撮影前日に頓挫から27年…永瀬正敏主演『箱男』ついに劇場公開「ずっと箱男と一緒に歩んできた」
俳優の永瀬正敏が24日、都内で行われた映画『箱男』の公開記念舞台あいさつに出席。同作は1997年に製作が決定していたが、クランクイン前日に企画が頓挫した経緯がある。イベントに登壇した永瀬は、27年前の思いを振り返りつつ、「言葉にならない。感無量です」と映画の公開に感慨深げな表情を見せた。
安部公房が1973年に発表した小説を映画化した本作は、段ボール箱をかぶって都市をさまよいながら世界を観察する「箱男」の奇妙な姿を描く。この日は共演者の浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、メガホンを取った石井岳龍監督も来場した。
永瀬は本作が現代に蘇り、映画化されたことについて「今はSNSの時代。原作の世界に世の中が近付いて来たのかなって思います。安部公房さんという人は予言者だなって。すごいなって思います」としみじみコメント。その上で「僕自身も(頓挫の後も)27年間、ずっと箱男と一緒に歩んできた。今となっては、その時間(頓挫からの27年)も必要な時間だったのかなと思います」と思いを述べる。
永瀬は「昨日、公開になって観ていただいた方も多いと思います。映画の最後の最後に問いかけの部分があります。今回参加した全員の俳優部、スタッフの何かが刻印されているんです。それを見ていただけたら嬉しい」と呼びかけ、「原作の主人公は“ぼく”ですが、それが今回“わたし”になっている。“わたし”になったということは、箱男だけでなく箱女もあるということ。あと監督が普段“わたし”って話されるんです。監督こそ箱男じゃないかなって」と本作の一人称の呼び名が変わったことを分析。「監督おめでとうございます」と改めて映画化に漕ぎ付けた石井監督の苦労も労った。
浅野は27年前、佐藤が演じる予定だったニセ医者役。永瀬ら当時のキャストと同じように公開を喜び、「いろんなことがあって、頓挫したと聞いたんです。それが、映画化が決まり、自分のところにニセ医者の役が来た。これは徹底的にやってやろうって思いました。27年間、みなさんが温めてきた作品だというのが現場でも伝わって来たんです。これはすごいなって思いました」と感想を述べていた。(取材・文:名鹿祥史)