちが生まれることもあります。

外見が大きく変わり、いろいろな意見にさらされる経験を積んだことで、内面の自信が育まれたのだと感じています。

美姿勢とウォーキングで「自信の育み方」を伝えていきたい

現在私は、美姿勢とウォーキングのインストラクターとしての活動にも力を入れています。グレイヘアになったからこそ、「姿勢よく美しく歩いて、若々しくなりたい」という思いから始めた姿勢と歩きの勉強ですが、学べば学ぶほどに「自信は外側からつくられる」ことを実感します。

なんだか自信がない、周囲の言葉に傷ついてしまう…。そんな人ほど、姿勢を正して深い呼吸を心がけてみてください。それだけで、ちょっぴり気持ちが前を向くはずです。

自分の性格や考え方のクセを変えるのには時間がかかるけれど、“姿勢”という外側の見た目を変えるのは数秒で済みます。よい姿勢でおおらかな微笑みを浮かべている人に、あえて意地悪をしようとする人は少ないはず。そしてまた、そんな姿勢と笑顔をキープし続けることで、徐々にあなたの内面も自信に満ちていくと思います。

やがて本当の強さを手に入れたとき、あなたの周りの世界はパッと変わると信じています。私がグレイヘアになって世界が変わったように、美しい姿勢でいることで、世界の見え方、捉え方までもが変わってくるのです。