【連載】有村智恵のCHIE TALK(第5回・前編)

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 JLPGAツアー通算14勝をあげ、米国ツアーに挑戦した経験もあるプロゴルファーの有村智恵の連載・第5回。2022年オフに、妊活に専念するためツアーの一時休養を発表し、現在は双子の男児の母として奮闘しながら、30歳以上(45歳未満)の女性プロゴルファーのためのツアー外競技「LADY GO CUP」を主宰するなど精力的な活動も続けている。

 先日、出産後「初めてボールを打った」という有村プロ。その様子をSNSで公開し、ツアー復帰への期待の声もあがった。前編では、復帰に向けて、描いている道のりについて話を聞いた。


2022年、ツアー出場中の有村智恵 photo by GettyImages

――現在2児の母でもある有村さんですが、ツアープレーヤー復帰までのプランはどうお考えになっていますか?

 未定です、としか言えないんですけど、挑戦はしたいなと思っています。競技に復帰するために、まずは練習から始めるという形になると思うのですが、今の段階では、そのための時間を作ること自体が挑戦です。

 どこまでできるのかは自分のなかでも未知数ですが、復帰に向けて挑まずに終わることはしたくないですし、(体やコンディションを)試合に出られる状態まで持っていけるのか、っていうのは楽しみではあります。状態を持っていくこともひとつの挑戦ですし、試合に出るだけではなく、試合で結果を残すっていうところもまた大きな挑戦です。試合に出て、いい結果を残すのは、夢ではありますね。

――具体的にこの時期に、というイメージはありますか?

 今年、初めて(有村プロの地元でもある)熊本の試合(現KKT杯バンテリンレディス。再春館レディース、ライフカードレディス、西陣レディスクラシックなどが前身)の会場にすら行けなかったんです。ゴルフを始める前から観戦には行っていましたし、プロになってからも、この試合には毎年必ず出場していたのですが、今年はその時期にちょうど子どもが生まれて、まだ入院中だったので、会場に行けなかったんです。

 熊本の試合は、私にとっても特別な試合ですし、家族や親戚も楽しみにしてくれているので、来年、熊本の試合には出たいなって思っていますね。だから、来年は4月のその試合と、その2週前に契約先(ヤマハ)の試合(ヤマハレディースオープン葛城)もあるので、まずはそこを目標に頑張っていきたいです。(今年の)10月ぐらいに、「やっぱり無理!」ってなるかもしれないですけど(笑)。

――出産を経て、すでに競技に復帰されている横峯さくら選手からお話を聞くことはありましたか?

 昨年、一昨年頃も話は聞いていたのですが、今だからこそ聞きたい話はたくさんあります。当時は、どうやって(お子さんを)授かったのかとか、そういう話ばっかり聞いていたので、今は、子育てしながらどうやって練習しているのかや、どういう工夫をされているのかとか、細かい話をいろいろと聞いてみたいですね。

――JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)では、試合会場に託児所を設置するなど、ママさんゴルファーの支援も始まっています。

 本当にありがたいですよね。協会の方ともよくお話をさせてもらっていたんですけど、お子さんを連れて出場される選手が少ないから、結局はそんなに託児施設も設置できない、っていう葛藤もあるらしくて。託児所や預けられる場所がどんどん増えていけば、(受け入れ態勢も)充実したものになっていくと思うし、そこが充実していけば、お子さんを産んでからもプレーを続けたいと思う選手も続いて出てくると思うので、いい循環ができればいいですね。

【お母さんがプロゴルファーだったからこそ、こんなに幸せなこともあるんだ、って】

――現在、トレーニングなどは続けられているのでしょうか。

 今は、子どもをあやすのがトレーニングだと思って、あえて大きな動きをしたりとか、抱っこしながらも、(子どもが)いい重みだと思いながらスクワットしたりとか、ですかね。子どもと一緒にトレーニングするようなイメージですね。

 ひとつだけ、懸念点として、子どもを抱っこしている時間が増えると、どんどん体が前傾しちゃうというか、肩が縮まっていったり、猫背になってしまったりするんですよね。そうなると、腹筋も緩みがちになってしまうので、意識的に気をつけておかなければと思っています。

――お子さんが成長して、"お母さんはプロゴルファーだ"と認識するまで競技を続けたいという思いは?

 どうなんでしょう。ハードルは高いですよね(笑)。でも、いろいろな先輩方に話を聞いたら、みなさん「子どもがゴルフを好きじゃなくなっちゃう」って言っていて。小さい頃は、お母さんがゴルフのせいで家にいない時間が多くて、「ゴルフのせいで一緒にいられない」って思われることが多いって。

 自分の子どもには、そういう思いだけで終わってほしくはないから"お母さんがプロゴルファーだったからこそ、こんなに幸せなこともあるんだ"っていう思いまでさせてあげたいですね。

――お子さんにスポーツはさせたいと仰っていましたが、そういう姿を見せられると、お子さんも「ゴルフをやりたい」と言い出すかもしれませんね。

 競技としてやるかはまた別の話ですけど、ゴルフは、マナーやエチケットがすごく大事にされるスポーツなので、ゴルフを通してそういう部分も学んでもらえることがあればいいな、とは思いますね。今は「私がどこまで教えられるかな?」「自分もちゃんとしておかなきゃ」と考えるようになりました。子どものお手本にならなきゃいけませんよね。

>>後編【「子どもを授かることすら難しい」を払拭したい 有村智恵が「LADY GO CUP」を通して実現したい女子ゴルフの未来像】に続く

【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12〜14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。

◆インタビュー完全版を動画で見る
https://youtu.be/-cM5eK3jajE